工学電気・電子工学
どんな学問?
ハイテク社会の最先端!
私たちの生活に欠かすことのできない「電気」。その電気エネルギーの生産・輸送方法や、電気回路システムの効率的な利用方法などを考えるのが「電気・電子工学」です。それぞれの特徴を見てみましょう。
1.電気工学
主として電気の生産・輸送・蓄積・有効利用法について考えていきます。身近なものでは、テレビやインターネットなどの電気通信、自動車のカーナビやエアバッグなどの電気装置などが電気工学の技術です。
2.電子工学
電気回路やそのシステム、あるいはIC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)に含まれる半導体の物性・特性の研究、装置の開発などが主な目的となります。身近なものでは「Suica」や「Edy」のような「非接触ICカード技術」などが挙げられます。ちなみに、このシステムは日本企業が開発したものです。
電気・電子工学は日々進化し続けています。例えば、携帯電話は1980年代に誕生しました。初期の携帯電話はレンガのような重さでしたが、現在みなさんが使っているものは以前よりもコンパクトになり、機能もはるかに充実し、スマートフォンと呼ばれています。この携帯電話の進化の背景には、電気・電子工学の成果や進歩があるのです。また、最近では他の工学分野と融合した製品の研究・開発が進んでいます。機械工学と融合した電気自動車や、機械工学・医学と融合したMRIなどの医療機器がその一例です。環境にやさしいクリーンな発電システムや、省エネルギーに優れた電子機器の開発も積極的に行われています。世界でも最高レベルと言われる日本の電気・電子工学研究。みなさんも最先端の技術を学び、日本の電気・電子工学をさらに発展させていってください。
こんな研究もあるよ
超伝導を利用して、不可能を可能に!
特定の物質は極端に低い温度下で「超伝導(超電導)」という現象を起こします。超伝導状態のときは電気抵抗がゼロになり、一度電流を流すとずっと流れ続けます。電気を送る際のロスがゼロになるということは、電気・電子機器にとっては最高の条件です。
今後、超伝導の研究には、発電・送電の効率上昇や通信技術の高速・大容量化が期待されています。また、超伝導磁石を搭載したリニアモーターカーは、東京―大阪間を約1時間で移動することが可能で、2027年に東京―名古屋間を開業する予定です。
今までも超伝導の研究者に対しては、たびたびノーベル物理学賞が授与されてきました。みなさんも超伝導現象の研究や応用に、ぜひ挑戦してみてください。
卒業後の主な進路
電気工学系は電力・エネルギー関連
電子工学系は電機・機械メーカー
多くの学生が、さらに高度な研究を行うため大学院に進学します。大学院を卒業後は、それぞれの専攻に合わせて就職先が決まります。
電気工学系では、電力会社やエネルギー関連会社、あるいは電機メーカーの発電部門に就職することが多くなります。電子工学系では、電機メーカーの研究職として就職する場合が多いようです。近年では、ほぼすべての機械が電子制御で機能しているため、自動車メーカーや電気機器メーカーなどの機械メーカーへ就職し、電子制御について研究・開発をする人も増えてきています。
ひとことコラム
光の開発から生まれた次世代DVD
CDやDVDの読み取りに使われている「半導体レーザー」、そのなかでもブルーレイディスクに使われているものを「青色半導体レーザー(ブルーレイ)」と呼びます。この技術、日本で生まれたことをご存知でしょうか?
光の3原色は赤・青・緑の3色です。この3色の組み合わせを変えると、すべての色を発色できるようになります。そのためそれぞれの色の光を出す装置の開発が進められていましたが、青色は作り出すことが難しく、実用化が遅れていました。20世紀中の開発は不可能と言われた技術ですが、1996年に日本の中村修二氏が開発に成功したのです。この技術のおかげで次世代DVDはより多くの情報を記録できるようになり、中村氏は2014年にノーベル賞を受賞しました。
このような例からもわかるように、工学の研究は私たちにとってとても身近であり、工学の進歩が私たちの暮らしを便利で豊かなものにしてくれるのです。
Q&Aこんな疑問に答えます
Q.
電気・電子工学に向いているのはどんな人ですか?
A.
コンピュータなどの電子機器や電気製品に興味のある人には、まさにお勧めです。また、数学に出てくる微分・積分やベクトル、物理学で勉強する「電磁気学」や「力学」の知識を使うこともあるため、数学や物理学が好きな人、得意な人にも向いているでしょう。この分野で学んだ知識は将来、電気を利用するあらゆる製品の開発・修理・点検に活用できるため、エンジニアとしての技術を身につけたい人にもうってつけの学問です。
Q.
卒業研究について教えてください。
A.
大学で電気・電子工学を学ぶ際、卒業研究は必要不可欠です。一般的には4年生で、いずれかの研究室に所属します。その後、担当教授のもとで研究課題を設定し、実験や考察を行います。今まで勉強してきた知識や技術をすべて使って研究を進めるため、実践力や解決力をつけることができます。研究の結果は論文にまとめて発表を行うため、文章をまとめる能力や人前で発表する能力を養うこともできるでしょう。また、研究室に入るためには「一定の単位を取得している必要がある」などの条件が設定されていることもあるため、入学時から真剣に勉強する必要があります。
EMI(エミ/Electro Magnetic Interference)
飛行機や病院では携帯電話や電子機器の電源をオフにするように言われることがありますね。これは飛行機の電子精密機器や病院の医療機器が、携帯電話などの電子機器から発生する電磁波に反応してしまい、故障や誤作動を起こす可能性があるからです。この電磁干渉現象をEMIと言います。
回生ブレーキ
走行時の力やエンジンの力を使って、電気エネルギーを生み出すシステム。電気自動車やハイブリッドカーに利用されています。自ら電気エネルギーを生み出し蓄えることで燃費を向上させられるため、「環境にはいいが航続距離が短い」というエコカーの問題点を解決し、その普及に貢献すると期待されるシステムです。
ヒートポンプ
空気中の熱を利用して、熱エネルギーを作り出すシステムです。みなさんの身近では、エアコンや冷蔵庫、洗濯乾燥機、給湯器などに利用されています。この技術は火を必要としないので、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しません。そのため最近は、ヒートポンプ式製品を普及させようという動きが盛んです。特に日本はこのヒートポンプ技術の先駆者。その技術は世界各国から注目を浴びています。
分子エレクトロニクス
トランジスタの電流増幅機能など、特定の機能や役割を分子一つひとつにもたせようとする研究分野。これを応用させることで、非常に処理能力の高い機器・装置を作り出せると考えられています。例えば、現在のトランジスタの代わりに分子トランジスタ(トランジスタの機能をもたせた分子)を使うと高機能化かつ小型化され、現在のコンピュータの1000倍以上の性能をもたせることが可能となります。このコンピュータの研究・開発は大学だけでなく、企業も力を入れて取り組んでいます。