電気通信大学 基盤理工学専攻 Ⅲ類(理工系)中根 大介 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

1/1000ミリの世界から
生命の秘密を解き明かす

電気通信大学 情報理工学域 Ⅲ類(理工系) 准教授
中根 大介 先生


日本列島の中でヒト1人を見つけるのと同じ

私は、バクテリアという小さな生命体を顕微鏡で観察しています。バクテリアは、この地球上で最もたくさん存在する生命体です。1匹のサイズは1ミリの1000分の1ほどしかありません。1人のヒトから1匹のバクテリアを見つけることは、日本列島の中でヒト1人を見つけることに匹敵します。このような小さな生命体は肉眼では見ることができません。光学顕微鏡という観察装置が必要になります。
実際にバクテリアを見てみると、1匹1匹が自由自在に動き回っている様子に驚くかもしれません。ヒトの場合、オリンピック選手であれば1秒間に自身の身長ほどの距離を泳ぐことができます。一方、バクテリアの場合、その距離は自分の体長の10倍ほど、最も速いものだと数百倍にも達します。

バクテリアの理解が治療薬の開発につながる

では、バクテリアはどのように泳ぐのでしょうか?私たちヒトのような手足を持たないため、泳ぎ方も全く異なります。例えば、あるものは「べん毛」というスクリューを毎秒100 回ほど高速回転させることで推進力を発生させます。また、別のものはスパイダーマンのように細い糸を伸縮させることで移動します。中には、自分の体の表面をキャタピラのようにぐるぐると回転させて移動するものもいます。私は顕微鏡にちょっと工夫をすることで、この動態を可視化することに日々挑戦しています。
バクテリアの動きは、私たちヒトの病気を理解する上でとても重要です。例えば、カンピロバクターやヘリコバクター、緑膿菌といった病原細菌は、私たちの体の中で動き回ることができるのですが、この動きをなくしてしまうと病気を引き起こすことはできません。すなわち、バクテリアの動きを理解することは、運動を阻害する治療薬の開発につながります。

研究者としての人生を形づくった偶然の出会い

私の研究への興味は、高校時代にさかのぼります。高校の生物担当の先生がよく実験をさせてくれました。印象に残っているのはシュペーマンの実験です。イモリの胚の一部を移植すると別の組織が分化誘導されるという発生学で有名な実験の1つです。もちろん、高校の教科書にも載っています。ただ、いざやってみると、とても難しくて、全然思ったようにできませんでした。結局、実験は失敗してしまったのですが、とてもワクワクしたのを覚えています。その後、大学では理学部の生物学科に入学しました。ただ、発生学の研究室は人気で入れず、バクテリアの研究室に入ることを決めました。その理由は、同じ学部内の学年で1番賢かった友人がそこに決めたからです。彼の決断ならきっと間違いないだろうと。初めこそ強い興味関心があったわけではありませんが、顕微鏡を覗いてみると楽しくなってきて、バクテリアの世界に魅了されました。そして20年経った今でもその分野の研究を続けています。偶然の出会いが私の人生を形づくる大きな要素であったことを実感しています。

多彩なアプローチで世界中の研究者が連携

「生命とは何か?」この問いは、生命科学の根幹を成すものです。私は、バクテリアの動きに「生きものらしさ」を感じずにはいられません。小さな生命体が、なぜ・どのように動くのか調べることで、生命の秘密を解き明かすことに面白さを感じています。このような研究は1つの方法にとどまらず、多彩なアプローチが可能です。光学顕微鏡を使ってバクテリアの運動を観察するだけでなく、理論物理の専門家である共同研究者は、シミュレーションを駆使してバクテリアの運動を計算・数値化しています。また昆虫の専門家は、昆虫とバクテリアの共生関係における運動の役割を研究しています。今月はドイツやイギリスから共同研究者がやってきて、新しい研究プロジェクトについても議論をしました。私の研究は、日本に限らず世界中の研究者との連携を実感させてくれます。これこそが研究の面白さであり、やりがいです。

中根先生からのメッセージ

受験生のみなさん、高校での物理や化学、情報の学びが、大学での新たな挑戦の礎となります。生命科学の世界は、これらの科目からのアプローチでさらに豊かなものになり得るのです。異なる分野の融合から革新的な研究成果が生まれ、すでに多くの人々が素晴らしい成果を上げています。
電気通信大学では、高校時代に生物学を専攻していなかった学生たちが、物理や化学や情報の知識を活かして生命科学の新境地を切り開いています。センサーやロボティクスの分野から来た学生も、ここでの実験を通じて新しい発見をしています。受験勉強で培った知識は、大学での学びに直結し、皆さんの未来を形作る貴重な財産となるでしょう。私たちは、皆さんが持つ可能性に期待しています。一緒に新しい研究の地平を開くことを楽しみにしています。

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