通信制高校からの大学受験について、今回は「総合型選抜」について説明します。実は、この総合型選抜こそ通信制高校のあなたにぜひおすすめしたい入試なんです。
それでは早速、大学入試「総合型選抜」について詳しく解説していきます。
目次
総合型選抜とは
まずは、そもそも総合型選抜とは何か?という点を確認していきましょう。
総合型選抜とは、各大学のアドミッション・ポリシーに合致する人物を選抜する入試です。アドミッション・ポリシーとは、「大学の入学者受け入れ方針」のことで、「こんな学生に入学してほしい!」という大学の考えをまとめたものです。
総合型選抜は、出願書類・面接・小論文などの様々な観点から受験生を見ていき、総合的に合否の判断を行う入試です。
当然ながら、通信制高校からでも総合型選抜を受けることができます。
学力は問われない
総合型選抜においては、一般選別に比べて学力を重視しません。大学によっては学力検査は行わず、書類や面接などで合格者を決める場合もあります。
一方で、「自分の得意なこと」で勝負できるのも総合型選抜に特徴と言えるでしょう。アドミッション・ポリシーをよく理解したうえで、志望理由書や面接等でしっかりアピールすることが重要です。
アドミッション・ポリシーにフィットすることが重要
総合型選抜(AO入試)の合格の基準は、その大学の「アドミッション・ポリシー」です。
いかに学生がアドミッション・ポリシーと合致しているか?ということを入試ではみられることになります。
例えば、慶應義塾大学の総合型選抜は「FIT入試」と名付けられています。大学側の「こんな学生がほしい!」という気持ちと、学生側の「この大学・学部で学びたい!」という気持ちの両方を実現するものとなっています。
FIT入試は2006年度から始まりました。FIT入試とは、この学生を「教えたい」という私たち法学部教員と、慶應義塾大学法学部法律学科・政治学科を第一志望とし、そこで「勉強したい」学生との間の良好な相性(fit)を実現しようとするものです。これはFlexible and Thiking入試の頭文字をとったものでもあります。
総合型選抜入試において評価されるのは3つ
では、大学側はどのようにしてアドミッション・ポリシーと学生が合致しているかを確かめるのでしょうか?
それは、総合型選抜の志望理由書をはじめとする「出願書類」「小論文」「面接」です。それらに、あなたがこれまでに力を入れてきたことや興味・関心、大学入学後あるいは将来に取り組みたいことなどを反映させます。大学側はそれらのものから受験生の活躍や意欲を読み取っていくわけです。
この時の評価軸は、主に3つあります。順番に見ていきましょう。
・英検などの英語資格
・課外活動における実績
評定平均
「総合型選抜学力を問わない傾向にある」とは言われますが、それは学力が必要ないというわけではありません。特に上位大学の総合型選抜の「出願資格」には評定平均を条件に定めているところが多くなっています。
募集要項「出願条件」として、「評定平均●以上」あるいは「学習成績概評▲以上」等表記がある場合には、その条件を満たさなければ出願することができません。
英検などの英語資格
総合型選抜の出願条件として、実用英語技能検定(英検)やTOEFLなどの英語資格の取得を課している大学も多くあります。
特にグローバルな活躍をしたいという意欲がある場合には、語学留学なども視野に入れて、英検などの語学を身につけていることは非常に説得力を持つことでしょう。
課外活動における実績
部活や留学、ボランティアなど、学校以外の活動実績も総合型選抜において評価の対象となります。全国大会への出場や活動での表彰など、具体的に実績を示せるもののほかにも、どんな思いで活動をしてきたか、どんな学びがあったのかなど、大学入学後の活動プラント絡めてアピールできるとよいでしょう。
通信制高校は総合型選抜に有利な理由
通信制高校において、総合型選抜で大学合格を目指す場合、全日制高校より圧倒的に有利である理由が2点あります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
評定平均が取りやすい
通信制高校の場合には「絶対評価」で成績がつきます。全日制高校での「相対評価」とは異なり、ほかの生徒との比較で評価が付くわけではありません。そのため、レポート課題・テストなどをきちんとクリアできていれば、「オール5」も可能です。これは全日制高校ではかなり難しいことです。
こうしたことから、全日制高校に比べ「評定平均が高く取りやすい」という強みがあります。
興味のあることを追究できる
全日制高校に比べて、自由時間がとりやすいというのが通信制高校の特徴の1つです。興味を持ったことに対して、徹底的に追究していく時間が多いということは、ほかの受験生との差別化にもつながります。
準備に十分な時間を確保できる
総合型選抜に合格するためには、大学のアドミッション・ポリシーの分析や理解、自分の目指していることの言語化や資料集め、資格の取得、書類の作成、面接対策など様々な準備が必要です。通信制高校であれば、これらの準備に十分な時間をかけることもできます。
対策はいつから始めればいいか?
総合型選抜の対策は早い方が有利というのは間違いありません。一般選抜よりも早く出願が始まり、また出願のための書類の準備も必要です。そのため、理想的なスタート時期は「高校2年生の夏休み」までに着手する、と言われています。
6月 募集要項配布
7月 願書配布
8月~9月 出願
9月~10月後半 選考試験
10月~12月頭 合格発表
出願の注意
総合型選抜の場合、大学によって出願時期が異なっています。
また「出願」のほかに、「エントリー」が必要な大学もあるということも、一般選抜との大きな違いと言えます。なお国公立大学の総合型選抜ではエントリーは行われません。
エントリーと出願の違い
エントリーとは、出願の前の1段階のことです。学校説明会やオープンキャンパスへの参加をエントリー条件とする学校もあります。早い場合は6月頃から始まります。中には、 「エントリーシート」に志望動機を書き、それに基づいて出願前に面談を行われるケースもあります。
さらに注意すべき点は、総合型選抜では、事前にエントリーをしておかないと出願が認められないケースがあるという点です。スケジュールに余裕をもって進めていく必要があります。
総合型選抜を行う大学の一例
早稲田大学
書類審査、筆記審査、面接審査など複数の審査を組み合わせて志願者の能力を総合的に評価する方式で、制度によって学位取得に用いる言語、評価要素や組み合わせが異なるほか、出願資格もそれぞれ設定されています。
一部抜粋して紹介します。学部学科によって試験の名称や日程、条件等も異なっています。
■地域探究・貢献入試
出願期間:2024年9月1日(日)~ 9月12日(木)
■社会科学部 全国自己推薦入試
出願期間:2024年9月23日(月)~9月30日(月)
■創造理工学部「早稲田建築AO入試(創成入試)」
出願期間:2024年9月2日(月)~9月10日(火)
■人間科学部 FACT選抜入試
出願期間:2024年9月1日(日)~ 9月9日(月)
■スポーツ科学部
〇総合型選抜Ⅰ群
第1回事前セミナー申込期間
2024年4月15日(月)~4月19日(金)
第2回事前セミナー申込期間
2024年6月17日(月)~3月21日(金)
〇総合型選抜Ⅱ群
〇総合型選抜Ⅲ群
出願期間:2024年9月13日(金)~ 9月26日(木)
〇スポーツサポート歴入試
出願期間:2024年9月9日(月)~ 9月13日(金)
関西大学
東北大学
東北大学の「AO入試」、つまり総合型選抜にあたる入試は、第Ⅱ期及び第Ⅲ期の2種類の入試方法があります。
■第Ⅱ期
東北大学は国公立大学ですが、大学入学共通テストを受験しなくても合格できる方式があり、それがⅡ期です。Ⅱ期では「調査書の学習成績群がA段階に属する」ことが出願要件として求められています。専願制をとっているため、合格した場合は必ず入学する必要があるので注意が必要です。文学部・教育学部・法学部・理学部・医学部(医学科)・医学部(保健学科)・歯学部・工学部・農学部が対象です。
■第Ⅲ期
第Ⅲ期は大学入学共通テストを課すAO入試で、全学部が対象です。出願期間は共通テスト後となっています。
塾・予備校でできること
定期テスト対策
総合型選抜においても、出願要件として一定の評定平均が必要な場合があります。評定平均を上げるために定期テスト対策はしっかりと行うようにしましょう。また、学校の勉強に取り組むことは一般入試対策も兼ねることになります。
小論文
いくら熱意があってもそれが大学に伝わらなければ意味がありません。自分の思いを言葉にして、分かりやすく相手に伝えるためにも小論文対策が必須です。
大学によって扱うテーマが異なりますので、志望大学をある程度絞った上で対策を進めていくのが得策です。
志望動機
まずは、その大学でなければいけない理由を考えてみましょう。志望大学のアドミッション・ポリシーをよく読み、理解を深めていくことが求められます。自分の学びたいことや方向性を明確にするだけでなく、言葉で伝えることができるように、分かりやすくまとめていく必要があります。
なお大学によってテーマや文字数が異なる場合があります。1つの志望度理由書を複数の大学に使いまわすことは、原則しません。志望大学にあわせて志望理由書は書き直す必要があることを知っておきましょう。
面接対策
出願書類の内容を踏まえて面接が行われると想定されます。そのためにも、志望理由書を含む出願書類は十分な時間をかけて用意をする必要があります。文字数の関係で書類に書ききれなかったことを面接官に伝えるチャンスとも言えます。
また、面接官からは突っ込んだ質問をされるケースもありますので、想定問答をしっかり対策しておくと安心です。
面接ではあなたの本来の姿を100%発揮したいものです。面接マナーを押さえ、緊張した雰囲気の中でも堂々と自分の思いを伝えられるようにシミュレーションしておくとよいでしょう。
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