Interview
国際支援や異文化への興味から
農業を通じて人々と触れ合い、助ける研究の道へ
京都大学 農学部 資源生物科学科 教授
桂 圭佑 先生
痩せた土地でも作物を育てられるように
スマホやドローンも活用
アジア、アフリカ、南米などの開発途上国の主要作物の生産性を持続的に高めていくための技術開発を作物学的視点から行っています。開発途上国ではインフラが整っておらず、例えば干ばつや痩せた土壌が問題になっているなど脆弱な環境で作物栽培が実施されているところが多くあります。そのような環境で、どのような作物をどのように栽培していけば良いかということを現地の研究者や農家たちと共に考えて活動を行っています。言葉で言うのは簡単ですが、このような環境では複雑な要素が多様に絡み合いながら作物の生産性に影響を及ぼしているので、現場で作物生産上の課題を見つけることも簡単ではありません。現場で作物をしっかりと観察し、現地の人たちからも情報を得ながら、課題を明らかにして、その解決に取り組んでいます。
また、近年はそのような環境でも活用できるIT技術の開発にも取り組んでおり、今や開発途上国にも広く普及しているスマートフォンなども活用した作物の生育・収量診断技術の開発や、ドローンを活用した技術開発なども行っています。
人生の目標を持っていないことに焦り
バックパッカーとして東南アジアへ
私が高校生の時には、明確な人生の目標は持っていませんでした。しかし、大学生時代にはそのような自分に焦りを感じ、様々な分野の書籍を読み漁り、その中で、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんやJICAの農業系の専門家の方の存在を知ったことは大きなきっかけになったと思います。また、大学生時代にバックパッカーとして東南アジア諸国を回っていた時に、異文化に触れることで刺激を多く受けていたのですが、そのような中でも貧しい農村に住む彼らのライフスタイルにノスタルジーを感じたことも、自分の進路を考える上で影響を与えたと思います。そのような経験から、人々の生活基盤を支える農業を通じて国際貢献をしたいと考えるようになり、大学院から農学分野に進みました。
農業が好き 人と触れ合うのが好き
農家に役立つ技術は研究冥利に尽きる
私は、農業が好きであり、多くの人々と触れ合うのが好きなので、実際の農業の現場で多くの人たちと触れ合いながら作物を栽培して研究活動を推進するのは単純に楽しいです。農作物の栽培試験では天候等の影響も強く受けるため、なかなか順調に進まないことも多いですが、良い技術を開発あるいは発見できた時には、達成感を感じますし、その技術が農家に還元されることは本当に研究者冥利に尽きます。また、私の研究室には同じような志を持った学生が国内外から集まってくれます。私の研究室の学生にはアジア、アフリカ、南米に長期間滞在してもらって研究活動に従事してもらうことも多いのですが、特に開発途上国では研究はおろか日常生活にもストレスを感じることが少なくないので、それを乗り越えた学生たちは非常に逞しくなって帰ってきてくれます。彼らと一緒に成長できるのも大学教員の醍醐味と言えると思います。
まず、高校生の皆さんには、できるだけ視野を広げて、多くの世界を知ってほしいです。世の中には本当に多様な職業があって、高校生時代の私はそのほとんどを知りませんでした。できるだけ広くアンテナを張って、多くの情報を得てご自身の進路選択の意思決定に活かしてほしいと思います。今はインターネットなどを通じて多くの情報に触れることができるので、その点は今の学生を非常に羨ましく思います。
また高校生から受験科目について相談を受けることもあるのですが、基本的にはどの科目も重要なので、そこまで深く考えなくてよいと思います。農学部においても、教科書や論文を読む上で国語力や英語力は必須ですし、農作物のことを細かく考える上でも、数学、生物、物理、化学の知識はどれも必要です。私自身は物理・化学で受験したため、生物学については苦労しましたが、頑張れば何とかなるものです。
私のように大学院から学部を変えるということも可能なので、深くは考え過ぎずに、しかし後悔のない選択をしてほしいです。