Interview
未曾有の自然災害を「見える化」
災害大国ニッポンで
防災・減災につながる研究を行う
九州大学 工学部 第4群・土木工学科 准教授
浅井 光輝 先生
自然災害を予測するだけでなく
その被害まで予測し、防災・減災に役立てる
地球温暖化の影響からか、世界各地で台風・豪雨被害の激甚化(げきじんか)が進んでいます。自然災害と向き合っていくには、海や川を流れる「水」、足元を支える「土」、山の自然を豊かにする「木」、そして普段の生活を豊かにするために人工的に造られた「社会インフラ」が調和した安全・安心な社会を実現しなければいけません。天気予報技術の発達により、台風発生後の進路、週間天気予報など、ある程度の精度で将来を未然に予測することができるようになりました。しかし、河川氾濫、土砂崩壊などの自然災害の被害を未然に予測する技術はまだ発展途上です。災害大国ニッポンにおいて、未曾有の自然災害を未然に見える化(予見)する技術を作り、防災・減災に役立てる研究を私は行っています。
きっかけは2011年の東日本大震災
同じことを繰り返さないためには何ができるか
私はもともと、土木に関する数値計算の研究を行っており、特に新しい材料開発に活かす研究を行っていました。しかし、2011年の東日本大震災の津波の映像を見た瞬間、自分たちが専門とするドボク(「土」や「木」、そして「水」を適切に管理し、安全安心な社会を創造する学問)が自然災害に対して無力であったことを痛感すると同時に、今後同じことを繰り返さないために自分ができることはないのかと突き動かされ、現在の研究テーマに専念することにしました。その当時までは材料の計算しかしてこなかったのですが、「土」・「木」・「水」として「社会インフラ」のすべてが関連する数値解析の技術を作るようになりました。現在では、洪水時に橋が流される被害、堤防の上を水が超えて堤防が氾濫する被害、または地震によって山の斜面が崩れる被害などを計算機上で再現できるようになってきました。そして、実験できない大きな規模の災害被害を仮想空間で再現し、それをVR/ARを使って事前に見える化(予見)しています。
困難な課題に取り組むことと
達成後の喜びが次の研究の活力に
私の研究だけではありませんが、誰もがやっていないことを達成する喜びが研究の醍醐味だと思っています。もちろん、「誰もができていない=困難な課題」であることは多いです。それを達成するためには、どのようなアプローチで、どんな共同研究者とチームを組んで取り組み、いつまでにはどの程度の課題を解決しておくべきかを筋道をたて、それに向かって日々努力します。私の研究のやりがいは、世界に通用する新しい技術が開発できたら、世界各国で行われる学会で発表し、世界中の研究者と協議をしながら、世界を旅することですね。普段経験できない景色を見ると、これまでの努力が報われた気持ちになり、また次に向かって頑張ろうといった活力がわいてきます。
英語は勉強しておくと自分の可能性を広げるキッカケになると思います。私は高校生の時に自分の将来には英語は要らないと勘違いし、あまり勉強をしていませんでした(語学が一番不得意でした)。留学した当時はとても苦労をしました。留学経験を経て、今はなんとかなっていますが、早めに準備しておくといいですよ。
九州大学 工学部 土木工学科(工学部IV群)
浅井 光輝先生 研究室
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_civil02.html
https://kyushu-u.wixsite.com/structural-analysis/asai