東京都には、不登校の経験や高校を中退した生徒を主に受け入れる学校、通称「チャレンジスクール」というものがあります。
今回は、都立のチャレンジスクールについて解説します。

チャレンジスクールとは

「主に小・中学校での不登校の経験や高校での中途退学の経験により、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジする高校です。」

チャレンジスクールとは、不登校の経験のある生徒や、体調不良・家庭の事情等が原因で学校を長期欠席していた生徒、あるいは高校を中途退学した生徒などを主に受け入れる都立高校です。
高校において「新たに自分の目標を見つけ、チャレンジする学校」ということからチャレンジスクールと名付けられました。

チャレンジスクールの特徴

小学校、中学校において、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジできる支援を目的とした高校です。
そのため、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーによるカウンセリングや教育相談が充実しているという点は、チャレンジスクールの特徴を言えるでしょう。心身に配慮して、きめ細やかな指導が行われることも魅力の1つです。

また、少人数制や習熟度別クラス、学び直しなど、これまでの学習のブランクや苦手意識に配慮した学習カリキュラムが組まれている学校もあります。

学校への通い方は?

チャレンジスクールは普通科ではなく、「総合学科」です。また、定時制・単位制であるため、ライフスタイルや学習ペースに合わせて通うことができます。定時制の場合、「午前部」「午後部」「夜間部」の中から選んで入学することができます。
定時制高校なので、基本的には4年間で卒業を目指しますが、高校によって3年での卒業を目指すこともできます。

入試の内容は?倍率は?

一般的な高校入試では、調査表(内申点・出席日数等)と当日の学力試験の結果を合わせて合否判定を行いますが、チャレンジスクールの入試では、調査表を使用せず、また学力テストを実施しません。主に、志願申告書・作文・面接の総得点で選考します。
気になる入試倍率は、例年1.5倍程度です。

(東京都教育委員会HPより)

 令和5年度令和4年度令和3年度
六本木1.711.621.34
大江戸1.661.281.16
世田谷泉1.551.321.02
稔ヶ丘1.441.261.27
桐ヶ丘0.710.910.97
小台橋1.340.93
立川緑

※注:小台橋高校は令和4年度開校、立川緑高校は令和7年度開校予定

学校の授業内容は?

必須科目の中でも英語・国語・数学については、少人数のきめ細かい指導を行っています。小中学校の復習にも対応し、基礎・基本を大切にした学び直しを行います。
また、学科以外でも幅広く学ぶことができ、キャリアガイダンスを通じた職業観の育成や体験学習も重視しています。

どんな人たちが通っているの?

チャレンジスクールは一言で言えば、「不登校生のための都立高校」です。小学校・中学校で不登校の経験があり、内申点や出席日数が足りなかったり、授業に出られなかったことで勉強が遅れていたり、そうした事情で都立大学を受験できないけれども、学習や学校生活への意欲がある生徒を対象としています。
また、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーによるカウンセリングや教育相談が充実している点も、チャレンジスクールの特徴・特色でしょう。心のケアに配慮したきめ細かい指導を行い、安心して学ぶことのできる環境づくりがされています。

先生

チャレンジスクールは全日制の高校です!
週5で通え、高校では充実した学校生活が送りたいと考えている生徒さんにぴったりです。
メンタルケアのサポートも充実しているので、保護者の方も安心ですね。

都内のチャレンジスクール

チャレンジスクールはすべて都立高校です。それぞれの学校について詳しく見ていきましょう。

六本木高校

六本木高校は、100以上の設置科目数があり、幅広く学ぶことができます。単位制をとっており、卒業に必要な74単位は必修科目を含め、自分で時間割を作って学習していきます。部活動も盛んで、やりたいことや自分に合うことなどを見つけて、より自分らしい進路の実現をめざせるような支援が行われています。

▼所在地
東京都港区六本木6-16-36

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/roppongi-he/

大江戸高校

大江戸高校は総合学科であり、情報・ビジネス系列、生活・福祉系列、伝統・文化系といった3つの系列を選択できます。そのほか国数英の学び直しにも力を入れおり、大学受験科目など100を超える講座から選ぶことができます。学校は落ち着いた雰囲気で、穏やかな学校生活を過ごす生徒が多いようです。

▼所在地
東京都江東区千石3-2-11

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/oedo-he/

世田谷泉高校

世田谷泉高校は、少人数(15~25人)授業、習熟度別講座(国語、数学、英語)が実施されています。また、学校外における学習について単位認定しており、また高等学校卒業程度認定試験(高認)の合格科目は単位の履修とみなされます。芸能活動をしながら通学される方も多いようです。

▼所在地
東京都世田谷区北烏山9-22-1

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/setagayaizumi-he/

稔ヶ丘高校

稔ヶ丘高校は、安心して通え、落ち着いて勉強することができる環境を大切にしており、服装指導や生活指導が行われています。少人数・習熟度授業で、基礎基本からきめ細やかな学習指導がされています。また、人間関係におけるストレスにうまく対処していく方法を学ぶため、早稲田大学人間科学学術院の研究室と共同開発したプログラム「コーピング」が実践されています。

▼所在地
東京都中野区上鷺宮5‐11‐1

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/minorigaoka-he/

桐ヶ丘高校

桐ヶ丘高校では、通常の科目のほか、自分の進路に応じて「福祉・教養」「情報・ビジネス」「アート・デザイン」という三つの系列による専門科目を選ぶことができます。年間3回のカウンセリングウィークのほか、スクールカウンセラー、ユースソーシャルワーカー(YSW)等の専門員が複数名常に学校にいてくれるので、安心・安全な学習生活を送ることができます。

▼所在地
東京都北区赤羽北3-5-22

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/kirigaoka-he/

小台橋高等学校

小台橋高等学校では、生徒が気負いなく入って来られる職員室や、ラーニングコモンズと呼ばれる自習や話し合いなどで自由に使えるスペースが設けられており、生徒の居場所づくりを大切にする学校です。また、3年次・4年次において、課題研究(自分で課題を設定し、調べ、まとめ、発表する)に取り組みがあります。このゼミ教育を通じて「自調・自考・自発」できる生徒を育成しています。

▼所在地
東京都足立区小台2-1-31

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/odaibashi-he/

立川緑高等学校

立川緑高等学校は、令和7年4月に開校予定のチャレンジスクールです。
三部制(午前部・午後部・夜間部)・総合学科・単位制の定時制高校で、所属する部以外の単位を修得することや、学校外の学修の単位認定により3年間での卒業も可能です。

▼所在地
東京都立川市錦町6-3-1

▼公式サイト
https://www.metro.ed.jp/tachikawa-challenge-he/

チャレンジスクールと通信制高校の比較

チャレンジスクールを検討される方の中には、通信制高校と比較検討される方も多いでしょう。具体的にどんな点が通信制高校と同じで、どんな点が異なるのか、詳しく見ていきます。

共通点

通信制高校は単位制であり、入学試験においては学力試験が行われない場合がほとんどです。また、調査書(内申書)も合否に影響しないので、欠席日数が多いなど内申点が悪くてもまったく問題ありません。
また、不登校経験者、高校中退者を多く受け入れている点も共通点と言えるでしょう。

通信制高校の中には、不登校経験者へのケア・サポートが充実している学校・もしくはサポート校もあります。

相違点

チャレンジスクールの通学日数は週5回が基本となります。定時制で時間帯は昼夜選ぶことができますが「毎日通う」が必須です。
たとえば、毎日6時間授業を受ければ3年で卒業(通常の全日と同じ)、毎日4時間授業を受ければ4年で卒業という計算になります。一般的には4年で卒業を目指します。

一方、通信制高校の通学日数は、年数回のスクーリングのみとなります。基本的には自宅での学習がメインですが、通学スタイルの通信制高校もあり、通学日数や通学の時間帯を選ぶことができる高校も多くなっています。また、通信制高校と同時にサポート校に入学するケースも多くなっています。

【参考】定時制と通信制の違いは

定時制高校は、朝・昼・夜(もしくは朝・夜)と学習する時間がコースごとに定められています。入学時にコースを決めてその時間帯に登校します。
通信制高校は、は毎日登校する必要はなく、自宅や学校、もしくは学校の定めた学習センターなどで学習します。年間数日の面接指導(スクーリング)や試験等で通学する必要があります。

チャレンジスクールの注意点

通学しなければならない

チャレンジスクールは、定時制・全日制高校であるため、毎日学校に通う必要があります。
それが負担になってしまい退学・中退してしまったり、通信制高校へ転校したりするケースもあります。

もう少し詳しく解説しましょう。チャレンジスクールにおいては、単位を修得する条件に「成績」や「出席日数」の規定が含まれます。例えば、テストで基準点を下回る科目が多い、年間の出席すべき日数の1/3以上欠席・遅刻というような場合には、単位が取れず、留年となります。成績や成績出席日数の基準が高校によって異なります。

先生

学校に毎日通うことが難しい生徒さんは、定時制高校であるチャレンジスクールよりも、通信制高校の方が通いやすい場合もあります。
高校の立地なども含めて、継続して通うことができるかよく検討しましょう!

大学進学を目指すなら通信制高校の進学コースがおススメ

では、チャレンジスクールからの大学進学は可能でしょうか?

●チャレンジスクールの大学進学率(各高校のサイトより・令和5年度)

六本木 33%
大江戸 43%
世田谷泉 33%
稔ヶ丘 50%
桐ヶ丘発表なし

チャレンジスクールの大学進学率を見てみると、平均して40%弱となっています。都立高校の大学進学率は6割弱ですから、チャレンジスクールからの大学進学率は低いと言えるかもしれません。
実際、高校での学習も基礎を重視したものであり、受験勉強とは難易度に大きく差があることがわかります。

また、全日制高校や一部の通信制高校のように「進学コース」「特進コース」など、大学受験に特化したコースが存在しておらず、大学への進路指導よりも生活指導や基礎学習の指導を重視していることがわかります。

先生

チャレンジスクールでの授業レベルと大学受験の学習レベルにはギャップがあるので、もしも大学を目指すならば、「進学コース」のある通信制高校を選ぶのがおススメ。

エンカレッジスクールとの違いは?

エンカレッジスクールは、「学び直し」を重視した全日制・学年制の都立高校です。エンカレッジスクールの入試には学力考査はありませんが、調査書が必要です。調査書・面接・小論文の結果で合否を決定します。特別支援学校ではありませんが、発達障害など特別な配慮を必要とする生徒の学び直しにも力を入れています。また、学年制をとっており3年間で卒業することができます。定期考査は原則行いません。
2024年現在、エンカレッジスクールは、足立東高校、秋留台高校、練馬工科高校、蒲田高校、東村山高校、中野工科高校の6校です。

東京都以外にチャレンジスクールはある?

チャレンジスクールは東京都立高校であり、学校は東京都内あります。しかし、東京都以外にもチャレンジスクールと同じような目的を持った学校が全国にあります。一部ですがご紹介します。

【千葉県】
地域連携アクティブスクール
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/seisaku/miryoku/koukou/active-school.html

【神奈川県】
クリエイティブスクール
フレキシブルスクール
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/tokushoku/hsw/keyword.html#creative

【愛知県】
フレキシブルハイスクール
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/aichi-manabi/flexible-highschool.html

【大阪府】
エンパワメントスクール
https://www.pref.osaka.lg.jp/o180040/kokosaihenseibi/empower/index.html

このほかにも、公立の高校受験において調査書を使わない入試枠を設けるなど、不登校の中学生の受験に対する配慮が様々な自治体で始まっています。

まとめ

今回は、東京都にあるチャレンジスクールについて解説しました。

なお、四谷学院高校は通信制高校ですが、「都立のチャレンジスクールの併願として、通信制高校を探している」という方もご相談にいらっしゃいます。
いずれも学ぶ意欲を大切にして、本人の能力や適性を十分に生かし、そして開花させるような、高校生活を選び取っていただければと思います。


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四谷学院ブログ編集部

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