南山大学 理工学部 機械システム工学科 稲垣 伸吉 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

ヒントは昆虫の足にあり!?
世の役に立つ「多脚ロボット」を作り出せ!

南山大学 理工学部 機械システム工学科 教授
稲垣 伸吉 先生


農作業やインフラ整備をロボットで支援

私は「多脚ロボット」が自律的に歩行するための制御技術について、基礎から実用に向けた応用までの研究を行っています。「多脚ロボット」とは、4脚以上を持つ歩行ロボットのことを言いますが、特に私は6脚ロボットを中心に、それ以上を持つ多脚ロボット(昆虫型、クモ型、ムカデ型)を研究対象としています。歩行ロボットは脚数が多いほど、多くの脚で同時に接地できるため、安定性が増します。そのため、6脚以上を持つ多脚ロボットは重量物の搬送や複雑な地形の高い踏破能力が期待できます。また、脚を歩行以外に使う余裕があるため、物体を掴むといった操作にも使え、脚で物を抱えて運びながら残りの脚で歩くこともできます。現在は、農作地で農具や作物の搬送や作業を支援する6脚ロボットや、インフラ設備の自動点検・整備ができる6脚ロボットを、企業と共に研究開発しています。

人型ではなくても、アイデアが凝らされたロボットを

私は子供の頃からアニメや映画でロボットに興味がありました。ただ、超絶に強い主役機よりも、主役機を困らせるアイデアが凝らされた敵役のロボットの方が好きでした。そのときから、ロボットは必要な機能を実現する上で、別に人型ではなくても良いと漠然と考えていました。大学では、研究室を探す中で6脚ロボットを研究しているところを見つけ、先生や先輩の話を聞いて、研究としての奥深さを知りました。地球上には100万種近い昆虫がいるとされています。我々の周りには、様々な地形に適応し、生存のための様々な機能を持つ昆虫がいるわけです。もし、それらを支える多脚歩行を人工的に実現できれば、きっと世の中で役に立つロボットを実現できるだろうと考えたのが、研究を始めたきっかけでした。

昆虫の多脚歩行をお手本に、信念で困難を乗り越える

研究を始めてすぐに、その難しさがわかりました。まず、昆虫の歩き方がすぐにイメージできないことです。我々人間は、2脚で歩き、四つん這いになれば4脚での歩き方までは身を以て理解できます。しかし、2脚増やした6脚、更に8脚、ムカデ型…など、まったく想像がつきません。ロボットが歩行するには、脚を上げ下げする順番とタイミング、段差などの不整地を歩くのにどこに脚を着けば良いか、バランスを取りながらどのように地面を掻くか、など多くのことを考慮しなくてはいけません。ロボットはこのような脚の動かし方をリアルタイムに(数十ミリ秒の内に)計算する必要があります。しかも、脚数が多くなるほど脚の動かし方の組合せが一気に(指数関数的に)増えます。想像できない複雑な脚の動かし方、難しい計算といった困難さはありますが、挑戦することはとてもやりがいがあります。これらの困難さを乗り越えることができれば、役に立つ多脚ロボットの実現にきっと繋がるという信念があるからです。また、6脚であっても全ての脚のあらゆる動かし方を考え、リアルタイムに計算するには、現在の高性能なコンピュータを使っても困難です。しかし、身の回りにいる昆虫がそのようなコンピュータを、あの小さな頭の中に備えているとは到底思えません。何かうまい仕組みがあるはずです。虫は話してはくれませんが、身近にお手本があるのは研究の励みになります。

「接地点追従法」で複雑な不整地の歩行が可能に

私の研究では、これらの困難さを解決するために、生物の脚の動きを参考にした、分散歩行制御法を開発しました。脚同士が連携して動くことで、ロボット全体で歩行を実現する方法です。6脚だけでなく、それ以上の脚数のロボット(クモ型、ムカデ型)でも適用できます。更に、4脚でも同じ制御法で歩行できることがわかっています。6脚で歩きながら、途中で2脚を作業肢に切り替え、モノを持ちながら4脚で歩くといった制御もできます。この分散歩行制御法は「接地点追従法」といいます。後脚は前脚が接地している点に接地する、という原理に基づいた歩行制御です。昆虫やムカデだけでなくネコが歩く際にも観察される歩行方法です。最前脚だけ地面のどこに接地するかを決めてやれば良く、残りの脚は前脚の接地点に付いていくだけなので、安価なコンピュータでも実現できます。実際、ロボットの実機実験により、複雑な不整地でのリアルタイムな歩行制御が実現できることを明らかにしています。

稲垣先生からのメッセージ

大学では、自分の漠然とした夢を実現するための学問や技術を学ぶことができます。自分の夢を実現する上で、どのような学問や技術が必要かをしっかり調べて大学や学部を選んで欲しいと思います。研究室は十人十色で、様々な課題を様々なアプローチで研究します。まったく同じ研究をしている研究室は、ほぼありません。自分の夢に近い研究室を目指して選ぶのも一つの道だと思います。大学4年生になると卒業論文を書くための研究を始めます。大学院に進学すれば修士論文、さらには博士論文のために研究をします。これらの研究の答えは教科書に載っていません。自分で導き出さねばなりません。ちょっと怖いですが、わくわくします。教科書の先にある未知の領域を探索するのが研究です。そのためには知識が必要であり、受験生の皆さんが今やっている勉強がまさにその知識です。将来のわくわくする研究に向けて勉強してもらいたいと思います。

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