理学地学
どんな学問?
地球46億年の追求
地球の誕生は、46億年前に遡(さかのぼ)ります。想像を絶するほどの時間を生きる地球の過去や現在の姿を認識することで、未来の予測を立てていくのが「地学」の目的です。
実際にこの分野の知識は、地震や火山、土砂災害といった自然災害の予測・防止や地球環境問題の防止・対策などに役立てられています。フロンガスの放出によるオゾン層破壊、二酸化炭素の排出量増加による地球温暖化など、地球環境のグローバルな変化が私たちの生活に重大な問題を起こしつつある21世紀。地学が果たす役割はますます重要なものとなるでしょう。
地学は地球すべてを対象とする学問であるため、大気・海洋・地震・火山など研究分野は多岐にわたります。ここでは代表的な分野について見てみましょう。
1.地質学
地質、つまり岩石・地層・化石などから構成される地殻を研究対象とします。「岩石学」「鉱物学」「隕石学」、恐竜などの研究を行う「古生物学」もこの分野に含まれます。ところで、『銀河鉄道の夜』で有名な宮澤賢治は地質学者だったことを知っていますか?彼の作品のなかには、地質学に関する様々な事柄が書かれているのです。地質学を学んだうえでもう一度作品を読み返してみると、違った感動があるかもしれませんね。
2.気象学
大気中の様々な現象について研究します。大気汚染・オゾン層破壊・ヒートアイランド現象(参照)などの環境問題に取り組むこともできますし、虹・オーロラ・蜃気楼といった神秘的な自然現象を研究対象にすることもできます。テレビのニュースや新聞でもおなじみの天気予報は、気象学を応用した分野で、大学で専攻することもできます。
3.地球物理学
物理学を利用して地球上の様々な現象の解明を目指す学問です。この分野の1つで地球の形や大きさを調べる「測地学」は、紀元前3世紀にエジプトで発祥してから発展を重ね、最近では月や火星の大きさを測る研究にも応用されています。「地震学」「火山学」「地球電磁気学」なども地球物理学に含まれます。
その他に近頃では、地球全体を1つのシステムとして研究する「地球惑星科学」「地球システム学」といった分野も発展しつつあります。
大学の授業は講義だけでなく、顕微鏡観察やDNA抽出などの実験・実習も行われます。また、化石発掘や資源探索などのフィールドワークも重視されます。
Q&Aこんな疑問に答えます
Q.
高校の地学と大学の地学の違いはどこにあるのですか?
A.
高校の地学では地学の範囲を幅広く学ぶため、地球全体のしくみを捉えることができます。それに対して大学の地学は、興味のあるテーマを絞って深く掘り下げていきます。
ところで「天体」は、高校では「地学」に出てくる分野ですよね。大学の理学部でも「天体」を学べるところはありますが、主に「物理学」の分野で学んでいくことが多いので注意が必要です。また「高校で地学を勉強していないけれど大丈夫?」と思う人もいるかもしれませんが、問題ありません。大学では、高校で地学を履修していない場合も考えて授業が進められます。
Q.
地学に向いているのはどんな人?
A.
地球内部の構造や気象に関することなど、「地球」について学んでいきますから、自然現象全般に興味のある人にはとてもお勧めです。資源に関することや気象、エネルギーに関することを研究すれば、環境の分野でも活かすことができます。地質調査などフィールドワークも多いことから、外に出ることが好きな人や、自分の足で歩いて調べることが好きな人にも向いているでしょう。また、地質学や水文学は文系・理系の両方の分野に関連するため、文理にとらわれず学際的・総合的に学んでいきたい人にもお勧めです。
ひとことコラム
地球は生きている!
エベレストの頂上に、海の生物の化石があることを知っていますか?現在は世界最高峰を誇るエベレストですが、太古の時代は海だったのです。3億5千年前から海底が少しずつ隆起し、1万メートル近く持ち上げられたのです。46億年もの歴史がある地球には、私たちの想像を超える過去があります。まさに「地球は生きている」んですね。
こんな研究もあるよ
未来の地球の姿は!?
ドイツの気象学者・ウェゲナーは、「世界は1つの大陸でできており、それが分離して現在の形になった」と唱えました(大陸移動説)。この説は後に『プレートテクトニクス』によって説明されることになります。地球の大陸は今でも少しずつ移動していて、4〜5億年の間隔で分裂と合体を繰り返しているとされています。また、プレートを動かすマントルの様子から未来の地球の姿を予測することも可能です。その予測によると、今から1億5000万年後には日本列島は朝鮮半島と合体し、2億5000万年後にはすべての大陸が再び1つになると推測されています。これほどまでに壮大なものを研究対象とするのは、地学分野より他にはないと言えるでしょう。
卒業後の主な進路
土木、建築、資源関連への就職が多い!
情報処理力はIT関連職にも有効
特徴としては、土木関連・建設関連・石油などの資源関連への就職が多いことが挙げられます。また、研究で培った情報処理の力を活かしてIT関連に進む人も少なくありません。技術者や研究者として働くには大学院卒の知識を求められることが多いため、大学によって差はありますが、大半の学生が大学院に進学しています。
水文学(すいもんがく)
自然界における水の循環に関する学問を指します。水の動きに関して研究するだけではなく、水資源の開発や利用など人間と水との関係や、水と環境との関係も研究対象となるため、水を総合的・学際的に研究する学問と言えます。
ヒートアイランド現象
都市部の気温がその周辺と比較して異常な高温にある状態。原因としては、緑地や水面の減少、建築物の高層化・高密度化、自動車やエアコンなどからの排熱、が挙げられています。
ミッシングリンク
進化の過程においては存在するはずなのに、いまだ発見されていない化石のこと。学術的には「未発見の中間型化石」とも言います。古生物の化石は進化の過程がハッキリとわかるものは例外的で、多くの場合は一部しか発見されていません。人類の進化過程でも、類人猿と直立歩行をする猿人との間を結ぶ化石が少なく、ミッシングリンクとなっています。