Interview
最先端の技術を思いのままに!
社会に役立つロボットの実現を目指して
芝浦工業大学 工学部 機械工学課程 基幹機械コース 教授
内村 裕 先生
地球からの遠隔操作で月面に拠点を建設
私は、最先端のロボットや機械を思い通りに動かすために、制御工学やロボット工学を駆使した研究を行っています。離れた場所のロボットを、通信ネットワークを介して遠隔操作できるようにする研究や、人工知能(AI)によって自律的にロボットを制御する研究を行い、社会に役立つロボットの実現を目指しています。
例えば、地球からの遠隔操作で月面に拠点を建設するための研究をJAXA(宇宙航空研究開発機構)および建設会社と共同で行っています。月と地球の間の通信には往復で数秒の遅延があるため、施工機械側の情報が地球に届くのに数秒、地球の操作者側の指令が機械に届くのにさらに数秒の遅れがあります。そこで、操作者に、施工機械の数秒後の動作を予測したバーチャルなモデルを提示し、遅れを補償した操作環境を提示するというものです。
ロボット自ら学習し、最適な動作をする
また、人工知能による自律的なロボット制御については、例えば、ブルドーザで土砂を撒き出すための経路制御を最適化する研究があります。ここでは、機械学習という手法によって、機械が自ら学習(知能を取得)して自律的に作業を行うことを目指しています。機械には何をすべきかを教えずに、作業が達成されると報酬(スコア)を与えます。 最初はランダムに動きますが、繰り返し動作するうちに、どう動けば報酬が得られるかを徐々に学習し、やがて最適な動作を行うようになります(深層強化学習)。
他にも、市街地のような人の生活空間の中で、ロボットが自律的移動をするための技術の向上を目指し、屋外環境下で自己位置を推定しながら、目的地に確実に到達するロボットの開発を行っています。同技術の研鑽と検証のため「つくばチャレンジ」という自律移動ロボットの大会に2010年から毎年出場しています。
思い通りに動いたときの達成感はひとしお
私は、小さい頃からものづくりに興味があり、図画工作の授業が楽しみでした。中学・高校時代には、電子工作やマイコンのプログラミングなどに興味をもって接していました。大学では電気工学を専攻しましたが、4年次に所属した研究室でロボット制御について研究することになり、制御理論やプログラミングについての知見を深めたことが、現在につながっています。ロボットや自動機械を動かすためには、理論的な検討はもとより、実際に装置を組み上げて想定した通りに動くことを確認する必要があります。1度の試行で想定通り動くことは滅多になく、プログラムの修正を含めて試行錯誤を何度も繰り返して、ようやく動くことがほとんどです。それだけに、思い通りに動いたときの達成感はひとしおで、さらに成果が社会に役に立つことにつながれば一層のやりがいを感じます。
理工系の学部に進むことを、数学や物理などの成績で躊躇している人は、受験科目の成績による消去法で学部選びをせずに、自分の興味ある分野に進んで欲しいと思います。大学を卒業した後の理系の仕事も、楽しくやりがいのある内容に溢れています。今は難しい問題も繰り返し取り組んでいけば必ず解決するので諦めずに頑張ってください。
芝浦工業大学 工学部 機械工学課程 基幹機械コース
https://www.shibaura-it.ac.jp/faculty/
内村 裕先生の研究室
https://www.rcon.mech.shibaura-it.ac.jp/
芝浦工業大学_内村 裕先生
http://resea.shibaura-it.ac.jp/?422f20e8438d28de4f83610085ae6d7b