静岡大学 工学部 機械工学科 島村 佳伸 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

社会の安心安全のために
材料を破壊する研究

静岡大学 工学部 機械工学科 教授
島村 佳伸 先生


材料を超高速で「疲労」させ
耐久性を短時間で評価するために

自動車、鉄道、航空機などの輸送機械や発電プラントの構造部や駆動装置に使われる材料である鉄鋼材料や炭素繊維強化プラスチックでは、小さな荷重であっても、その荷重を何度も繰り返し加えるとひびが生じて部材が割れてしまうことがあります。これを材料の「疲労」といいます。私の研究室では、疲労現象の中でも「超高サイクル疲労」と呼ばれる、極めて多い繰り返し荷重(1千万回~10億回)が加わるときに部材が割れてしまうことがある現象に着目して研究を行っています。超高サイクル疲労が問題となる機械構造は、自動車や航空機のエンジン、鉄道の車軸、発電プラントの蒸気タービン、風力発電機のブレードなど、回転する機械構造が主です。
ここで、材料に生じる超高サイクル疲労現象を研究室で再現しようとするときに問題となるのが、実験に必要な時間です。機械装置で一般的な動力機構である油圧機構やモーターを用いて1千万回をはるかに超える繰り返し荷重を与えようとすると、1回の実験が終わるのに早くても半年、場合によっては1年以上もかかってしまい、全く実用的でありません。そこで本研究室では、超音波振動を用いて材料に超高速な繰り返し荷重を与えて材料の長期耐久性を短時間で評価できる試験技術(超音波疲労試験技術)の開発を行っています。さらに、鉄鋼材料や炭素繊維強化プラスチックの長期耐久性の向上につながる知見を得ることを目的に、超高サイクル疲労現象がなぜ生じるのかを解明するための研究を行っています。

研究が地域のものづくりへの貢献にもつながる

私が今の大学に移ってきたのは2005年の春ですが、そのとき、先任の先生が取り組んでいた研究がこの超音波疲労試験技術で、その先任教員が退職するときに研究を引き継いで始めたのが現在の研究を始めるきっかけです。当時、超音波疲労試験技術の開発に取り組んでいる研究室は世界的にも多くなかったことから、他所にはない研究ができること、さらに超音波疲労試験技術は従来の試験技術の延長ではなしえない大幅な時間短縮が原理的に可能であるという技術的優位性に魅力を感じたことが、先任の先生の研究を引き継いでやってみようと思った理由です。
また、静岡大学工学部が位置する浜松地域は、スズキやヤマハ発動機に代表される輸送用機器関連企業が多数存在し、自動車や二輪車の設計・開発・生産といった機械のものづくりが活発な地域です。そのため、浜松地域の中核大学である静岡大学工学部には、地域のものづくりへの貢献も求められています。先に述べたとおり、輸送機械の構造部や駆動装置では疲労による構造や部品の破損の懸念があります。そのため、地域の輸送用機器関連企業からすると、材料の疲労に関して十分な学識をもった教員が地元の大学にいると、困ったことがあったときに技術相談をしやすかったり、共同研究をもちかけやすかったりするということがあります。そのような地元産業界のニーズに応えるために疲労の研究を始めたという面もあります。

社会の安全にもつながる、研究の面白さとやりがい

超音波疲労試験技術の研究の一番面白いところは、まず、従来の試験技術の延長ではなしえないことを可能にできる(この場合は疲労試験時間の大幅短縮が可能となる)という点と、自分で開発した装置を使うことで材料の長期耐久性に関する様々な新知見を得ることができるという点です。もちろん、いままで誰もやってこなかったことを可能にするのは簡単なことではありません。本研究の場合に、研究対象の材料自体の十分な知識が必要なのはもちろんですが、それに加えて、装置開発のために材料に関すること以外の様々な知識(振動学、計測学、制御学など)も必要です。装置開発にあたっての技術的課題をそれらの知識を総合することで解決できたときには、大変うれしいものです。
またすでに述べたとおり、自分で開発した超音波疲労試験装置で材料の長期耐久性の評価を行っていくと、従来明らかとなっていなかった様々な事実が明らかになっていくことがあります。研究の結果、純粋に科学的に興味深い事例がみつかるといった場合もあれば、従来の常識とは合致しない新しい知見が得られるといった場合もあります。
このように、他所ではほとんどなされてない実験を実施することで、新しい学術的知見を積み重ねていくことができるのは、学問への貢献という意味でとてもやりがいがあります。さらに、本研究のような材料の破壊の研究というのは、究極的には機械構造・機械部品の破壊事故を防止するため行うものですので、本研究で産業的に有用な知見が得られた場合には、自分の研究成果が社会の安全安心の向上に直接つながります。そういう意味でも本研究にやりがいを感じています。

島村先生からのメッセージ

機械系では理系科目、特に数学と物理が重要なのはいうまでもありませんが、職業人として大きく羽ばたいていくには専門知識だけでは不十分で、外国語をはじめ、政治経済、国際関係、地理、歴史、文化などについての幅広い教養も不可欠です。また、教養は人生を豊かにし、スポーツやホビーなどの趣味は生きる上での楽しみを増やしてくれます。ついては、高校時代、ぜひ文系科目や部活動などにも積極的に取り組んでみてください。

関連情報

学部から探す

大学の学問系統別にご紹介しています。さっそく興味のある学問から読んでみましょう。

四谷学院の「ダブル教育」
四谷学院について詳しくはこちら
個別相談会はこちら
資料請求はこちら

ダブル教育とは?

予約コード17GJWAZ

『学部学科がわかる本』冊子版をプレゼント

予約コード17GJWAZ

ページトップへ戻る