日本歯科大学 生命歯学部 発生・再生医科学 中原 貴 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

再生医療に「歯の細胞」で挑む

日本歯科大学 生命歯学部 発生・再生医科学 教授
中原 貴 先生


廃棄される歯を再生医療に活用

近年、失われた細胞を再び生み出す能力を持つ“幹細胞”が、私たちの身体には存在することが明らかとなりました。これを皆さんの組織・臓器から取り出して、再生医療に応用する研究が注目を集めており、それは歯科医療も例外ではありません。現在の歯科医療は、樹脂や金属などの材料を用いた治療が一般的ですが、歯の組織にも幹細胞がいることが分かったことで、再生医療の期待が高まっているのです。
歯科では、日常的に行われる治療のなかで、乳歯や親知らずなどの抜歯を通じて、皆さん自身の組織を得ることができるので、再生医療のためにわざわざ骨髄や脂肪の組織を採取する必要がありません。また、抜いた歯(抜去歯)は、通常は医療廃棄物として処理されますが、それを再生医療に再利用することには、生命倫理の問題も存在しません。

斬新な治療法を生み出す鍵は、新たな「細胞シート」と「細胞バンク」

再生医療では、ヒトの細胞を培養し、シート状にしたものを細胞シートといいます。私たちは、抜去歯から得られた歯髄の組織から幹細胞(歯髄幹細胞)を取り出し、これまでにない新たな「細胞シート」の技術開発に成功しました(特許出願中)。この新技術は、歯髄幹細胞を特定の条件で培養することで、細胞自身が自律的に多層構造を形成します。これを私たちは、「自己多層化細胞シート(Self-multilayered cell sheets)」と名付けました。この新規細胞シートは、ピンセットで操作できるほど丈夫で扱いやすいので、歯科の再生医療にとどまらず、全身の再生医療にも応用できると期待しています。
また私たちは、歯髄幹細胞などを培養して増やした後に凍結保存する「歯の細胞バンク」の取り組みを進めています。歯の細胞を凍結保存しておけば、何十年たった後でも再び細胞を増やして、自身の再生医療に活用することができます。歯の細胞バンク認定医が在籍する歯科医院であれば、全国から歯の細胞バンクに抜去歯を送れるので、自身の細胞を将来の再生医療のために保管できる先進的な取り組みです。
このように、従来の歯科治療では想像もつかないような斬新な治療法を生み出して、患者さんの健康に貢献できるアプローチを見出せるのは、再生医療研究の大きな魅力と言えるでしょう。

学生時代からの夢である新たな歯科治療の実現に向けて

もともと私は学生の時から、‘削って詰める’といった材料ベースの歯科治療よりも、これまでになかったような新しい治療法を生み出したいと思っていました。そこで関心をもったのが、歯周病で失われてしまう歯周組織(歯を支えるあごの骨などの周囲組織)の再生でした。大学卒業後は大学院に進学し、生体材料と薬剤を組み合わせた歯周組織の再生研究で学位を取得しました。その翌年、アメリカの研究グループによって、歯周組織の幹細胞(歯根膜幹細胞)の存在が明らかとなり、私も幹細胞に興味を持ちました。そこで、広範な年代の患者さんの親知らずから歯の幹細胞を取り出して詳細な解析に成功したことで、これらが再生医療に有用な細胞であることを確信したのです。今では歯髄幹細胞に注力し、この細胞を活用した新しい治療法を生み出すことによって、歯科の最大テーマともいえる「歯の再生」も可能ではないかと考えるようになりました。こうして、歯科医師としての夢の実現に向けて頑張っています。

中原先生からのメッセージ

日本歯科大学学則の第1条では、本学が教授研究するのは、「歯・顎・口腔の医学」であると称しています。そして、創立100周年を迎えた2006年には、世界で唯一の生命歯学/Life Dentistryを冠した学部名に改めました。このユニークな名称は、名は体を表す証左に他なりません。つまり本学は、歯学(はがく)ではなく、歯科を軸にすえた医学・医療を社会に啓発しているのです。
本学教員は、おのおのが掲げる生命歯学を追究し、教育、研究、臨床に努めています。今回は、再生医療に歯の細胞で挑む、私が追究する生命歯学を紹介しました。従来の歯科治療にとらわれずに、斬新な発想と行動力で歯科領域を開拓できる生徒さんを待っています。本学の一員になって、あなたの生命歯学を追究してみませんか?

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