教養学
どんな学問?
現代社会で発展した学問
「現代社会の問題は地球規模で複合化しています。例えば、「二酸化炭素を削減する」という問題。「二酸化炭素の増加」という現象に目を向ければ自然科学の研究テーマですし、「二酸化炭素を削減する」という取り組みに重点をおけば環境学の研究テーマとなります。さらにそれを解決する過程では、石油に依存した工業システムや自然環境よりも経済が優先されてきた社会情勢などにも目を向けなければなりません。
このように複雑化した現代社会の問題を解決していくためには、各分野の専門家がバラバラに研究をするのではなく、協力し合うことが必要です。そのため、教養学で扱う研究領域は、「文学」「言語学」「哲学」「芸術学」「法学」「政治学」「経済学」「国際関係学」「物理学」「化学」「生物学」「数学」など、広範囲に及びます。つまり、学問の枠に捉われず、複数の分野を幅広く学んでいくのが教養学なのです。そして、いろいろなモノの見方や価値観の違いに触れること、多様な要素が複雑に絡み合った問題を解決する思考力を養うこと、異なった分野の学問をつなぎ合わせて新しい研究分野を開拓することなどを目的としています。
大学のカリキュラムにも特徴があり、入学時には専門分野を定めません。様々な分野の学問に触れるなかで、2年生または3年生に上がる前に専門的に研究する分野を1つ、もしくは2つ選んでいくこととなります。入学後に進路を決められるという理由で教養学部に進学する生徒も少なくありませんが、多種多様な学問に触れられる分、しっかりとした目的意識をもつことが必要です。
ひとことコラム
教養学の歴史
教養学は教養課程や一般教養とも言われ、基礎学力や基礎知能を得るという目的もあります。日本では戦後、各大学に教養部や教養課程などと呼ばれるものがあり、現在の教養学部のように多くの学問に触れる機会を与えていました。しかし、教養は高校生までに身につけるべきという声や、早くから専門的な研究に取り組みたい・取り組ませたいという需要が高くなったことなどにより、教養部や教養課程を専門的な学部の低学年次カリキュラムに組み込む形になっていったのです。しかし、最近はまた、状況が変化しているようです。高校生の中には、なかなか学部を選択できない生徒がいます。また、社会が複雑になり、ある専門分野のみを学んでいては全体像がつかみにくくなってきています。このようななかで、自分の人生設計について考える学部や、広く物事を見て総合的に課題を解決する方法を学ぶ学部が再度、注目されているのです。
Q&Aこんな疑問に答えます
Q.
複数の学問を組み合わせて研究できる学部・学科は、教養学部・学科だけですか?
A.
大学によって異なりますが、「総合政策学」「共創学」「環境情報学」「人間科学」 といった学部・学科でも可能なことがあります。総合政策学は問題を解決する ことに重点を置いており、視野を広げて多くの学問に触れることでより有効な 解決案を模索するのが特徴です。共創学では、文理を超えたさまざまな立場の 人と関わりながら、問題を解決し、新しい価値を創り上げることを目指します。 環境情報学は都市環境や自然環境、人間環境などの環境問題の発見・解決をす るために、学問を横断的に学びます。人間科学は様々な側面をもつ人間を探求 するために、多くの学問の視点や研究方法を用います(人間科学参照)。手法は似ているようですが、目的とするものやアプローチ方法は少しずつ異なりますので、自分に合った研究方法や研究分野はどれなのか、しっかり比較検討するべきでしょう。
Q.
入学してから文系・理系の選択をすることはできますか?
A.
大学によってしくみが異なります。
① 入試の段階で受験科目が文系と理系に分かれていて、基本的には入学後もその枠を越えられないところ、② 文系・理系関係なく同じ問題で受験し、入学してから文系・理系を選択できるところ、③ 受験科目が文系中心で理系志望の生徒には向かないところ、の大きく3パターンがあります。
Q.
専門的に学びたい分野が見つかったら、自由に研究できますか?
A.
大学によっては、定員などの制限を設けている場合がありますが、比較的自由に専門的な研究に向かうことができます。教養学部では、自分の関心のある分野やこれから研究をしていこうとする分野を見極めることができますが、専門的な分野に向かう前までに、広い分野にわたる基礎的な知識、課題や問題を探求し続ける行動力をしっかりと身につけておく必要があります。
こんな研究もあるよ
オリジナルの研究分野を開拓!
他学部では両立しにくい科目や分野も、教養学部なら複数組み合わせて深めることが可能です。
例えば、将来スポーツに関連した職業に就くために、メジャーとして「スポーツ科学」を、マイナーとして「経営学」を選ぶことができます。ダブルメジャーにするのであれば、教員を目指すために「歴史学」と「教育学」、国際政治学に興味があるという場合は「国際関係学」と「政治学」という具合です。
いずれの組み合わせ方にしても、他学部のように進むべき分野がいくつか用意されていて、そのなかから選択するのではなく、自分の好きな組み合わせで独自の研究分野を開拓できるところが教養学部の魅力と言えるでしょう。
卒業後の主な進路
広い視野や柔軟な考え方は、企業からも期待大!
教養学を学んだ学生は、製造業・小売業・金融業・不動産業・サービス業・マスコミ・公務員など、様々な業界・業種に就職しています。最初から進みたい仕事を意識して大学での専門分野を選ぶ人もいますし、結果的に自分が選んだ専門分野と関連のある業種に就く人もいます。少数ですが、大学院に進学してさらに研究を深めていく学生もいます。いずれにせよ、多種多様な専門分野を選べることから、就職先も多種多様なのです。
メジャーとマイナー
メジャーは「主専攻」とも呼ばれ、卒業まで深く専門的に取り組む学問のことです。一方マイナーは「副専攻」とも呼ばれるように、メジャーよりは低い比重で継続的に取り組む学問のことを指します。通常はメジャーを1つ専攻して研究を深めたり、メジャーとマイナーを1つずつ選んで履修したりすることになります。また、学ぶ量や時間が増える大変さはありますが、2つのメジャーを両立させていくダブルメジャー(二重専攻)もあります。
リベラルアーツ/アーツ・サイエンス
「教養学」という言葉の英語名だと考えてもらえればよく、内容は教養学部と同じです。カテゴリーにこだわらず様々な分野の学問に触れることによって、多様な価値観を理解したり、他者との比較を通じて自分とは何かを発見したり、自分の道を自分で切り開いていく判断力を養う教育のことです。この教育は、欧米の大学では一般的に行われています。日本でも最近設立された教養学部(学科)では、外国語表記をするところが増えてきています。