東京都市大学 情報工学部 塩本 公平 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

日常生活に欠かせないインターネットを
より安全・快適に利用するために

東京都市大学 情報工学部 教授
塩本 公平 先生


インターネットの運用管理に
コンピュータの深層学習を応用

現在、インターネットは私たちの日常生活の中で欠かせない存在となっており、インターネット上では日々、多量のデータがやり取りされています。このようなビッグデータの中には、サイバーセキュリティの脅威となる攻撃も潜んでいて、私たちが安心してインターネットを利用するためには、このような攻撃を監視し、サイバーセキュリティの脅威から守ることが重要となってきます。私は、機械学習の1つである深層学習という手法を用いて、ネットワークのデータを分析し、こうした脅威を検知するための研究を行っています。
また、インターネットが混雑した場合に、データの通信速度(スループット)が低下したり、パケットの遅延や損失が発生したりします。データ通信の遅延や損失に対する許容度というのは、WEBページの閲覧なのか、音楽や動画のストリーミング再生なのか、サービスの種類ごとに異なりますから、ネットワークが混雑した場合には、そのサービス種別ごとに異なる対応を取る必要があります。そこで、これも深層学習を用いて、暗号化されたインターネット通信でも、ユーザーがどのようなサービスを受けているかを判別し、さまざまなサービスの品質を良くするための研究も行っています。

10年前は誰も考えなかった
深層学習の有効性を明らかに

深層学習をコンピュータネットワークの運用管理に応用できないかと考えたのは、今から10年ほど前あたりのことです。深層学習の研究が行われ始めた頃で、2015年のImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(ILSVRC)というコンペでは、深層学習が画像認識の分野で人間の能力を超える性能を達成した、として世の中の注目を集めました。当時、まだ電気通信会社の研究所に勤めていた私は、複雑化するインターネットを安定的に運用し、お客様に満足していただける品質を提供するために、深層学習が有効なのではないかと考えたのです。その頃は、深層学習をインターネットの運用管理に応用しようと考えている研究者はほとんどいませんでしたが、私が研究を進めていく中で、その有効性が明らかになっていき、いくつかの研究アイデアを実用化までもっていくことができました。そして、その応用範囲をインターネットの運用管理だけでなく、モバイルネットワークやクラウドコンピューティングの運用管理へ広げていきました。

世界中の研究者と競争し
豊かな社会に貢献していく

この研究の面白さは、深層学習という、これまでのコンピューティングとは異なる、新たな考え方にあります。これまでのコンピューティングはノイマン型コンピュータと呼ばれる原理に基づいており、人間があらかじめアルゴリズムを考え、プログラムを作成する必要がありました。それに対して、深層学習では、多量のデータからコンピュータが自動でアルゴリズムを学習します。このような新たなコンピューティングのパラダイムに好奇心を掻き立てられます。深層学習は画像認識、音声認識、自然言語処理などさまざまな分野で応用されており、直近では、文章、音声、画像、動画などのデータやコンテンツを生成することができる深層学習を用いた生成系AIが注目を集めているところです。深層学習の研究では、世界中の研究者が競争しており、極めて速いスピードで技術が進化していきます。こうした世界中の研究者と切磋琢磨しながら、インターネットをはじめとする産業システムの革新的技術を創造することで、豊かな社会に貢献していくことに、やりがいも感じています。

塩本先生からのメッセージ

深層学習を用いた研究には、数学とコンピュータのスキルが必須です。また、最新の研究動向を知るためには、英語の論文を読むことも必須となります。大学で深層学習を用いた研究に取り組むためには、数学・英語を特にしっかりと勉強してください。

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