北里大学 獣医学部 獣医学科 吉川 泰永 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

ゾウの研究がヒトのがん予防につながる?

北里大学 獣医学部 獣医学科 准教授
吉川 泰永 先生


イヌ、ゾウ、ヒト……動物種によって異なるがんの発症率

細胞では、DNAが様々な要因によって損傷を受ける可能性が日々あり、それを修復することができなければ、その細胞はがん化してしまうリスクがとても高くなります。私は、この細胞のがん化と深い関係のある「DNA損傷修復」に注目して、培養細胞レベルで研究を行っています。現在の実験対象は、イヌ、モルモット、ゾウ、マウス、ヒトです。
動物は種によって、がんの発生率が異なります。例えば、避妊していない雌イヌの約50%は乳腺腫瘍を発症しますし、他の動物種では発症率が低い雄の乳腺腫瘍がモルモットでは高いことが知られています。逆に、ゾウは腫瘍の発症率が低いことが報告されており、ゾウには「DNA損傷修復」が関わる発がん防御機構の存在が予想されています。

獣医療やヒトの医療に応用できる研究の可能性

私は、ヒトやマウスにおけるDNA損傷修復機構と、上述のような特徴を持つ対象動物のDNA損傷修復機構とを比較することで、動物種によってどのような違いがあり、それがどのような影響を及ぼしているのか、そして、どのようにがんと関係するのか解明することを目標に研究しています。この研究に興味をもった最初のきっかけは、学生の頃に受けた獣医外科学の授業でした。雌イヌで乳腺腫瘍の発症率が高いことを教わり、なぜこのようなことが起こるのだろうと不思議に思ったのです。その後、モルモットやゾウのような他の動物種でも、それぞれの動物種に特徴的な発がんに関わる事柄が報告されていることを知り、そのメカニズムも知りたいと思いました。このような研究は、その動物種における特徴がわかるだけでなく、特にゾウの研究は、どのように細胞のがん化を防いでいるのかを解明することで、獣医療やヒトの医療にも応用できる可能性があると考えています。

新たな切り口から唯一無二の情報を得る

自分の好奇心から着想を得て仮説を立てて、実験を行い、新しい知見を得るという研究のサイクルは、とてもやりがいがあると共に楽しいです。研究者の人口は、やはり医学研究の対象であるヒトや、モデル動物の代表格であるマウスの研究者がとても多いです。しかしながら、他の研究者があまり注目していない動物について調べ、ヒトやマウスなどの動物種と比較することで得られる情報は、違う切り口から得られる情報であり、唯一無二であると信じています。獣医学部はどんな動物を対象にしても良く、様々な動物にアプローチしやすいのはとてもありがたいことです。

吉川先生からのメッセージ

臨床医としての獣医師のイメージを持っている受験生が多いと思います。しかしながら、医学部のように獣医学部でも、動物を対象にして多くの先生が基礎的な研究から臨床的な研究までを行っています。大学に入ったら獣医学に関わる様々な授業を受けることでしょう。それを知識として受け取るだけでなく、自分の内側から湧き出る疑問や好奇心を大切にしてほしいです。きっとそれが将来の獣医学、獣医療の発展に貢献するに違いないのですから。

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