一橋大学 経済学部 岡室 博之 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「イノベーション」と「創業」という
最も重要かつ面白い人間の行動を研究する

一橋大学 経済学部 教授
岡室 博之 先生


イノベーションと創業の研究で
“挑戦を応援する経済学”

私は、イノベーションとアントレプレナーシップの研究、そしてその政策支援の実証研究をしています。イノベーション(innovation)とは新しい有用な技術や製品、サービスを生み出すこと。アントレプレナーシップ(entrepreneurship)とは、創業や企業家活動とも訳されますが、新しい企業や事業を創り出すことを指します。これらは相互に関連していて、経済・社会の発展のために重要です。イノベーションについては、私は特に若い企業や小さい企業の活動、そして大学と企業の研究者による産学官連携に関心があります。
イノベーションも創業も、市場に任せていては(政府が何もしなければ)十分に行われない可能性がありますが、政府も全知全能ではなく、さまざまな制約を抱えています。そのような制約の下で、政府はイノベーションや創業をどのように支援すべきか、あるいは何をすべきでないか。私はそれを、ミクロ経済学の考え方をベースに、さまざまなデータを用いて分析し、考察しています。イノベーションもアントレプレナーシップも、人々のやる気と挑戦がなければできないので、私の研究はいわば「挑戦を応援する経済学」です。私の10年以上にわたるこれまでのイノベーション研究は、「研究開発支援の経済学 エビデンスに基づく政策立案に向けて」(西村淳一との共著、有斐閣、2022年)にまとめられています。

社会の新たな課題から必要とされた
研究テーマ

日本の新規開業は1980年代末頃から長期的に低迷を続け、中小企業基本法が1999年末に大きく改定されて創業支援が中小企業政策の新たな重点課題になりました。しかし当時、日本には新規開業やアントレプレナーシップの専門的な研究者はほとんどいなかったのです。そのような中で、アントレプレナーシップ研究は正に新しく挑戦的なテーマで、魅力的でした。
私は元々、中小企業や企業間の取引・共同事業などを研究していましたが、2000年頃に中小企業庁の委託研究プロジェクト「新規開業研究会」に参加したことを契機に、2008年度から研究開発型の新規開業企業に関する大規模なプロジェクトを研究代表者としてスタートさせることになり、本格的な研究が始まりました。
イノベーション研究については、ドイツの大学に留学していた頃に現地の研究プロジェクトに参加して始めたのですが、博士号取得後に基礎から勉強をやり直し、様々な研究を経て、2008年から上記の研究開発型の新規開業企業の研究を始めました。
そのプロジェクトに参加してもらった上記の西村淳一さんから提案されたのが、2001年度に始まった経済産業省の「産業クラスター計画」の実証研究です。これが現在まで続く私の研究開発・イノベーションの政策研究の発端です。

研究による新しい知見が、
より良い社会を作る材料になる

新しい技術を生み出す、新しい事業を始めるというのは、人間の行動の中でも最も重要で面白いことだと思います。個別のいろいろな発明や新製品開発、企業の創設の事例が知られていますが、成功事例だけに注目するのではなく、多くの失敗や中止を含めて全体としての傾向と因果関係を明らかにするのが私の研究です。どのような人や企業がイノベーションに向けて努力し、イノベーションを実現しやすいのか、またどのような人や企業が新たな事業を起こし、事業に成功しやすいのか。政府の支援は、どのような場合にどのくらい有効か、また誰に対してどのように行うのがよいのか。これらについて自分でさまざまなデータを集め、統計的な分析手法を駆使して仮説を検証し、新しい知見を見出すのは、苦労の多い大変な作業ですが、とても面白く、やりがいのあることでもあります。
また、これまでは政策担当者の勘と経験に基づいてさまざまな政策が立案・実施されてきましたが、このような研究の知見は、将来に向けてより良い政策を考えるための確かな材料になるので、そこにも研究のやりがいを感じています。

岡室先生からのメッセージ

大学は専門的な知識とスキルを身につけるだけでなく、自ら課題を見つけ、その解決を考えることによって、主体的な学び方を身につけるところです。一度学んだことでもいずれは古くなるし、忘れてしまうでしょう。しかし、学び方を身に付ければ、自分でどんどん学び続けることができ、人生がより楽しく豊かになるはずです。皆さんが大学という宝の山に入って、自分の宝物(面白いこと)を見つけ、それを通じて学び方を身に付けて、豊かな人生を送ることを期待します。

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