大阪公立大学 大学院工学研究科 物質化学生命系専攻 荻野 博康先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

持続可能な社会のための
循環型モノづくりのカギは微生物!?

大阪公立大学 大学院工学研究科 物質化学生命系専攻 教授
荻野 博康 先生


バイオマスのさらに先へ!
二酸化炭素などから直接モノが作り出される未来のために

20世紀以降、化学産業でのモノづくりは石油を原料や燃料とする石油化学を基盤として大きく発展してきました。しかし、皆さんもご存知の通り、石油などの化石資源を大量に消費し二酸化炭素を排出することで、現在、地球温暖化が進んでいるといわれています。
また、石油などは限りある資源です。持続可能な社会の構築のためには、化石資源に頼らない、循環型のモノづくりに転換する必要があります。そこで最近では、植物などが二酸化炭素から生成する生物由来の資源であるバイオマスによるモノづくりが注目されています。ただし、バイオマスを資源とした場合でも、バイオマスを目的の化合物に変換するためにはエネルギーが必要です。そのため、将来的には、バイオマスを経由してモノづくりするのではなく、植物や微生物などが持つ酵素の働き(触媒機能)を利用し、二酸化炭素などから直接モノづくりをすることが望まれています。研究室では、酵素や微生物の機能を改変し、これまでの常識を覆す効率で物質を変換することができる、新たな酵素や微生物の開発に取り組んでいます。

自然界で進化した酵素。産業用として利用するための障害は?

酵素は、生物が生産する触媒ですが、そのほとんどは、常温・水溶液中などの温和な環境下で反応を触媒します。また、酵素には多くの種類があり、酵素ごとに固有の反応を触媒します。そのため、酵素を産業用触媒として用いることができれば、温和な環境下で、副生成物を生じずに、目的とする物質のみを生成する省資源・省エネルギーな物質生産工程(バイオプロセス)を構築することが可能となります。
しかし、生物が生産する酵素は自然界で進化してきた触媒であり、産業用として適していない場合もあります。例えば、化粧品や香料などのファインケミカル製品や医薬品の多くは、複雑な分子構造をしており、水に溶けない物質が数多く存在します。このような物質の反応は、通常、その物質を溶かす性質を持った有機溶媒に溶解しますが、酵素は水を溶媒として触媒機能を発揮するように進化しており、有機溶媒存在下では触媒機能を失います。そこで、研究室では産業用の触媒として利用しやすい高性能酵素の開発に取り組んでいます。同様に、産業用の触媒として高性能の微生物の開発にも取り組んでいます。

研究を通して日々向上するモノづくり基盤技術

酵素や微生物は本来、温和な環境下で触媒機能を発揮しますが、高温、有機溶媒存在下などの特殊環境下で触媒機能を発揮する酵素や微生物も見出されています。これらは酵素や微生物ごとの固有の特徴であり、自然界での進化の過程で生じた賜物です。一方、自然界とは異なる環境下で、進化・改変することにより、自然界とは異なる酵素や微生物を得られることが期待できます。
酵素や微生物ごとの固有の特徴は、全て遺伝子に記録されている情報に基づくものです。特殊な環境下でも機能する酵素や微生物は、一体どんな遺伝子を持っているのか。それらの遺伝情報と機能との関係性の解明に、日々取り組んでいます。
研究を続ける中で、日ごとに成果が出ており、生物の触媒機能を利用したモノづくり基盤技術も向上しています。

荻野先生からのメッセージ

小学校、中学校、高等学校などで学ぶ理科、すなわち、物理、化学、生物、地学などは、自然科学、サイエンス、あるいは理学ともいわれる学問です。自然科学とは、自然現象を正しく捉える学問です。一方、自然科学で得られた知識を人間社会に役立てる学問を工学、エンジニアリングといいます。これら理系の科目の基本となる学問は数学です。数学によって物理の理解が深まり、物理によって化学の理解が深まり、化学によって生物の理解が深まります。また、数学や自然科学によって、工学が発展します。数学、物理、化学などの基礎となる自然科学をしっかり学び、その英知を将来、人間社会に役立てていただきたいと思います。

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