哲学
どんな学問?
思考の泉にはまる!!
「哲学」は英語で「Philosophy」と言い、直訳すると「知恵を愛すること」という意味です。もともとは人間や世界に関わる「なぜ?」を考えることをすべて哲学と呼び、その「なぜ?」に答えるために様々な学問が発達してきました。例を挙げてみましょう。
しかし、世の中にはなかなか答えが出せない「なぜ?」があります。「なぜ悪いことをしてはいけないの?」「なぜ人間は生きているの?」――。こうしたテーマを深く考え、答えを導き出すのが哲学という学問なのです。
大学では哲学の歴史や概論の学習を通して、「これまでにどのような理論があって、それぞれどのような長所や欠点があるのか」という反省をしたうえで、各々が選んだテーマについて考察を深めていくようになります。
哲学の研究分野は、ヨーロッパの思想を中心とする「西洋哲学」と、中国やインドの思想を中心とする「東洋哲学」に大きく分けられます。また、考える手がかりや筋道によって、次のように研究領域を分けることもできます。
この他にも、ギリシア思想や中国思想のように地域文明ごとに分類されることもあります。また、宗教学の場合、仏教やキリスト教など、宗派や教義で分類されることもあります。
Q&Aこんな疑問に答えます
Q.
哲学も心理学も人の心を学ぶようですが、違いは何ですか?
A.
哲学における心の問題は「意志」「感覚」「信念」「認識」などとして研究されたり、「心」の存在そのものが研究対象となったりします。さらに、言語や意識、人工知能、倫理にまで研究対象は及び、様々な角度から研究を行っていきます。それに対し心理学では、様々な心理状態、心と脳や神経との関係、環境との関係など、個別の事象を取り上げて研究します。したがって哲学と心理学はどちらも「心についての研究」ですが、哲学は「心」の本質的な部分、心理学はより現象的な部分を対象とすると言えるでしょう。
Q.
哲学科以外で、哲学分野を学べる学科はありますか?
A.
次のような学科で哲学を学ぶことができます。学べる分野は、各大学のパンフレットやホームページを参照してください。
Q.
どのような人が哲学に向いていますか?
A.
「人間が存在する目的は何なのだろう?」 「死とはどういうものなのか?」「宇宙とは何だろう?」などは、誰でも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。哲学はこのような根源的・抽象的なテーマを扱う、広い意味での「人間探求学」です。「自分が存在する意味」を知らなくても、私たちは生きていけます。ただ、それを考えずにいられないのもまた、私たちの生の基本に関わることなのです。「考えるのが好き」というのが、一番の指標です。
ひとことコラム
ゼノンのパラドックス 飛ぶ矢は飛ばない!?
常識的に考えると、「飛ぶ矢」は飛んでいますよね?しかし古代ギリシアの哲学者ゼノンは、この当たり前のことに正面から挑戦しました。飛んでいる矢のある瞬間をとってみると、一点で止まっていますね。次の瞬間も、その次の瞬間も、どの瞬間をとっても矢は止まっています。このように、どの瞬間にも止まっているわけですから、静止状態をいくつ集めても矢は進みません。つまり、飛ぶ矢は飛ばないことになる、とゼノンは考えたのです。不思議ですね。みなさんはこのパラドックスをどう考えますか?
こんな研究もあるよ
国境を越えて生きるために——「グローバル・エシックス」
「グローバル・エシックス」という言葉を知っていますか?「国境を越えた倫理学」とも訳されます。この考え方は、9.11テロ以降盛んになり、宥和(ゆうわ)【お互いに許し合うこと】や共生の実現を哲学的な視点から考えていこうというものです。例えば、戦争をしていた国同士が、戦争終了後にどうやって関係を修復していくかなどがテーマとなります。それまで「敵」であった相手を許し、戦争におけるお互いの非を認め合い、未来志向型の関係を築いていくためには、多くの倫理的な障壁を超えなければなりません。また、世界中で宗教や思想の違いに起因する対立が起こっています。そういった衝突のなかで、どのようにしたらお互いを認め合い、尊重し合うことができるのかなど、特に心における「ボーダー(国境)」を越える方法を取り上げています。
多くの国々・地域・文化が複雑に関係し合っている現代社会において、「グローバル・エシックス」の重要性はますます高まっていくでしょう。
卒業後の主な進路
出版や製造業、IT系など一般企業がほとんど!
論理的思考力、読解力、語学力を活かした進路
製造業やサービス業、出版業界など一般企業に就職する人が大半ですが、語学や読解力を活かして編集や翻訳などの仕事に就く人もいます。また、哲学を学ぶことで培った論理的な思考力を活かして、IT企業に進む人もいます。その他、公務員や研究者になる人もいます。
宗教学を専攻する場合、司祭や僧侶など宗教家を育成するためのカリキュラムを組んでいる大学、コースもあります。そういった学生の多くは、専門的知識を活かして宗教関係の教育施設や宗教団体に就職しています。
超人
ニーチェの考えた理想的人間の典型像。獅子の精神と子どもの創造性を備え、強力な生命力をもった存在とされています。研究者の間でも解釈が分かれていますが、ニーチェはその具体例を「ツァラトゥストラ」という人物として描き出しています。
輪廻(りんね)、解脱(げだつ)
前世・現世・来世というように、人間は死と再生を繰り返すというインド古来の考え方。現世で悪いことをする、つまり悪い業(ごう、カルマ)を積むと、来世で報いを受けると考えられています。このような果てしない輪廻は苦しみと捉え、それを断ち切ることを「解脱(げだつ)」と呼びます。この輪廻、解脱の考えは仏教にも見られます。