英語の正しい勉強法
ライティング
さて、大学受験では英語が読めさえすればそれでOKというわけではありません。国公立大学の大部分と、難関私立大学の一部の学部では英作文が出題されます。与えられた英文の内容を理解すればよい読解と異なり、英作文は自分から英語を発信していくという点でより正確な知識が求められます。実際、ミスなく自分の言いたいことを英語で表現する能力は一朝一夕には身につきません。
では、英作文についてはどういった順序で学習を進めていけば良いのでしょうか。まず必要となるのは、読解と同じく文法・語彙・構文の基礎力を磨くことです。「それがいつのことなのか」を述べる時制や、「順接・逆接、原因・結果」などの論理関係を相手に誤解なく伝えるためには、文法の知識を適切に運用する必要があります。また、似たような意味を持つ単語から適切なものを選んだり、先に紹介したthinkのように個々の単語を正しく使ったりするためには正確で豊富な語彙力が求められます。さらに、文法・語彙の知識を駆使して組み立てた英文が正しい構造をしているかどうかを判断するためには、構文を正確に把握できなければなりません。このように読解・英作文の違いに関わらず、最初にすべきことは文法・語彙・構文の基礎力の養成ですので、焦らずじっくりと基本的な学習に取りくむようにしましょう。
英作文の力を伸ばすためには、上で述べたような基礎を積み重ねていくこととは別に意識すべきことがあります。この点について、実際の入試問題を例にしながら考えてみましょう。
まず大学入試の英作文は、「和文英訳」と「自由英作文」の二つに大別されます。このうち「和文英訳」とは、与えられた日本語の内容を英語で表現するもので、例えば次のような問題が該当します。
● 「和文英訳」はまずは日本語の翻訳を
次の文章を英訳しなさい。
お金のなかった学生時代にはやっとの思いで手に入れたレコードをすり切れるまで聴いたものだ。歌のタイトルや歌詞も全部憶えていた。それが今ではネットで買ったきり一度も聴いていないCDやダウンロード作品が山積みになっている。持っているのに気付かず,同じ作品をまた買ってしまうことさえある。モノがないからこそ大切にするというのはまさにその通りだと痛感せずにいられない。
和文英訳を出題する大学の代表格は京都大学です。この文章を見て、「やっとの思いで」「すり切れる」「山積み」「痛感せずにいられない」といった日本語に対応する英語の表現が思い浮かばない……と思った人が多いのではないでしょうか? 和文英訳の問題では「日本語の文をすっかりそのまま英語に置き換えないといけない」という先入観を持つ人がいますが、決してそんなことはありません。そもそも「どう英語にすればいいんだろう?」と考え込んでしまうような日本語をそのまま英語にしようと時間をかけて頑張っても、まず正しい英文を書き上げることはできません。そこで、大学入試の和文英訳においては、元の文から意味が大きく変わらない範囲で、問題文の内容をとらえなおすこと、言うなれば「日本語から日本語への翻訳作業」をすることになります。上の京都大学の問題を日本語で翻訳すると、例えば次のようになります。
どうでしょうか? 「買ったきり一度も聴いていないCDが山積みになっている」とは、言い換えれば「買ってから一度も聴いていないCDがたくさんある」ということです。これなら自分の知っている知識で書けるような気がするのではないでしょうか? このように「日本語の翻訳」を習慣づけると、英語で表現できる幅が増えていきますので覚えておきましょう。
Because I didn’t have much money when I was in my school days, I listened again and again to the records I had so much difficulty getting. That’s why I remembered the titles of all the songs and all the words in them. Now I have a lot of CDs and songs that I bought online or downloaded but have never listened to. Sometimes I even mistakenly buy a CD without noticing that I already have it. I really think it is true that you only take good care of things when they are hard to get.
では、もう一方の「自由英作文」について確認してみましょう。「自由英作文」とは、与えられたテーマに沿って自分の意見や考えを述べるタイプの英作文です。以下の東大の問題などが自由英作文に該当します。
● 「自由英作文」はまずは型の用意を
私たちは言葉を操っているのか。それとも,言葉に操られているのか。あなたの意見を60~80語の英語で述べよ。
近年は国公立・私立を問わず、自由英作文が頻出です。与えられた日本語を英語に変換する和文英訳と異なり、自由英作文では自分で書く内容を決めなければならないという難しさがあります。自由英作文には唯一の解答が存在しません。言い換えれば、問題の求める条件を満たしていれば何を書いても良いということになります。しかし、何でもOKと思って深く考えずに書き始めても、話の内容がいろいろな方向へ拡散してしまい、指定語数でまとまりのある英文に仕上げるのは思いのほか難しいことに気づきます。ここで気をつけたいのが、自由英作文では「何を書くか」については自由ですが、「どのように書くか」についてはあらかじめ自分なりの型を用意しておく必要があるということです。
上の東大の問題のように、どちらか一方の立場に立って自分の意見を述べるような問題の場合は、①どちらの立場に立つのかを明確にする ②その立場をとる具体的な理由 ③さらに自分の立場を補強する理由、という枠をあらかじめ用意しておき、その枠に自分の意見を当てはめていくことで理路整然とした展開の英文に仕上げることができます。それぞれの枠に入る中身(=自分の考え・意見)は、他の人には思いつかないような内容である必要は全くありません。独創的な内容で論理的な文章を書ければ採点者の印象も良くなるかもしれませんが、オリジナリティが高いほど内容的にも込み入ったものになる可能性が高いため、うまく型に沿って書くことができずに雑然とした英文になってしまう危険性があります。ですので、まずは決まった型に沿って英文を仕上げることを到達目標として学習に取り組みましょう。ちなみに、大学受験における自由英作文のテーマは実に多様です。与えられたテーマについて書くべき内容が思い浮かぶかどうかは、そのテーマに対する習熟度に左右されます。ですから日常の中で見聞きする様々な物事について、積極的に興味関心を向ける姿勢を持ちましょう。このような意識で日々を過ごすことで、思考のストックができあがっていくのです。
I think language controls us. How we say something can be just as important as what we say. This is the reason why children must be taught how to speak politely and students how to write effectively. It is also why advertisements make us buy things and politicians try to be very careful when they speak in public. We are all well aware of the power that language can have over our human relationships and everyday lives.(77語)
先輩の体験談
東京大学理科一類 さん 記述は「相手に伝わる文章」が書けないと減点されてしまうので、私は先生に自分の答案を添削してもらい、より良い書き方を教えてもらうようにしました。それを1年通してやったことで、受験本番は傾向が変わっていてびっくりしましたが、1点でも稼ごうという気持ちで文章を組み立て、合格点を取ることができました。
まとめ Summary
英作文の基本は「自分の言いたいことを的確な英語で表現する」ことです。そのため志望大学がどのような問題を出すのかに関わらず、まずは短めの和文英訳などを通して基本的な表現をしっかりと使いこなせるようになることを目指しましょう。その際自分の書いた英文がどの程度正確なのかを自分で判断するのは非常に難しいことですので、信頼できる指導者に添削してもらうようにしましょう。