Interview
“データサイエンス”は
広い世界に飛び出すための鍵
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス研究科 教授
ソーシャル・データサイエンス学部 教授
小町 守 先生
人間が操る言語を
自然言語処理の側面から捉える
計算言語学・自然言語処理と呼ばれる学際的な領域で、「言語を理解する・産み出すとはどういうことか」の探究や、そのような処理をするシステムを実装する研究を行っています。探究する側面から見ると計算言語学と呼ばれ、開発する側面から見ると自然言語処理と呼ばれます。この中でも特に自然言語処理の言語教育・言語学習への応用(文法誤り訂正やライティング能力の自動推定)や、深層学習による機械翻訳(データが少ない言語の翻訳や画像情報を用いた翻訳)といったアプリケーション寄りの応用研究と、構文解析(文法構造の解析)や意味解析(意味の曖昧性を解決したり、省略されている単語が何かを推定したり)のような基盤技術寄りの基礎研究の両方に取り組んでいます。特に最近は人間がどのような文章を「良い文章」だと判断するのか、という言語評価の研究に継続して取り組んでいます。
文系の研究対象だと思っていた「言語」
自分がやりたい研究は理系だった
元々学部生のときは言語や哲学に興味があり、文学部に進学しようと思って大学に入りましたが、学部1年生のときにコンピュータに初めて本格的に触れて、コンピュータの楽しさにのめり込みました。その後、理学部情報科学科に進学しようと思って問い合わせたのですが、数学や実験の単位が足りないということで叶わず、学際的な学問のできる教養学部に進学しました。大学に入学する前の知識では、自分のやりたいことが文系ではなく理工系にあるとは思っていなかったのです。
結局、コンピュータを使った研究をしたいという気持ちが大きくなり、大学院に進学する段階で理転して、自然言語処理の研究に取り組むことができるようになりました。自然言語処理という分野を知ったのは大学院に進学する直前、国立国語研究所という研究所で、プログラミングのアルバイトをしたことがきっかけです。
最先端の研究に携わる醍醐味
データサイエンスが世の中を変えていく
ウェブ検索や日本語入力、ChatGPTのようにみんなが日常的に使うアプリケーションの裏側で、どのような処理が行われているかを理解し、改善していくことにとてもやりがいを感じます。Appleで働いていたときは、多くの人が使うシステムの開発に携わっているのだということを実感しました。
言語のように一見文系の人が好きそうな対象であっても、数学的に定式化したりプログラミングで処理したりでき、データサイエンスが分かるとものすごく広い世界が開けている、というのが非常におもしろいです。逆に言うと、文系で数学とプログラミングは分からないという人は、言語研究のおもしろさの9割を見逃しているように思います。理論として綺麗で、それが開発としても役立つ知見で、世の中を変えていくような仕事ができる、というのは最先端の研究に携わる醍醐味です。
ソーシャル・データサイエンス学部のような学際的な学部の利点は、自分の好きなことに好きなだけ手を出して勉強できるところです。昔の「読み・書き・そろばん」に当たる現代の基礎学力は「英語・数学・プログラミング」で、ソーシャル・データサイエンス学部はこれらの足腰を鍛えるのに良い環境です。一橋大学は海外への留学も盛んで、逆に世界中から留学生が一橋大学に学びに来ています。一緒に世界をリードする研究や開発をしていきましょう。
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス学部
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス学部 小町守教授
https://www.sds.hit-u.ac.jp/faculty/%e5%b0%8f%e7%94%ba%e3%80%80%e5%ae%88/