神戸市外国語大学外国語学部ロシア科 黒田 龍之助 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

多言語を知る人の視点や発想は
翻訳機やAIには真似できない

神戸市外国語大学 外国語学部ロシア科 客員教授
神田外語大学 言語教育研究所 特任教授
黒田 龍之助 先生


同系言語とその関係性を学ぶ

わたしの専門はロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語、チェコ語などのスラブ語派の諸言語の研究です。現在でも非常に似通っているスラブ諸語ですが、古い時代はもっと近かったと推測されています。キリスト教の布教のために9世紀に作られた文章語は、スラブの地ならどこでも理解できるほどでした。実際に残っている文献は10世紀から11世紀のものですが、この言語を古代スラブ語といいます。大学の講義では、教養科目の言語学と、外国語科目のロシア語やウクライナ語、ベラルーシ語、チェコ語などを教えています。以前はテレビやラジオでロシア語講座も担当していました。その他にもポーランド語やセルビア語で読書をすることもあります。色々な言語を教えながら、その言語間の関係を考えています。

40年経っても楽しさは変わらない

諸言語の講義では、常にロシア語と比べながら学習を進めます。これを対照言語学といいます。ロシア語とウクライナ語、ロシア語とベラルーシ語は本当に近く、ロシア語文をウクライナ語に訳したり、ベラルーシ語文をロシア語に訳したりしていると、あまりにも似ていて頭が混乱しそうになりますから、共通点と相違点を常に意識しながら学習することが大切です。
考えてみれば日本語には、非常に似ている別の言語、聴いただけで分かってしまうような言語というものがありません。スラブ諸語を学ぶと、言語が似ているってこういう感覚なのか、ということが分かります。これが魅力ですね。勉強を始めて40年以上になるのに、いまだに楽しくて仕方がありません。
ヨーロッパの似ている諸言語のグループには、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語のようなイタリック語派や、ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語のようなゲルマン語派の諸言語がありますね。これらに比べるとスラブ語派は日本でなじみが薄く、あまり知られていません。でも同じグループに属する言語の数は多く、その微妙な違いはとても興味深いものです。さらに、マイナーな外国語ができると現地で喜ばれます。チェコ語やセルビア語を話すと必ず歓迎され、これが嬉しくて勉強を続けようという気になるわけです。

興味のあるロシア語から同系言語へ

わたしはもともとロシア語に興味があり、高校生の頃から勉強していたのですが、これを上達させるためにあらゆることをしました。専門学校に通って発音を鍛えたり、例文を山ほど暗記したり、さらには通訳などもやりました。(この経験は、『ロシア語だけの青春』(ちくま文庫)という本に詳しく書いています。)一方で、ロシア語と近い関係にあるスラブ諸語を勉強することで、自分のロシア語に深みを持たせようとも考えたのです。最初に選んだのはセルビア語で、大学生のときにカルチャーセンターに通いました。ロシア語とセルビア語もとても似ていて、新出単語でもロシア語から意味を推測できてしまうことさえありました。スラブ諸語に興味をもったら、まずロシア語から勉強することをお勧めします。そこからさらに同系言語を学んでいけば、ロシア人より広い視野が持てるかもしれません。

黒田先生からのメッセージ

世の中は目まぐるしく変化しますが、言語の変化はもう少しゆるやかです。わたしはソビエト時代にロシア語を学びましたが、基本は当時から変わっていません。大学でしっかり学んでおけば卒業後もずっと使えるのです。1つの言語だけを極めるのではなく、同系の言語を色々と学ぶことは、日本人の多くが知らないユニークな視点を持つきっかけとなります。翻訳機やAIがどんなに発達しても、多くの言語を知っている人の発想は機械には真似できないものだと、わたしは信じています。

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