熊本大学 文学部 コミュニケーション情報学科 池川 佳宏 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

日本にマンガはいくつある?
アーカイブを構築して解き明かせ!

熊本大学 文学部 コミュニケーション情報学科 現代文化資源学コース 准教授
池川 佳宏 先生


新たな学問“マンガ学”を切り拓く

私は熊本大学でマンガを研究対象として教えていて、大学にある「文学部附属国際マンガ学教育研究センター」という機関の兼務教員もしています。もともと「マンガ学」というものは既存の学問体系には存在しませんが、マンガは作品・作家研究なら文学、歴史研究なら史学、表現についてなら美学、読者についてなら社会学、場合によっては法律やビジネスなど、さまざまな学問のアプローチから研究することができます。それだけマンガは大きな存在であり、まだまだ学問として未開拓の分野であるということです。
その中でも私の研究は、マンガ出版史や書誌データベースに関するものです。たとえば、外国人などから、素朴な疑問として「日本にマンガはいくつあるのですか?」と聞かれたらどう答えるのが正しいでしょうか。これまで出版されたマンガを数えるとしたら、どうすればよいでしょうか。その場合の「マンガ」の範囲はどこからどこまでを指すでしょうか。そして冊数は「マンガ」の数として伝えるのにふさわしい答えなのでしょうか。
これらの答えは容易ではなく、さまざまな「問い」が隠されていることに気づきます。これらを実証的に解き明かしていくために、マンガのアーカイブを構築することを大きな研究の柱としています。

編集者として興味をもって接していたら、マンガが研究対象に

マンガ研究には学生時代から興味がありましたが、「マンガが好きだから研究した」というよりは「仕事上、マンガに人一倍興味をもって接していた」から研究したという経緯があります。現在は熊本大学の准教授という立場ですが、実はもともと出版社やIT企業で編集者として働いていたのです。日本マンガ学会や研究会に出入りするうちに、文化庁のマンガ調査事業に10年ほど関わることになり、それらの経験をもとに論文を書いたり、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(MC:ライムスター宇多丸)に出たり、自身でトークイベントを企画したり、博物館の学芸員として勤めたりしていました。
雑誌編集者をしていた経験から、「雑誌」というメディアが持つ特性についても研究しています。スマートフォンが普及した今では、10代のみなさんには「雑誌」は馴染みのない存在かもしれません。でもGoogleを始めとしたIT企業は、実は「雑誌」を作るのがとても下手なのです。なぜそうなるのか、ということも授業で教えています。

自分の走った後が、そのまま道になる

マンガ研究の面白さは、とにかく未開拓の部分が多いということです。日本のマンガは『週刊少年ジャンプ』連載や有名アプリ配信のものだけでなく、ありとあらゆる読者対象に向けて大量に生産されています。現在だけでなく、この「厚み」が戦後だけでも70年以上あります。この膨大な対象に対してまったく研究者が足りないので、自分の走った後がそのまま道になります。その責任とともに、やりがいがある分野だと思っています。

池川先生からのメッセージ

自分で目標を立てて、自分の責任で前に進むという経験は、その結果がどうであれ必ず自分の役に立ちます。正直、人生なにが起こるかわかりませんが、頑張った過去の自分は、将来ずっとあなたの一番の味方になってくれます。受験は孤独な戦いかと思いきや、意外とそうでもないのです。受験のあと、晴れ晴れと過去の自分という戦友と(20歳になったら)お酒を酌み交わしましょう。

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