久留米大学 医学部 看護学科_加悦美恵先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

患者に心地よさと安心感を作り出す
「手の触れ方」「体の使い方」とは?

久留米大学 医学部 看護学科 教授
加悦 美恵 先生


看護師の手には、すごい力がある!
病院実習での驚きが研究の入口に

私は看護師の「手の触れ方」について研究しています。この研究を始めるきっかけとなったのは、大学3年時に行った病院実習の経験です。当時、痛みに苦しんでいた癌患者の背中に看護師が手を当てると、しばらくして患者の表情が和らいでいくのを目の当たりにし、看護師の手にはすごい力がある! と思いました。そこで卒業研究は友人と力を合わせて、患者一人ひとりに「看護師に手で触れられて楽になった経験はありますか?」といった聞き取り調査を行いました。患者の方々の生の声を聴けたのは今振り返っても貴重な経験だったと思います。その後の大学院時代には、胃カメラを受ける患者に対し、背中に手を触れてさする場合と、触れない場合を比較する介入研究を行いました。口から太い管を入れられて恐怖を感じている患者から得られた、「母親のような手のぬくもりを感じた」、「甘えたい気分だった」という回答は今も印象に残っています。

看護者の手の触れ方次第で
患者は不快や不安に感じてしまう

看護師は24時間患者のそばに寄り添い、背中に手を当て慰めたり、手を握って励ましたりします。他にも、脈をとる、血圧を測るなど、患者の身体状態を把握するときも身体に触れ、その機会は圧倒的に多いです。そのため、優しくあたたかい手で触れたほうが、患者にとって心地よいのではないかと考え、始めたのが「手の触れ方」の研究でした。
特に私が着目したのは、患者の身体を拭く、着替えやおむつを交換する、といったごく日常の看護ケアの際の触れ方です。では具体的にどのように研究するのか。これらの看護ケアには共通して寝返りを助ける動作があり、専門用語で「体位変換」といいます。この際、看護者の手や指にかかる圧力を測定することにしたのです。私が立てた仮説は、看護師が力任せに患者の体を動かしていれば、圧力は高くなり、患者が不快な思いをするのではないか、というものでした。また、指先に力を込めてケアする看護師と、指先ではなく手のひら全体で触れてケアする看護師では、患者の感じ方も異なると考えました。
一言で圧力計測といっても、どの計測機器をどう使うべきか、色々と調べて試しました。結局、フィルム素材の圧力センサーと解析装置を手に入れ、看護者一人ひとりの手形を取り、フィルムを手に張り付けて計測しました。体位変換のたびにフィルムを張り換えて圧力値を得る、という地道な実験です。また、患者役にはアイマスクで目隠しをしてもらい、看護者の顔かたちや声のトーンに左右されず、触れられたときに感じたことをアンケートで聞きました。すると、体位変換を受けた患者役10人のうち、指先の圧力が高い触れ方のときのみ「不快」に感じる人が4割おり、「安心の度合い」も低くなっていることがわかりました。本来、看護ケアは安心するものでなければなりませんが、手の触れ方によっては、その度合いを下げてしまっていたのです。

看護は実践の科学
大変だからこそ創意工夫が面白い

全ての患者が、よりあたたかい手の触れ方で看護ケアを受けられたなら、どんなに良いでしょうか。今では、ケアするときに指先に力が入らないような「体の使い方」の研究もしています。手の触れ方だけを変えても上手くいかないこと、腰の落とし方や前後の足の開き方、ベッドの高さなども影響してくることがわかってきました。
看護は実践の科学と言われます。実践しながらデータを集め、一つひとつ疑問に思うことを明らかにしていくのは大変なことです。実験条件を揃えようにも相手は人でこちらも人だからです。創意工夫が必要になりますが、そこに研究の面白さを感じてもいます。研究結果を学生たちに伝え、彼らと話し合うことも刺激になっています。

加悦先生からのメッセージ

大学は知を創造するところです。教員と学生の垣根はありません。少しの疑問でも仮説を立て研究すれば誰かの役に立つ何かが得られるかもしれない、そう思うだけでわくわくしませんか。受験勉強を頑張って行きたい大学で仲間や教員と創意する時間を存分に味わってください。

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