広島大学 人間社会科学研究科 難波 修史 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

心と行動の科学が
自分や自分の大切な人を
理解するきっかけを生む

広島大学 人間社会科学研究科 准教授
難波 修史 先生


感情と表情を対象に
人の情報処理を研究

心理学とは“心と行動の科学”だと言われています。私はその中でも認知心理学と呼ばれる領域を専門としており、これは人の情報処理に関心を持った心理学です。これまで、広く感情と表情を対象とした人の情報処理について研究を行ってきました。例えば、人は口が大きく開いた笑顔を嘘くさいと感じることや、表情に含まれる動きの順序、という要素から「本当に幸福を感じている」という検出が可能であることなどを明らかにしています。最近だと、人と似たロボットによる感情のコミュニケーションに関する研究も行っています。

ロボットが作り出す表情は
人の表情に代えられるのか

一つ、ロボットの表情に関する研究を紹介します。我々の研究チームは、人のように表情を作れるロボットを開発し、そのロボットの表情が人の表情と同じように機能するのかを実験により検討しました。その結果、ロボットが作り出した怒り・嫌悪・幸福・悲しみ・驚きといった基礎的な感情と対応する表情が、観察者に「(怒り表情に対して)怒りを表出している」と正しく認識されることが明らかとなりました。また、人の表情と同様に、表情を作り出す速度が感情の認識に関して影響を及ぼすこと(すなわち、驚きの表情は早い方が自然、悲しみの表情は遅い方が自然と感じる、など)もまた明らかとなりました。このことから、ロボットの表情も、人の表情と同じく、ある程度の感情状態を適切に伝達することが判明しました。この知見に基づいて、今後は感情コミュニケーションを調べる社会心理学実験もロボットを用いて行うことが可能になると言えます。また、将来的には、介護の現場などで感情豊かな表現を表情で行うロボットの活用が期待できるかもしれません。

関心のあることを探求する楽しさが
研究を続ける原動力になる

私がこの研究分野に興味をもったのは、自分は全く怒っていないのに、会話をしていた友人に「なんか怒っている?」と聞かれたことがきっかけです。そのとき、「人は何に基づいて内的状態を推定しているのだろう」というところに関心を持ちました。そのときの自分なりの答えが「まぁ表情だろうな」でした。そこで自分なりに感情と表情について調べてみると、そもそもとても基本的なところからわかってないことが判明したのです。例えば、様々な研究で用いられる特定の感情と結びついている表情形態は、「実際にある特定の感情状態が生成された際に生じる表情運動の平均的なふるまい」を抽出したものではなく、おおざっぱに言えば「西洋の研究者が『怒りの表情って、まぁ大体こんな感じでしょ!』という理由で決めた表情」だったのです。そのため、最初に行った研究 (いわゆる卒業論文) は、「人が○○の感情を抱いたときに出てくる表情ってどんなもの?」というとても簡単な問いを検討する内容でした。今見ると拙い内容ですが、当時の研究成果はCurrent Psychology という英文誌に掲載されています。そこから、「自分の関心があることについて探求すること」の楽しみを知り、今も研究を続けています。

研究対象は私たちの「心」
その知見が日常生活に活きる

これは私の研究領域 (感情と表情) に限らないのですが、心理学はその学問における対象が私たちの「心」です。なので、心理学を学べば学ぶほど自分や周りの人が持つ様々な心の仕組みみたいなものを俯瞰的に捉えることができ、その知見を日常生活に活かすことができる学問だと思っています。心理学、という学問を通して、自分や自分の大切な人を理解するきっかけが生まれる、というのは刺激的で魅力的なことだと私は思います。

難波先生からのメッセージ

高校生までは色々な科目についての勉強を幅広く行ってきたと思いますが、大学からはもっとあなたにとって興味深い専門的な勉強がたくさんできるはずです。大学受験は大変な思いをすることが多いものかもしれませんが、頑張った分だけその見返りはきっと大きなものになるはずです。適度に息抜きもしながら頑張ってくださいね。

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