Interview
宇宙に住む! ~持続可能な暮らしの実現を目指して~
東京理科大学 創域理工学部 電気電子情報工学科 教授
木村 真一 先生
深刻な「宇宙ゴミ」問題に立ち向かう
私たちの研究グループでは、大きく2つの技術について研究しています。
一つは、「宇宙ゴミ」を除去するためのシステム研究です。知っている人もいるかもしれませんが、地球のまわりには故障して使えなくなった衛星やロケットを打ち上げたときの残骸など、「宇宙ゴミ」が沢山飛んでいます。この「宇宙ゴミ」は、なんと弾丸のスピードの10倍の速度を持ち、お互いに接触することで爆発して数が増える大変やっかいな物で、今深刻な問題になっています。私たちの研究グループでは、この宇宙ゴミを見つけて安全に近づくためのカメラや、取り除くためのロボットの技術などについて研究しています。特にカメラの研究では、学生さんと一緒になって宇宙に打ち上げるカメラを沢山開発してきました。こうしたカメラは、「IKAROS」や「はやぶさ2」と言った探査機でも活用されています。
安全で快適に「宇宙に居住」するには?
もう一つの、大きな研究テーマは、宇宙で暮らす「宇宙居住技術」です。今、人類の宇宙での活動圏は、月や火星なども視野に大きく広がろうとしています。こうして宇宙で人類が活動していくためには、ロケットや宇宙船の技術だけでなく、宇宙で暮らす空間を作ったり、空気や水をきれいに保ったり、心身共に健康に保つなど、宇宙で人が安全で快適に暮らすための技術がとても重要です。私たちの研究グループでは、こうした技術の開発を様々な分野の研究者や企業の方々と協力しながら進めています。地上の技術と宇宙の技術をつなげることで、SDGsに代表されるような、サステナブルな地上の暮らしと、宇宙の暮らしを、一緒に実現することを目指しています。
生物研究に着想を得た“生きた”宇宙システムの開発
私は、元々大学では薬学部で生物の研究をしていました。生物は怪我をしても、その怪我に適応して生きていくことができますよね。その仕組みに興味があって、生物の、特に怪我をしたときにどのように適応して動くことができるのかという研究をしていました。
宇宙システムは、故障しても修理することが難しいですよね。ですから、みんな絶対故障しない様に、開発をするので、ものすごく費用がかかってしまい、実現することが難しく、みんな悩んでいました。そこで、「故障しない」のではなく、生物のように「故障しても動く」事ができるシステムが役に立つのではないかな、と思ったのが宇宙の研究を始めたきっかけです。こうした考え方の結果として、私たちの研究グループでは、様々な宇宙機器を開発することができ、その考え方を、宇宙居住技術に発展させようとしています。
私たちの研究グループの特徴は、実際のミッションや利用と非常に近く、自分たちで手がけた技術が実際に使われるところに大きな特徴があります。自分たちの手がけた機器が、遙か宇宙でちゃんと動いたときの感動は計り知れません。特に、宇宙用のカメラはとても素敵な対象で、自分たちの手がけたカメラが、世界中で誰も見たことのない映像を送ってくれたときは、本当にやっていて良かったなと思います。
宇宙は総合的なシステムです。特に宇宙居住は宇宙工学だけではなく、化学や生物、建築やロボット、さらには法律など、様々な分野が集まって初めて実現できます。様々な興味を持った人たちに集まってもらえると、もっともっと良い物ができると思います。ぜひ一緒に、宇宙を目指しませんか。
東京理科大学 創域理工学部 電気電子情報工学科
https://www.tus.ac.jp/academics/faculty/sciencetechnology/electrical_engineering/