法律学
どんな学問?
社会のトラブルを論理的に解決!
もしも、買ったばかりの服に汚れがついていたら?もしも、駐輪禁止区域に止めておいた自転車が盗まれてしまったら?――社会では毎日とても多くのトラブルが起こっています。トラブルを解決するには、共通のルールが必要ですよね。そのルールが「法律」であり、法律を学ぶのが「法律学」という学問です。法律学の研究は、単に法律の条文や判例を暗記し、学説を学ぶことではありません。法律や判例の学習を通して、リーガルマインド(参照)を身につけることが求められます。
ところで、みなさんは『六法全書』って聞いたことはありませんか?この六法とは「憲法」「民法」「刑法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」「商法」の6つです。この他にも「行政法」「労働法」「消費者法」など数多くの法律が存在します。そのため、大学によってはコースまたは専攻を設け、「法律」と「政治」や、「私法」と「公法」などと分けている大学もあります。いずれにしても、まずは基本的な法律を広く学んだうえで、自分の専門分野に絞って研究することになります。
大学では、基本的に以下のような流れで学びます。
Q&Aこんな疑問に答えます
Q.
どのような人が法律学に向いていますか?
A.
『六法全書』に書いてある法律を全部覚えなければいけない、過去の裁判例をすべて把握しなければならない、というわけではありません。もちろん、こうした知識を備えているに越したことはありませんが、知識は調べればわかりますし、あとからいくらでも身につけられます。それよりも法律学は、「悪」を憎む心と「正義」を行いたいという正義感をもった人にふさわしい学問と言えます。
Q.
司法試験に合格したあと、法曹職に就くためには?
A.
法曹職に就くためには、さらに2つのステップがあります。
善意、悪意
一般的には良い・悪いという意志を表すのに使いますが、法律ではある事情を知っていることを「悪意」、知らないことを「善意」と言います。例えば、弟が兄のCDを勝手に中古ショップに売ってしまった場合、そのCDが弟のものではないとお店の人が知っていれば悪意者となります。ちなみに、一般的な意味の「悪意」を、法律上は「害意」と言います。
リーガルマインド
社会で様々な問題が起きたときに、最適な解決策を導き出すために求められる、法律家として身につけておくべき柔軟な思考力。単に、法律・判例・学説などを知っているということだけではなく、法律学を学ぶ学生には「問題発見能力」「法的分析能力」「論理的記述能力」「法的バランス感覚」を養うことが求められます。
こんな研究もあるよ
被害者の視点から考える——「被害者学」
「刑法」は犯罪に関する法律で、「罪を犯した人をどのように処遇するか」ということが定められています。裁判では、その犯罪が行われた状況を考慮しながら、刑法に基づいて刑罰が科されます。
一方で近年、被害を受けた人に焦点を当てた「被害者学」という学問が注目されています。これにより、被害者の心理や実情、被害者支援、被害者と司法制度の関係など、今まで忘れられがちであった被害者に関する研究が盛んになったのです。被害者学の成果によって、被害者やその家族が裁判に参加できるようになったり、補償金制度や精神的ケアが充実したりと、実社会にも影響を与えています。複雑な犯罪が多発する今日、被害者学のニーズはますます高まるでしょう。
卒業後の主な進路
ロースクールだけではない幅広い進路
「法学部卒」というと弁護士や検察官などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、法律学の知識を活かせる職業は多岐にわたります。国際化や情報化が進むなかで、どのような企業でも法律知識は必要とされているからです。
多くの人は、サービス・流通・金融・製造業といった一般企業に就職します。また、官公庁への就職も人気があります。法律の知識はもちろんですが、行政関連分野での研究は公務員としての仕事にも活かせますし、職業としての安定性も魅力なのでしょう。
ひとことコラム
市民の意識を裁判へ!「裁判員制度」
裁判員制度とは、日本で2009年から実施されている裁 判のしくみです。私たち国民の中から選ばれた裁判員 が、裁判に参加します。対象は殺人や放火、誘拐などの 犯罪のうち特に重大とされる事件で、①被告人が有罪か 無罪か、②有罪ならどんな刑が適当か、裁判員6名と裁 判官3名で判断していきます。様々な知識や経験をもつ 一般市民が参加することで、その視点や感覚が反映され て裁判がわかりやすくなる、集中審理によってスピー ディになると言われています。この制度により、みなさ んにも裁判員に選ばれる日が来るかもしれません。