同志社大学 法学部 政治学科 大矢根 聡 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

国家間の衝突はなぜ起こる?
国際政治研究のきっかけは「音楽」

同志社大学 法学部 政治学科 教授
大矢根 聡 先生


パズルを組み立てるように
国際関係を解明していく

国際関係には、各国の利害が衝突し、互いの誤解が拡大して、対立や紛争に陥りやすいという特性があります。ですが同時に、国際協調によって各国が得られる相互利益は大きく、各国の協力によってこそ対処できる課題も多数あります。
私が研究しているのは、このような現象を対象とする国際関係論で、その中の国際政治経済論という分野です。より具体的には、グローバル経済をめぐる対立・協調メカニズムを研究しています。経済はグローバル化していて、貿易や投資、技術、開発援助などの交流に支えられています。そのグローバル経済において、なぜ、どのように人々の利害対立や不公平感が深刻化し、国家間の外交問題にまで発展するのか。どのような条件が揃えばそれを解決し、協調関係を安定化できるのか。この点に関連して、国際ルールも研究対象にしています。どのような国際制度のもとで、どのような国際規範を用いれば、違反行為を抑えられるのか。
それを具体的な事例、特に米中経済紛争、アジア・太平洋地域の経済制度、また国際的な制度のサミット(主要国首脳会議)、WTO(世界貿易機関)などを対象にして分析しています。現象の実像を正確に捉え、隠れた対立・協調要因を明確化するため、多数の公文書や資料を読み解き、また各国で政策決定を担っている官僚や政治家などにインタビュー調査を行います。得られた情報を利用し、新しい理論を使って客観的に、従来見逃されていた側面を捉えます。難しいジグソーパズルを組み立てるような作業ですが、こうして国際的現象の本当の姿とそれを動かす仕組みを解明してゆくわけです。

研究のきっかけは「音楽」と
「壮大な交響楽のような本」との出会い

研究を始めたのには2つのきっかけがありました。ひとつは音楽です。クラシック音楽に親しんでおり、聴き慣れていた作曲家や演奏家が冷戦や独裁政権のもとで活動を制限され、政治に翻弄される様子を見聞きする機会も多く、心を揺さぶられました。他方で、閉鎖的な国でも前衛的な音楽に寛大な場合があり、また音楽家が政治的対立を乗り越える姿も見聞きし、強い印象を受けました。
もうひとつは、20歳頃に触れた2冊の本です。音楽を通じて国際関係に関心を抱き、雑誌や本も読んでいましたが、様々な国や地域であまりに多様な出来事が起こっていて、それらを全体としてどう考えれば良いのか途方にくれました。個々の出来事を越えたパターンや法則性などはないのか。包括的に世界のあり方を理解できないのか。そうした疑問に1つの答えを示してくれたのが、『Power and Interdependence(パワーと相互依存)』(ロバート・O・コヘイン、ジョゼフ・S・ナイ)という洋書で、辞書を片手に夢中で読みました。その本は経済交流を出発点にして、魅力的な概念を論理的に組み立てて、国際関係の構図を描いていました。あたかも壮大な交響楽のようでした。
その後、この本とは対照的なハンス・J・モーゲンソーの『Politics among Nations(国際政治)』に出会いました。国際関係論の古典的名著です。パワー・ポリティクス(権力政治)、国益、勢力均衡といった概念を提起しつつ、国際関係の骨格を論じていました。この2冊は全く異なる国際関係の像を示していて、同じ対象について驚くほど違った、しかし説得力ある説明が可能なのだと教えてくれました。優れた概念や仮説を使えば、自分なりに国際的現象を解釈したり、理解度を引き上げたりできることに気づかせてくれました。

時には政策担当者に直接インタビューをして
政策決定を追体験する

国際関係の新しい現象や、すでに知られていても誤解されている現象について、その実像を解明するのは面白く、やりがいがあります。日米半導体摩擦やFTA(自由貿易協定)、APEC(アジア太平洋経済協力)、サミットなどの実像を解明して、評価もしていただけたのは幸いでした。その作業を通じて、海外の斬新な理論を応用したり、オリジナリティの高い説を打ち出せたりした場合はさらなる達成感があります。また、現象を理解するために国内外で入手の難しい資料を集め、政策担当者にインタビューを実施する作業も、実際の外交交渉や政策決定を自分で追体験するようで、特別な感銘があります。

大矢根先生からのメッセージ

私にとって音楽と国際関係論は、意外に近い存在でした。みなさんにとっても、日常的に親しんでいるものの中に、本気で取り組みたくなる対象や、将来に活かせる何かを見出せるかもしれません。また、何かが好きだという感覚、他の人とは違うことに気づく感覚も、一種の才能なのかもしれません。やる気を絞り出し、目標を定めるのも1つの方法でしょうが、自分の内側から自ずと滲み出てくるものを大切にしていると案外、今後の素晴らしい学びや自分にふさわしい進路に結びつくのかもしれません。

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