世界史の正しい勉強法

入試で必要とされる世界史の学力

世界史の正しい勉強法

入試世界史で必要とされる学力とは何でしょうか? 「社会は暗記科目だから、ひたすら覚えれば何とかなる!」、そう聞いた人も多いかもしれません。もちろん、ある程度の暗記が必要なことは確かです。しかし、丸暗記で対応できるほど、大学入試は甘いものではないのです。

皆さんは入試世界史で必要とされる用語がどのくらいあるか知っていますか? 例えば、入試世界史の定番である『山川世界史用語集』には、約6000もの用語が掲載されていると言われています! 6000ある用語を全部丸暗記するなんて、至難の業です。じゃあどうすればいいのか? 答えは世界史を「理解する」ことです。例えば、「この戦争はなぜ起こったのか?」、「この法律はなぜ制定されたのか?」など、出来事の“背景”や“理由”に着目し、しっかりと自分で説明できるようになれば、入試問題も怖いものなしです。

実際の入試問題を見てみても「理解する」ことがいかに大切かはわかります。では、次の問題について正誤判定できるでしょうか?

ローマ帝国のテオドシウス帝は、キリスト教の国教化を行ったが、異教信仰も認めた。

この問題は早稲田大学などでも問われたことのある正誤問題ですが〇か×か、判別できたでしょうか。

答えは×(誤文)です! どこが違うかというと、“異教信仰も認めた”という箇所です。なぜなら、テオドシウス帝はキリスト教を国教化した際、キリスト教以外の信仰を禁止しているからです。

皆さんはこの問題、自信をもって解けたでしょうか。実はこの問題で問われているのも「世界史を理解しているかどうか?」です。例えば、“テオドシウス帝”や“キリスト教国教化”はどの用語集にも必ず(しかも太字で)載っている用語です。しかし、この問題のキーになっている“異教信仰”は重要用語として掲載されているわけではありません。だから二つの用語を知っていたとしても、「異教信仰……?」と詰まってしまうわけです。

しかし、世界史を理解さえしていれば難なく解ける問題です。ここで大事なのは、「テオドシウス帝がキリスト教を国教化した背景」を理解できているかです。実は、キリスト教自体はこの前にいたコンスタンティヌス帝の時代に公認されています。すでに認められていたキリスト教を、さらに国家の宗教にしたのはもちろん理由があるわけです。

ヒントはテオドシウス帝のいた時代にあります。テオドシウス帝の時代は、ローマ帝国の混乱期でした。テオドシウス帝が即位する前に、他所からゲルマン人という異民族が流れ込んでいます。このゲルマン人の大移動によってローマの人々は混乱していました。混乱する人々の心を一つにまとめ、ローマ帝国を存続させるにはどうしたらいいでしょうか。そこでテオドシウス帝が出した答えが「ローマ人の宗教をキリスト教に統一し、皆が同じ宗教を信仰するようにすること」でした。こうした背景などがしっかり理解できていれば、丸暗記に頼らずとも問題は解けるわけです。

ちなみにこういった問題は、早稲田大学だけでなく、他の難関大学などでも出題されています。入試においては「世界史の理解」が大事だということがわかったのではないでしょうか。

「世界史を理解する」ことは、東大・京大をはじめとした難関国公立大でももちろん重要です。むしろ、国公立大の方がその重要性は増すと言えるでしょう。なぜなら、国公立大では“論述問題”が課されるからです。“論述問題”では世界史で起こった出来事について、自分の言葉で説明することが求められます。よりハイレベルな“理解力”が問われていると言えます。

例えば、東京大学では幅広い視点で世界史を理解しているかどうかが問われます。以下2問は、実際に東京大学で出た問題です。

15世紀頃から19世紀末までの時期における,東アジアの伝統的な国際関係のあり方と近代におけるその変容について,朝鮮とベトナムの事例を中心に,具体的に記述しなさい。 

(東京大学 2020年)

この問題では東アジアにおける、500年にもわたる期間の国際関係について論述することが求められています。近世から近代にかけて、東アジアでは中国、日本、琉球、西洋諸国による勢力争いが展開しました。朝鮮とベトナムの事例を取り上げながら、中国を中心とした朝貢関係がどのような経緯をたどって終焉していったのかが問われています。

他にも、同時代のヨコの繋がりを問うような問題も出ています。

近年,13~14世紀を「モンゴル時代」ととらえる見方が提唱されている。それは,「大航海時代」に先立つこの時代に,モンゴル帝国がユーラシア大陸の大半を統合したことによって,広域にわたる交通・商業ネットワークが形成され,人・モノ・カネ・情報がさかんに行きかうようになったことを重視した考え方である。そのような広域交流は,帝国の領域をこえて南シナ海・インド洋や地中海方面にも広がり,西アジア・北アフリカやヨーロッパまでをも結びつけた。

 以上のことを踏まえて,この時代に,東は日本列島から西はヨーロッパにいたる広域において見られた交流の諸相について,経済的および文化的(宗教を含む)側面に焦点を当てて20行(600字)以内で論じなさい。 

(東京大学 2015年)

この問題では、13~14世紀における諸地域の交流について問われています。「東は日本列島から西はヨーロッパ」とありますから、非常に広大な地域の繋がりが問われていますね。「13世紀の中国で起こった出来事が、同じ時代のヨーロッパにどのような影響を与えたのか」、こういったヨコの繋がりが問われることが多いのも、東大世界史の特徴です。

その他、一つのテーマに沿って、幅広い時代や地域について論述させる問題も出題されています。近年だと、2018年には「女性参政権などの女性の権利」を、2017年には「古代帝国」をテーマにした問題が出題されています。では、こういった問題を解けるようになるために、何を意識して学習すれば良いのか、最後に確認していきましょう。

世界史学習のコツ

時代や地域を常に意識する!

世界史は文字通り「世界」の歴史を扱います。そのため、今自分が学習している単元や用語が「どの時代」「どの地域」のものなのかを常に意識する必要があります。例えば、“ルイ14世”という用語であれば、「近世(17世紀)」の「フランス」の人物である、といった具合です。当然といえば当然ですが、意外とこれができていない人が多いのです。

効率よく学習する方法としては、授業でやった範囲をより細かくまとめる作業がお勧めです。イメージとしては、箱をいくつか作っていく感じです。例えば、“古代メソポタミア”について学んだとします。まずは、“メソポタミア”という大きな箱をノートに書き込んでみます。次に、メソポタミアでは、“シュメール人”や“アッカド人”といった民族が登場するので、これらの民族の箱をメソポタミアの箱の中に作ります。さらに、シュメール人は“ウル・ウルク”といった都市国家や、“ジッグラト”をつくるといった業績がありました。それがわかるように、シュメール人という箱の中に、“ウル・ウルク” “ジッグラト”という箱を作っていく…。こういった作業をしてみると、今学習している用語が、「どの時代」「どの地域」のものなのかがはっきりとわかるようになります。これは論述問題などで構想メモを作るときにも役立ちます。

地図に強くなる!

世界史では世界の歴史を扱うため、世界の国々がどこにあるのかおさえておく必要があります。図説や資料集に記載されている地図などを使って、基本的な地理事項をおさえておきましょう。特に東南アジアやアフリカなどは苦手な人が多い地域ですが、地理をおさえるだけでも問題がグッと解きやすくなります。また、地図やイラストを使うことは、世界史の理解力アップにも役立ちます。積極的に図説や資料集を開いて、世界史を“ヴィジュアル的”にも理解できるようにしましょう。

図説を使って“ヨコの繋がり”や“テーマ史”に強くなる!

難関大に合格するために、欠かせないのが“ヨコの繋がり”や“テーマ史”です。前述したように、例えば入試では「ローマでこういうことがあったときの中国について」といった“ヨコの繋がり”を問う問題や、「官吏登用法の変遷」といった“テーマ史”を扱う問題などが出題されます。こういった問題への対策としては、普段から意識しておくことはもちろんとして、図説を活用することがお勧めです。図説には、“〇〇世紀の世界”といった“ヨコの繋がり”をまとめたものや、“官吏登用法”“北方民族の歴史”などのテーマをまとめた表などが載っています。それらを参考にして自分の手で整理しておくと、こういった難しい問題にも対応が可能になっていきます!

問題演習(アウトプット)を行う!

「世界史は覚えることが多いから……」と用語の暗記など、インプット中心になってしまう人もいますが、それはNGです。受験生のゴールは何でしょうか? それは「入試問題を解いて、合格点が取れるようになる」ことですよね。世界史の入試問題では、一つの事柄について、様々な角度から問われます。実際の問題を解けるようになるためには、問題演習を通して皆さんの知識を使えるようにしていく必要があります。一つの単元について一通り覚えることができたら、次の単元に行く前に一度問題演習を行うようにしておきましょう。

先輩の体験談先輩の体験談

早稲田大学国際教養学部 さん世界史は正直、自分で覚える科目だと思っていたのですが、勉強方法を教えてもらった ことで考え方が180度変わり、「勉強法」も知らないと伸びないということを痛感しました。そこから世界史自体が趣味のように楽しいと思えるようになり、高3の6月は49点だった世界史が、最終的に87点まで伸びました。

コラムコラム Column

「記憶力を高める」シリーズ その③ 
~短期記憶から長期記憶へ 知識を「蓄える」~

覚えたことを脳の中に蓄えるメカニズムとして、短期記憶と長期記憶があると考えられています。まず、ある情報を覚えると、その情報はごく短時間(10数秒程度)の間だけ記憶されます。これが短期記憶です。短期記憶は覚えている時間が短いだけでなく、一度に覚えられる情報量もごくわずか(数字で7~8桁、単語で7~8語程度)です。もちろんこのままでは、せっかく覚えた情報もすぐ忘れてしまいます。覚えたことを記憶に定着させるためには、長期記憶という大きな貯蔵庫に転送し、保存しておかなければなりません。この長期記憶に転送することが、「蓄える」ことになります。

ちなみに、長期記憶の容量は膨大で、限界はありません。それどころか、長期記憶はいわば情報を引っ掛けてとらえる網のようなもので、蓄えれば蓄えるほどその網は大きく、目が細かくなって、より多くの情報が記憶できるようになります。覚えたことを長期記憶に「蓄える」コツは、その網のイメージを元に考えるとわかりやすいのです。では、そのコツを紹介しましょう。

覚えたことを「蓄える」、つまり長期記憶の網の中に捕らえやすくするためには、大きく分けて、①覚えようとする情報に手を加える方法 ②長期記憶の網のほうに手を加える方法 の二つのアプローチがあります。このコラムではまず、①覚えようとする情報に手を加える方法 を説明します。

本物の網では、小さいものより大きいもの、ただ丸いものより手足がついたものの方がよく引っかかります。これと同じで覚えようとする情報どうしをくっつけて情報のかたまりを大きくしたり、覚えようとする情報に枝葉をつけたりすると、長期記憶の網に引っかかりやすくなります。例えば、世界史の宗教改革を覚えるのに、ルターを中心として様々な人物や出来事を結んでいく(下図)と、それぞれの事柄を単独で覚えるよりも記憶への定着度が高まります。

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