Interview
IoTやAI技術を活用し
誰もが暮らしやすい社会をつくる
九州工業大学 工学研究院 電気電子工学研究系 教授
中藤 良久 先生
高齢者や障がい者の支援から
事故や犯罪の防止まで
近年、IoTと呼ばれる、家電やスマートフォン、カーナビなど、様々な「モノ」がインターネットに接続されAIが情報処理を行う仕組みによって、今までにない機器やサービスが数多く提供されるようになりました。とても便利な世界になっていますが、世の中にはまだ、高齢者や障がい者をはじめとした、生活の中での困り事を抱えた人たちもたくさんいます。そこで、私の研究室(福祉支援システム研究室)では、IoTやAI 技術を用いて、高齢者や障がい者が日常的に困っていることを解決したり、彼らを支援したりするためのシステムについての研究を行っています。また、事故や犯罪といった、社会に存在する課題を解決するための方法についても研究しています。
現在の主なテーマは、以下の4分野です。
・障がい者支援
電気喉頭の音質改善、発話支援、視覚障がい者のWeb読み上げ支援、歩行支援、他
・高齢者支援
補聴器、アナウンスの聞こえ改善、認知症判定、悪質訪問販売対策、他
・健康支援
眼疲労予測、iPod難聴対策、腰痛予防、他
・社会支援
災害箇所の通知、荷崩れ防止、音声話者認証、ソフト開発支援、車両検知、他
例えば、高齢者の聞こえをサポートする補聴器や、視覚障がい者が使いやすい電子機器、音声による家電やロボットの制御システムなどの研究開発、また、社会課題の解決への取り組みとして、周囲の状況をセンサーで感知して事故を防いだり、人の挙動や動作を感知して事件や犯罪を未然に防いだりするような技術の研究を行っています。今もすでに、スマートフォンやAIスピーカーのように音声を認識して操作できる機器はありますが、音声だけでなく、言葉の裏に隠された感情や真意を理解できるような機器があれば、会話や動作を通して、詐欺などの犯罪を未然に防ぐことができるかもしれません。
これらの研究開発を通じて社会貢献していくことを目標にしており、現在は将来の事業化に向けて、複数の企業との共同研究も進めています。
社会貢献に直結したテーマだから
自信をもって取り組める
私がこの研究を行うようになったきっかけは、妻が働いていた高齢者施設の夏祭りに参加し、介護の様子を目の当たりにしたことでした。24時間介護が必要なその施設で、寝たきりの高齢者を介助したり、認知症でほぼ会話ができない方と笑顔で接したりと、大変な仕事を自然にこなす職員の方たちの姿を見て、自分ももっと直接的に困っている人の役に立ちたいと思うようになり、企業から大学へ移って介護や福祉を研究していく道を選びました。社会貢献に直結したテーマのため、ブレずに自信を持って取り組めるところが、この研究の魅力です。社会の役に立つ、人の役に立つ、と信じて研究を進められることは、自分の存在意義を確認できるという点においても大きな意味があります。さらに、実際に研究した成果が人の役に立った時の喜びはひとしおです。
九工大は就職がとても良いと言われている大学です。それは開学からの先輩・OB・OGの方々の活躍が礎となっています。九工大生は大企業の人事からも非常に高く評価されています。大学の授業は他大学と比べて少々忙しいかもしれませんが、だからこそ社会に出てから活躍できるのだと思います。ぜひチャレンジしてみてください。