Interview
挫折しないダイエットの鍵は、呼気検査にあり!?
名古屋大学 大学院情報学研究科 情報学部自然情報学科 准教授
永峰 康一郎 先生
吐く息に含まれるアセトンは脂肪代謝の指標
私が主に行っている研究の目的は、人間の呼気(吐く息)を分析し、その中に含まれるアセトンを、体内の脂肪代謝の指標として確立することです。体内の脂肪が肝臓で分解(燃焼)すると、副産物としてアセトンという化学物質が生成されます。アセトンは血液によって肺へ運ばれ、呼気とともに体外へ排出されます。したがって、体内の脂肪が燃焼すれば結果的に呼気中のアセトンが増加し、ダイエットの指標として応用できる可能性があります。私は被験者に運動や食事制限など様々な条件を課して呼気を採取する実験を行い、呼気中のアセトン濃度の変化と運動や食事制限との関係を具体的に明らかにして、この目標を達成しようとしています。
研究のきっかけは、苦し紛れのホラ話
私は大学院生の頃、そして大学教員になったばかりの頃は、現在とは全く無縁の「地球化学」という分野の研究を行っていました。それは地下から湧き出す温泉ガスを分析し、その成分変化から地震を予知することを目的としていました。1997年にアメリカで研究を行う機会があったのですが、英語が苦手だった私は、自己紹介をする際に絵を描いたスライドを使用しました。その絵は、地下に大ナマズが住んでいて、大ナマズの吐く息が地下の割れ目(断層)を伝って温泉ガスとして湧き出すものでした。研究の紹介とともに、日本では昔、地下に大ナマズが住んでいて、それが暴れると地震が起こると信じられていたという文化を紹介したかったのです。
大ナマズが暴れるのは病気になった時だろうから、それを予知するには大ナマズの健康診断をすれば良い、しかし地下深くに住んでいる大ナマズには血液検査もレントゲン検査もできない、健康状態を知る手かがりは吐く息ぐらいしかないだろう、吐く息が温泉として湧き出せば、それを観測して健康診断を行い地震予知ができる、と説明しました(結構ウケました)。これは英語の苦手な私が、当時医学も生物学の知識もほとんどなく作った苦し紛れのホラ話で、よもや人間の吐く息で健康診断が行われているとは当時想像もつきませんでした。しかし帰国後、同じ大学内でそのような研究が行われていることを偶然知り、びっくり仰天してその先生と吐く息に含まれるアセトンと脂肪燃焼の関係を研究し始めることになりました。つまり現在の研究は、私のホラ話がきっかけとなった研究なのです。
目に見えない体内の状態を、最も簡単に知る方法
脂肪燃焼のような目に見えない体内の反応を知る手がかりとして最も一般的な方法は血液検査です。しかし採血には看護師など専門の資格を必要とし、また注射によって体を傷つけるため繰り返し行うと体に負担がかかります。これに対して、呼気は誰でも、何度でも、体に負担をかけずに繰り返し採取できます。これが呼気検査の最大のメリットです。また「ダイエットに王道なし」とよく言われますが、世の中にはダイエットの情報があふれているにも関わらず、多くの人が途中で挫折してしまいます。私は挫折の原因の一つは、体内の脂肪燃焼の状態をリアルタイムに知るのが難しいことにあると考えます。もし30分ウォーキングをして、呼気を採取して50グラム脂肪が燃焼したと分かったとしたら、「よし!もう30分歩いて100グラム減らそう!」とモチベーションが上がりませんか?人間の体から最も簡単に手に入れられるもの(呼気)に着目して目に見えない体内の状態(脂肪燃焼)を探る、そしてそれがダイエットに役立つ、これが私の研究の面白さ、やりがいだと思います。
受験勉強は一種のゲームと考えられます。できるだけ多くの点数を得て志望校に合格することが目的です。このゲームのルールは、出題範囲が限られている(学習指導要領から逸脱できない)こと、正解があること、そして満点(つまり得点に上限)があること。多くの場合、複数科目の合計点をもとに合否が判定されますが、そこで注意してほしいのは、それぞれの科目には満点があり、いくら得意でもそれ以上の得点は得られないことです。では、受験勉強に当たって、得意科目を伸ばすのと苦手科目を克服するのは、どちらが効率的でしょうか?私はまず苦手科目を克服すべきと思います。なぜなら、苦手科目の方が伸びしろが大きく合格につながりやすくなるからです。既に90点取れる得意科目は、どんなに頑張って満点を取っても総得点は10点増加にとどまりますが、40点しか取れない苦手科目なら頑張れば60点くらい取れるかもしれません。この場合、総得点は20点増加です。おそらく後者の方が勉強量は少なくて済み、どちらがコスパ(タイパ)が良いかは明らかでしょう。さらに苦手科目はやがて得意科目となり、より総得点を向上させてくれるはずです。皆さんの時間は限られています。できるだけ効率的に勉強を進めましょう。
名古屋大学 大学院情報学研究科
https://www.i.nagoya-u.ac.jp/graduate-school-of-informatics/
永峰 康一郎先生の研究室
https://www.is.nagoya-u.ac.jp/dep-cs/nagamine/indexj.html