高校受験の入試制度には、併願優遇制度があります。耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。東京都や関東の一部の都道府県を中心に実施されている制度です。

今回は、高校受験の併願優遇について、そのメリットと注意点をわかりやすく解説していきます。

併願優遇とは

併願優遇とは、私立高校において「一定の基準に達した生徒の合格を保証する」制度を言います。第一志望と併願した場合に、第1志望に不合格だった際にはその私立高校に必ず入学することを生徒側はその高校に約束する代わりに、入試で優遇してもらうことができます。

東京都や関東の一部の都道府県を中心に実施されています。

優遇内容

一般入試と同じ日程で筆記試験を受ける必要がありますが、併願優遇制度を利用した場合には、入試における学力検査の得点や内申点に加点(優遇)されます。そのため、合格の可能性が高くなります。なお、加点される項目や点数は高校によって異なります。加点が大きいほどに、合格の可能性が限りなく100%に近づきます。
たとえば、内申点の加点については、英検・漢検などの検定試験の資格取得、部活動での活躍などが代表的です。

併願優遇の利用条件

併願優遇制度を利用するには、次のような条件を満たす必要があります。一般的には以下のような条件が提示されることが多いようです。

  • 在学中学校と高校との入試相談を行うこと
  • 高校が定めた内申点や出席日数などの基準を満たすこと
    など

併願優遇の内申点の基準

9教科、5教科、3教科の評定を足した数字が基準になります。高校によって基準は異なります。併願優遇基準は募集要項に記載されています。Webサイトでも確認できる場合が多いので、志望校のサイトをチェックしておくとよいでしょう。

●例:文教大学付属高校 の場合
【出願条件】 ※一部抜粋
国公立中学校、または高等学校を併設しない私立中学校に在籍し、次の1~4 の条件を全て満たす者。
1.2025年3 月中学校卒業見込みで、東京・神奈川・埼玉・千葉の公立高等学校または、私立高等学校を第一志望とする者。
2.欠席日数が各学年 10 日以内の者。(病気等事情を配慮する場合あり)
3.3 年次 2 学期の成績評定が下記の要件を満たす者。(ただし、下記に示す本校指定の実績がある場合は最大 2 点まで加点可)
4.入試相談で出願を許可された者。
出願に先立って出願条件の確認などをするために、中学校の教職員の方による入試相談が必要になります。
●例:中央学院大学中央高等学校 の場合
【出願条件】
1.令和7年3月に中学校を卒業見込みであること。
2.第3学年2学期の5段階評価による評定値合計や評定が、以下の基準であること。

5教科15以上または9教科27以上であること
第3学年2学期の全教科評定値に1がないこと

3.本校の他に、公立高等学校のみを受験するものであること。
4.第1学年から第3学年2学期末までの欠席日数の合計が20日以内であること。
5.中学校の先生と本校入学試験担当者との間で入試相談が済んでいること。

【入試相談】
1.令和6年12月16日(月)・17日(火)・18日(水)のいずれか
9:00~16:00
2. 在籍している中学校の先生にご来校いただき、受験希望者の中学校での活動等についてお聞きします。
※日時の事前予約は中学校の先生が行います。

併願と併願優遇との違い

「併願」とは、複数の高校を受験することを指します。通常の併願では、合格した高校のいずれかを選んで入学する高校を決めます。

「併願優遇」とは、複数の高校を受験することは同じですが、第一志望校に不合格だった場合には、必ず併願優遇を利用した高校に入学しなければなりません。

推薦と併願優遇との違い

推薦入試では学力試験は行われず、面接試験などがメインとなることが多く、一般入試よりも1か月ほど早く実施する高校がほとんどです。学校長などの発行する推薦書が必要で、推薦書は学校成績・内申点・出席日数のほか、課外活動や学びへの意欲などを認められることで発行してもらえます。高校によってはほかにも、自分で自分を推薦する「自己推薦」の制度もあります。

「併願推薦」とは、ほかの高校の推薦入試を複数受験することができる推薦制度です。一方で、1校しか出願できない推薦入試のことを「単願推薦」と呼びます。

「併願優遇」は推薦書は不要ですが、その代わりに事前に中学校と高校との間で取り決めが必要です。併願優遇を利用する旨を中学校の担任の先生に伝えて、高校への手続きをしてもらいます。

併願優遇 利用の流れ

高校受験で併願優遇を利用する場合の流れは、以下の通りです。

    ① 高校の学校説明会へ参加する
    ② 併願優遇の有無や基準を満たしているかを確認する
    ③ 担任の先生へ高校名と併願優遇の利用を伝える
    ④ 学校間での確認がなされる
    ⑤ 担任の先生から生徒に併願優遇の利用について報告がある
    ⑥ 一般入試を受験する

併願優遇制度は、すべての私立高校で設けられているわけではありません。まずは、志望する高校で制度があるかどうかを確認します。
併願優遇が利用できるかどうかの基準は、主に内申点や出席日数です。基準がクリアできているかどうかは、自分でも確認することができます。
なお、学校の先生には中学校・高校間の事前相談が行われる12月までに希望を伝えなければいけません。遅くとも11月には担任の先生に伝えておきましょう。

併願優遇のメリット

併願優遇を使った場合には、ほとんど必ず合格が約束されているので、万が一、第一志望に不合格だったとしても「進学できる高校が必ずある」という状況を作ることができるため、中学浪人の可能性を限りなく低くすることができます。精神的にも安心して第一志望高校の勉強に集中することができます。また、複数の併願校や滑り止め高校を受験する必要もありません。

合格の可能性が高まることで…

  • 第一志望校の勉強に集中できる
  • 進学先を確保できる
  • 併願校を1校のみとして受験費用を押さえられる

などのメリットがあります。

【例】
・第1志望 都立A高校
・第2志望 私立B高校 ←併願優遇
・第3志望 私立C高校

第2志望の私立B高校で併願優遇を受ける場合、第1志望A高校に不合格だった場合には、必ずB高校に進学しなければいけません。
第3志望のC高校に合格してもB高校に進学しなければいけませんので、志望順位は慎重に考えておきましょう。

併願優遇のデメリット

併願優遇制度を利用した場合、「合格を確約されるケース」もありますが、必ずしもそういうわけではありません。
以下の場合には、入学できない可能性もあります。

入学できない可能性がある場合とは…

  • 優遇の内容が「入試得点への加点」である場合
  • 面接試験での態度が非常に悪い場合
  • 入試問題を白紙提出した場合 など
  • 併願優遇は、私立高校が内申によって合格する可能性を高めてくれるのですが、その優遇の内容が「入試得点への加点」である場合、当日の試験結果によっては合格できない場合があります。
    また、面接や入試での態度が望ましいものではない場合には、入学の意欲がないものとみなされて、不合格になることもあります。

    また、併願優遇は東京都や関東の一部の都道府県を中心に実施されているため、

  • 制度自体がない自治体がある
  • 希望する高校を選べないことがある
  • 第一志望の公立高校とのレベル差が大きいことがある
  • 人気校や偏差値の高い高校では導入されていないことが多い
  • などのデメリットもあります。



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