Interview
プラスチックからパンをつくる
夢の技術を実現するために
千葉大学工学部 総合工学科 共生応用化学コース 准教授
青木 大輔 先生
プラスチックを分解し
肥料として使うアイデアを創生
「廃棄プラスチックから肥料をつくる」をコンセプトとしたプラスチックのリサイクルに関する研究を進めています。研究で使うのは、ポリカーボネートという高校の教科書にも出てくるプラスチックで、身近な例で言うとウォーターサーバーのボトルから車のヘッドライトレンズ、航空機の内装などに使用されています。このポリカーボネートをアンモニア水で処理すると、モノマーと尿素に分解できます。このうち、モノマーは新たなポリカーボネートの合成に再利用でき(ケミカルリサイクル)、尿素は植物の肥料として使えます。
プラスチックを分解する研究自体は世界中で盛んに行われています。しかし、分解生成物を肥料として使うアイデアは独自のものです。この分解反応には高価な触媒が必要なく、簡便な操作で実施できることから工業化も期待できます。
大学時代の研究が12年の時を経て
注目されるようになった
今の研究は、修士課程の研究テーマがベースとなっています。糖由来の原料(グルコース)からポリカーボネートをつくってアンモニアで分解していました。そのときからプラスチックを原料に肥料ができるって面白いなとは思っていましたが、アイデアを学術的な論文という形にまとめる力はなく、今と同じようなデータを学会で発表していたものの、当時は全く注目されませんでした(笑)。研究を再開したのは、それから12年後のことです。博士課程に進学し、助教などを経て、やっと研究者として一人前となり自由なテーマが設定できるようになったとき、頭の片隅にあった修士課程の研究を面白いかたちでまとめてみよう、と。時代も変わり、SDGsやプラスチックのリサイクルが注目されるようになり、最近では食料不足や地球温暖化の解決にもつながる技術として、多方面から注目をいただくようになりました。
面白い結果や予想外の成果、
過去と未来がつながる面白さ
研究のやりがいは、苦労した先に面白い結果や予想外の成果が得られることです。将来的には、さまざまなプラスチックを肥料に変換できるようにしたいと考えています。プラスチック由来の肥料で食用野菜はもちろん、小麦をつくり、パンを焼く。つまり、「プラスチックからパンをつくる」という、少し古いですが未来少年コナンに登場する夢の技術を実現するため、今後も走り続けます。あとは、Apple社の創業者であるスティーブ・ジョブズ氏のメッセージにもありますが、「点と点がつながる」ところも、研究の面白さです。私の経験に直すと、過去の研究(点が研究)と今の研究を線で結べることです。例え回り道をしたとしても、それが新しい点になって後からしっかりつながってくる。私がつけた点を見た若い学生がつける未来の点も期待しちゃいますね。
私の10代を思い返すと苦しいことから逃げてばかりいたなと思います。その後悔もあってか、今は困難な課題にこそ、しっかり向き合っている気がします。過去は変えられませんが、未来は変えることができます。なりたい自分を想像してぜひ困難な課題に挑戦してみてください。挑戦することで得られる自分だけの失敗や成功がいつかきっと自分を支えてくれると思います。
千葉大学工学部 総合工学科
https://www.f-eng.chiba-u.jp/education/acb.html
青木 大輔先生 研究室
http://chem.tf.chiba-u.jp/gacb08/staff.html