鹿児島大学大学院 理工学研究科 福元 伸也 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

深刻な労働力不足の農畜産業界に
工学の技術で革新を起こす

鹿児島大学大学院 理工学研究科 准教授
福元 伸也 先生


スマート農業により期待される生産性の向上

私の研究は、「機械学習」、「画像認識」、「画像解析」です。最近は、これらの研究を応用してスマート農業に関連する研究に取り組んでいます。スマート農業に興味を持ったきっかけは、私がいま住んでいる鹿児島が、農畜産業が盛んな県であり、私の行っている工学分野の研究やICTの技術を地元の農畜産業に役立てたいと思ったからです。農業従事者の高齢化や人口減少による労働力不足は深刻な問題になっています。ICT技術やAI、ロボット技術などの新しい革新的技術を導入することによって、労働力不足を補い生産性を向上させることが期待されています。

カメラを取り付けるだけで農作物の収穫量を予測

現在取り組んでいるスマート農業に関連する研究の一つは、農作物の草高および葉面積の推定です。この研究では、「RGB-Dカメラ」を使用して画像を撮影しながら、同時に距離を測定します。距離を測ることのできるカメラと言っても、葉っぱのように柔らかく変形しやすい物体の計測は難しく、草高推定において作物の最高点を特定することも容易ではありません。また、葉面積推定では、複数の「RGB-Dカメラ」を使用して作物の3次元モデルを作成し、その3次元モデルから葉面積を割り出す方法を考案しました。作物の葉面積が分かると、日々の成長度合いを把握することができ、それにより、農作物の収量予測が可能になります。従来、葉面積の計測は専用の計測機器を用いる必要があり、人手がかかるため、日々の計測は非常に負担となっていました。これに対して、カメラを取り付けるだけで自動的に計測できるようになれば、多くの農家が恩恵を受けられるようになります。

牛の体重計測にAIを活用

別の応用では、カメラ画像から肉用牛の体重推定を行っています。畜産農家では、牛が一定の大きさ以上になると出荷します。その際の目安の一つに体重が含まれますが、牛の体重計測は、嫌がる牛を体重計まで移動させ、乗せる必要があるため、非常に重労働です。しかし、牛舎の天井に取り付けられたカメラ画像から自動で体重推定できるようになれば、作業者の負担を大幅に軽減することができます。人間が画像を見て、何が写っていて、どの部分が牛なのかを判断するのは簡単ですが、それをコンピュータに高精度でやらせるのは非常に難しいことでした。しかし、ディープラーニングという革新的技術が2010年代に大きな飛躍を遂げ、AIを活用することで画像から特徴量を抽出し、牛の領域を検出できます。

持続可能な社会の構築に貢献する

スマート農業は、ドローンやロボットなどの機械工学、センサーやIoTデバイスなどの電子工学、機械学習や拡張現実などの情報工学など、さまざまな分野との融合が考えられ、大きな可能性を秘めています。新しい技術の導入は、労働力不足の解消、生産性と品質の向上、地域経済の活性化など、幅広い社会的成果をもたらすことが期待されます。このように、私は地域社会の課題解決に寄与し、研究を通じて、農畜産業の効率化や持続可能な社会の構築に貢献していきたいと考えています。

福元先生からのメッセージ

大学での学びは、学問に対する情熱を持ち続けることが大切です。高校までの勉強とは異なり、大学ではより専門的な知識を深く学びます。特に理系の分野では、実験や実習を通じて、学んだ理論を実践に結びつける機会が増えます。興味を持って学ぶことが、学業の成功へとたどり着くカギとなります。また、大学での学生生活は、自分自身の未来を切り拓くための大切な時期です。勉強や研究、インターンシップなど、さまざまな領域に皆さんが目標を持って前向きに取り組むことで、自分自身の視野を広げることができるでしょう。理系で学ぶことは決して楽ではありませんが、その分やりがいと達成感があります。皆さんの未来に期待しています。

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