京都産業大学 現代社会学部 金光 淳 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

多次元的にデータを収集し
様々な社会現象を解析するデータサイエンス

京都産業大学 現代社会学部 現代社会学科 教授
金光 淳 先生


全てを点と線のつながりに置き換えて分析する

私は、社会ネットワークモデルという数理モデルを使って、様々な社会現象を解析すること=社会ネットワーク分析が専門です。社会学では「数理社会学」に分類されます。この考え方は、全てを<点と線のつながり>に置き換えてデータを収集し、グラフ理論という離散数学のモデルで解析する手法です。
例えばロックの世界を研究するとして、以前はインタビュー調査や質問紙調査で取るしかデータはありませんでしたが、社会ネットワーク分析では全く異なったアプローチを取ります。ファンAが、グループXの出演するイベントBに参加する場合、A-B, X-B, A-Xの辺から構成される「三角形」と考えます。それぞれの辺は、<ファンAとイベントBへの参加>、<グループXのイベントBへの出演>、<ファンAのグループBのファンクラブ所属>を表します。集合の要素(ここでいうA、B、X)の数だけ辺ができ、複雑なネットワークが構築されます。では、多くのロックグループが参加するフェスを考えると…?ネットワークは「図形」=グラフとして、数学的に解析できます。どのグループが中心的であるとか、どのフェスが中心的であるとか、どのグループやフェスが似たようなパターンをしているかとか、というようなことが測定できるのです。このように社会ネットワーク分析は、多次元的にデータを収集し、分析対象を取り巻く世界を可視化してモデル化するものです。今、ネットワーク分析はデータサイエンスの中でも重要な部分となっており、NatureやScienceに載る研究者もいます。
私は2002年に『社会ネットワーク分析の基礎』(勁草書房)という専門書を出したところ、社会学のみならず情報工学の研究者など様々な分野の人に興味を持っていただき、企業や研究機関から分析や所属の依頼を受けたり、研究プロジェクトにも参加を依頼されたりしました。最初は経営学部の所属でしたので、企業統治など主に経営学領域での研究があります(『ソーシャル・キャピタルと経営』ミネルヴァ書房,2018)。大学内での現代社会学部創設後に学部を移動し、同時に研究領域もやや変更しました。今は<経営学と社会学の二刀流>を表明し、両方の分野で研究しています。

人の「つながり」や「印象」に着目した研究

私は現在、現代アーチストの関係性に注目して、どのように現代アートが発展してきたのかをアーチスト間の「つながり」データを収集して研究しています。特に、Ono Yokoが参加していたFluxusという前衛アーチスト・ネットワークを研究対象としています。メールアートというメール(手紙)をやりとりするアートがあって、前衛的現代アートが世界的に普及していく際にコミュニケーション手段として重要な役割を果たしていたことが分かりました。今後はメールアートの本格的研究を発展させたいと思います。また並行して、以前からゼミ学生を動員して瀬戸内国際芸術祭のフィールドワークを行っており、有名なアートの島、豊島の豊島美術館(美術館自体が作品となっている建物)に対する鑑賞者の印象がどのように変化するか、という「実験美学」的な社会実験も行っています。このようなビジュアル・メソッドという社会研究方法も独自に考案しています。

専門分野にとどまらない研究や協働も醍醐味の一つ

私は早稲田大学の大学院時代に、日本の経済エリートのつながり(=経済権力構造)を明らかにしたくて、欧米の研究論文や本を調べてこの社会ネットワーク分析の手法に出会い、シカゴ大学大学院で本格的に学ぶため渡米しました。伝統的な統計学ではなかなか捉えられない「関係性」や「つながり」を分析するこの方法は、欧米では社会科学のみならず、自然科学でも広く利用されています。この手法はほぼ万能なので、どんな分野の研究にも柔軟に応用でき、自分の興味のある他分野の研究に「手を出す」ことが多くなり、研究の視野が格段に広がるとともに、他分野の研究者と協働ができる点が面白いところです。一つの分野で行われている研究が、実は他とも繋がっていることがよく分かります。それは逆に言えば、専門分野の壁が研究対象自体をいかに狭めているかでもあります。

金光先生からのメッセージ

1)どんな研究も教授が全て手取り足取り教えてくれるわけではないので、最終的には自ら学ぶことが重要になります。自分一人でも学び続ける覚悟を持ちましょう。 2)文系や理系という分類は研究にとって無意味です。現在この「壁」は極めて邪魔になっています。学部の選択は柔軟に考えましょう。 3)データサイエンスやAIは、いかにうまく活用するかが今後の明暗を分けますので、どの学部に行っても積極的に勉強しましょう。 4)現代アートは、知的な文化資本の形成です。現在の我々の生の様態を見せ、考えさせてくれるものだからです。現代アートの教養なしにはこれからのサイエンスもありません。どの学部に行っても積極的に鑑賞し、知識を増やしましょう。

総じてSTEAM(Science, Technology ,Engineering, Art, Mathematics)と言われますが、各領域を全部勉強するのは無理なので、バランスよく必要な部分だけ選んで組み合わせ、自分なりのSTEAMを「資本」として形成していくことが重要です。まずは自分が好きな分野から「資本形成」を始めましょう。

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