東北福祉大学 総合福祉学部 福祉行政学科 阿部 裕二 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「社会保障」を考えることは、あなた自身の生き方を考えること

東北福祉大学 総合福祉学部 福祉行政学科 教授
阿部 裕二 先生


生活上の困難を社会全体で支えていく仕組み

皆さんは、「社会保障」という言葉を聞いたことがありますか?聞いたことがあっても、「社会保障ってな~に?」と問われると、答えに窮するのではないでしょうか。実は、社会保障ほど私たちの生活に密着した、あるいは生活の基盤となっている仕組みはないでしょう。私たちは一生涯の中で、病気や怪我、失業さらに貧困など様々な生活上の困難に遭遇します。これらは個人的な努力では防ぐことができません。大まかにいうと、社会保障は個人の責任を超えてこのような生活上の困難に直面したときに、社会全体で支えていく考え方であり仕組みであるといえます。私の研究分野はこの社会保障です。
学生時代は経済学分野の1つである社会政策を基礎として学び、その発展形態としての社会保障を、老後の年金の在り方、現代社会における生活保護の課題など、とりわけ所得保障の視点から考察を展開してきました。さらに、日本とは全く異なる形態をとるとはいえ、日本と同様に少子高齢化が進展するシンガポールの社会保障制度についても研究してきました。現在は、生活困窮者問題、第3の居場所づくりなどの生活問題に視点を置き、理論的研究とともに実証的・実践的研究を行っています。

主体的ではない無目的な出会いが人生の分岐点に

私が社会保障の分野に出会ったのは、大学1年生の後期から開講されていた演習(ゼミ)でした。とはいえ、最初から興味をもってそのゼミを選択したわけではなく、下宿先の先輩の紹介(強引な誘い?)によって、その門を叩きました。その時は「社会保障とは何か」、そして「社会保障のゼミでは何を学ぶのか」さえ知らずに飛び込んだのです。その後、具体的に学ぶにつれて、「私たちの生活に直結する考え方、仕組みなんだ」ということが理解でき、興味をもって参加することになりました。このように、初めこそ主体的ではない無目的な出会いでしたが、現在、社会保障を専門境域とする研究者・教育者として人生を過ごしていることに不思議さと人生の面白さを感じています。

一挙三得!社会保障を学ぶ意義とは?

社会保障を学ぶことは、さまざまな場面で「役に立つ」と考えられます。第1は、「利用者に対して」です。皆さんが支援者の立場に立った場合を想定してください。さまざまな問題の解決を求めている対象者から、たとえば、医療保険や公的年金の相談があるとします。その際、社会保障制度の内容を理解しておくことは、支援者として必要な資質の一つといえます。第2 は、「自らへの問いかけ」です。生活上の困難は誰しも共通にもっている危険です。その意味で、それに対応する仕組みである社会保障を学ぶということは、社会のあり方を考えるとともに、自分自身はどのように生きていくのか、どのような生活をしていくのかを考える上でも有用なこととなるでしょう。このような点も面白みであり、やりがいにつながるところです。第3は、「社会への問いかけ」です。社会保障を単に暗記として学ぶのではなく、「社会保障とは何か」「なぜ、私たちの社会や生活に社会保障が必要なのか」という「what」「why」の視点から学ぶことが重要なのであり、このような視点をもつことで、私たち一人ひとりは現在の社会保障制度・政策をよりよく改善していく推進者となり得るのです。

阿部先生からのメッセージ

高校と大学での学びの違いは、「学習」と「学問」であるといわれます。学習は既存の基礎的な知識や問題解決法(技能)を吸収し習得することに重点を置いた学び方です。まさに「学んで習う」(学習)のです。つまり、すでに存在しているものをそのまま吸収・習得し、しかも相手から習うわけですから、学び手としては受動的な学び方にならざるを得ません。それに対して「学問」は、文字通り「学んで問う」ことです。学ぶ分野は多岐にわたりますが、完全な・絶対的な知識や技術などは存在しません。私たちは絶えずこれらを更新・再構築していく必要があります。つまり、私たちはただ単に既存の知識や技能を受動的に習得する(習う)のではなく、現代の社会・生活において過去・現在の知識や技術が正しいか否か(適合するか否か)を判断する能力が求められているのです。
「学問」には、「学習」とは異なり、さまざまな場面での「問いかけ」が不可欠となります。「何故なんだろう」、「どうしてなんだろう」、「本当なんだろうか」などの「問いかけ」です。自らが「学んで問う」わけですから、受動的な姿勢であっては「問う」ことはできません。その意味で、「学問:学んで問う」際には、学び手の主体性が求められているのです。是非、大学ではこの相違を意識しながら学びを深めてください。

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