Interview
今の高校生は20年前の高校生とどう違う?
昭和女子大学 人間社会学部 現代教養学科 教授
シム チュン・キャット 先生
「教育」と「社会」を多角的・多面的に捉える
僕の研究分野は「教育社会学」です。「社会学」では、人間のやることなすこと全てが研究対象となるため、広すぎるが故に枝分かれし、例えば「家族社会学」、「地域社会学」、「宗教社会学」、「ジェンダー社会学」など、いろいろな分野にフォーカスした専門領域があります。また、それぞれの領域が完全に独立しているわけではなく、相互に深く関係し合っている場合があることも、ここでお伝えしておきます。僕が専門としている「教育社会学」は、高校生も馴染み深い「教育」と「社会」との関係を多角的、多面的に捉える学問です。いま研究を進めているテーマについて、公的に行っているものも含め、簡潔に紹介します。
海外事例を「比較の鏡」として、日本の特徴と課題を可視化
高校生文化:
いまの高校生は10年前、20年前の高校生とどのように違うのか?それはなぜなのか?教育政策、社会背景やメディア環境が異なるから?また高校差、地域差、家庭差、男女差はあるのか?諸外国の場合は?
女子大学の存在意義:
女子大学は、どのように女子をエンパワーメントするのか?日本の男女格差指数はなぜ低いのか?学校における男女平等は建前なのか?就職率が高ければいいのか?キャリア教育とは?諸外国の場合は?
教育と少子化との関係:
教育費が高いから少子化が進んでいるのか?他の要因はないのか?結婚や出産の選択に学歴、地域やジェンダーがどのように関わっているのか?職業、労働時間や収入がどのように影響するのか?学歴によって人生観と価値観が変わるのか?諸外国の場合は?
一つ屋根型グローバル大学キャンパス:
昭和女子大学の構内にテンプル大学ジャパンキャンパスがあるように、僕が名付けた、このタイプの「一つ屋根型グローバル大学キャンパス」はどのような教育効果があるのか?両校の学生の間にどのような交流が?それはオンライン交流と異なる?諸外国の場合は?
在日ネパール人の教育課題:
日本に来るネパール人はなぜ増え続けるのか?家族滞在ビザの子どもたちの学校教育はどのようになっているのか?彼らの将来の進路は?日本の学校と社会はどのように対応している?そもそもネパールの教育制度とは?諸外国の外国人受入れ政策は?
以上からも分かるように、僕の研究テーマは全て「諸外国」との比較が重要です。海外の事例も「比較の鏡」として調べないと、日本の特徴と課題がはっきりと可視化できないと考えるからです。
きっかけは、自分が受けてきた教育への違和感
このような研究に興味をもったきっかけは、おそらく日本の多くの高校生がそうであるように、僕もその昔、自分が受けてきた教育に違和感を覚えたからです。そして、自分の意志で選んだつもりの文系や理系、進学先などが、本当は社会や周りから何かしらの影響を受けたからなのではないか?と疑問に思ったから。つまり自分は、社会の制度、規範や常識などの糸たちに操られているマリオネットに過ぎないのではないかと思い、その糸(意図とも)についてもっと自分で調べて知りたくなったのです。研究でいろいろな人たちと関わることを通して、その都度世界の広さを感じるとともに、自国の視点だけでなく、一つの同じ星に生きる一人の人間として、社会が抱える課題や未来について考えられることが、この研究の一番の面白さです。
私は“Yesterday I was clever, so I wanted to change the world. Today I am wise, so I am changing myself.”という言葉が大好きです。これは、ペルシャの詩人ルーミーによる、自己改善の重要性を強調した言葉です。他人と比べての「偏差値」よりも、現在と将来の自分との「変化値」が重要ですから、気になる大学のオープンキャンパスなどに行って、実際にその建学精神や雰囲気を感じ取った上で、自分を「変身」させてくれる大学と学科を見つけてほしいですね。
昭和女子大学 人間社会学部 現代教養学科
https://www.swu.ac.jp/swuhp/university/gendai/
シム チュン・キャット先生のゼミ
https://www.swu.ac.jp/swuhp/university/gendai/seminar.html