大学教授
インタビュー
「憲法や法律学のレンズで
様々な問題を考察する」
橋本 基弘 先生Motohiro Hashimoto
中央大学 法学部 教授
憲法は身近な問題に繋がっている
私の研究分野は憲法を中心とした公法学(国や地方公共団体と国民、住民の関係に関わる法律分野)です。特に表現の自由や結社の自由を中心に勉強してきました。広告表現が憲法上規制できるのかどうかや、団体の中で個人はどれほど自由でいられるのかという問題について執筆するとともに、最近は政治や国家のあり方についても論文を書いています。憲法というと別世界の話に思えますが、実は身近な話が多いのです。タバコを吸うこと自体を禁止するのは許されるのか、なぜ日本では同性婚が制度化されていないのかなど、憲法や法律学のレンズを通して、日常の問題を眺めることができます。実際の裁判に関与することもあり、世の中の役に立てているかなと思えるのが面白味であり、やりがいです。また、法律の背景には連綿と続く人間の営みや歴史があり、その深さを知ることができるのも喜びです。私が法律に携わることになったのは、高校生のときにアメリカの最高裁判所で長く裁判官を務めた人の伝記を読んだのが間接的なきっかけです。直接的なきっかけは、大学4年生のときに巡り会えた先生で、自由に勉強する喜びを教えてくれた先生に影響を受け、学者の道を志すことにしました。
勉強したことに無駄な知識など一つもない
受験勉強で身につけた英単語や構文は忘れないものです。今も外国語の資料や文献を読みますが、その基礎は大学受験にあるようです。法律学を志す人は、国と歴史をきちんと学んでほしいと思います。受験で得た知識は、法を学んでいるときにふと結びつくことがあります。無駄な知識など一つもないと言って良いでしょう。「何の役に立つかわからない」と嘆く人もいますが、勉強したことはまるで高い山に降った雨水のように長い時間をかけてろ過され、やがて湧き水として現れます。受験の知識も、あるいは教養も同じです。学生たちには「結論を急ぐな、自分の頭で考えなさい」と言いたい。問題は与えられるものではなく、自分で見つけるものです。ですから、私のゼミでは原則としてテーマを与えません。自分で問題を見つけ、資料を集め、考え、みんなに聞いてもらい、議論をして、修正をしていくプロセスが大学で学ぶことです。もっと本を読み、映画を見てください。AIは答えを出してくれても、問題を探してはくれません。AIに答えを出させるためには、人間が問題を探し、作り出す必要があるのです。