同志社大学 文学部 水ノ江 和同先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

新たな価値を発掘する考古学と
既存の価値を見つめ直す文化財保護学

同志社大学 文学部 教授
水ノ江 和同 先生


常に高揚感がある発掘調査
時には定説に修正を迫る大発見も

私の専門は「考古学」と「文化財保護学」です。考古学では特に「日本列島の縄文文化と周辺地域との関係性解明」に力を入れています。縄文文化は狩猟、漁撈、採集を生業の基本とする文化です。そして、形や文様の造形に富んだ縄文土器、呪術具としての土偶や石棒、耳飾りなど石製の装身具は、同時代における世界の新石器文化には例がないほど個性的で量が多く「北海道・北東北の縄文遺跡群」は世界文化遺産に登録されるほどです。そんな同文化が及ぶ範囲は、北は北海道の宗谷海峡や択捉海峡、伊豆諸島では八丈島、九州では対馬や沖縄の久米島までとなり、現在の日本国土とほぼ同じ。縄文人は丸木舟を駆使して見える島伝いに危険を冒しても渡っていきました。しかし、宗谷岬からサハリンまでも、対馬から韓国釜山までも、島影が見える距離ですが文化は全く異なり、何故か渡って行かなかったのです。この理由を解明すべく研究しています。
考古学の面白さは何と言っても発掘調査です。夏は暑くて冬は寒い。そして肉体労働でありながら丁寧さが求められる大変な作業ではありますが、遺物が出土する瞬間は貴重で、常にワクワク・ドキドキ感があります。時には、新聞を賑わす発見や、考古学の定説に修正を迫るような大発見もあり、そうなるともういよいよ止められません。

文化財の「保存」と「活用」は車の両輪
歴史が浅く未成熟な学問への挑戦

私は弥生文化発祥の地と言われる福岡出身です。生活圏には装飾古墳がたくさんあり、小学生の頃から考古学に触れる機会があったことが興味をもつきっかけとなりました。中高生の時は県内の博物館や遺跡を巡り、同志社大学へ進学したのも考古学が勉強したくて、当時、考古学者として有名だった森浩一先生に憧れていたからです。卒業後は埋蔵文化財発掘調査専門職員として福岡県に就職し、その後は国立博物館や文化庁などを経て現職に至ります。行政30年間に携わった業務の多くは、様々な立場で様々な種類の文化財を保護するものだったため「文化財保護学」も研究の柱の1つとしました。文化財保護とは、文化財を「保存」し「活用」を図ることです。観光立国日本は、文化財を観光における一つの重要アイテムと位置づけていますが、これは文化財の「活用」に当たります。しかし一方で「活用」ばかり行っていると棄損や劣化が進み「保存」ができなくなります。もちろん「保存」ばかりやっていると「活用」まで及びませんから車の両輪である「保存」と「活用」をバランスよく進めて行く必要があります。しかし、この文化財保護学は学問としての歴史が浅く未成熟なため、理念の構築が不十分であり実践も限られています。そこで私は、これらをどうやって進めるかという研究も行っています。

日常生活に埋もれた文化財に
新たな光を与える面白さ

文化財保護学の面白さは、身近にあるあまり目立たない文化財でも、それが持つ歴史性を丹念に探り時代背景を細かく追究することで、実はとても重要で、その地域にとって掛け替えのない存在であると再認識・再評価できることです。つまり、日常生活に埋もれた文化財に新たな光を与える面白さです。同志社大学の今出川キャンパスには、100年以上を越える赤煉瓦建造物が10棟(国の重要文化財5棟、登録有形文化財5棟)あります。あまり知られていませんが、1919年に大学令が制定されて以来、当時の校舎配置がほぼそのまま残るのは全国に約800ある大学の中でも同志社大学だけです。そういう少し違った文化財的視点を踏まえながら、赤煉瓦の建造物群と緑の木々と青い空のコントラストを改めて見直すと、それは一層美しく誇らしく見えてきます。

水ノ江先生からのメッセージ

私の仕事は考古学がベースでしたが、様々な職種・職場を渡り歩き、考古学とは関係のないこともたくさんやりました。しかし、直面した仕事に真摯に向き合い一生懸命取り組むと、自分の世界観も広がりますし、必ずそれなりの結果が付いてきます。と同時に、少しいい加減な対応をすると、それもちゃんと結果に現れます。受験勉強も同じでしょう。受験期と遊びたい年齢は重なりますが、自分の立場と状況を考え、どれだけバランスよく前向きに付き合うか次第と考えます。良き結果がでるよう頑張ってください!

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