社会で活躍する先輩への
インタビュー
国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター
さん
2014 年に東京大学農学部生物素材化学専修を卒業後、2016 年に同大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻修士課程を、2019 年に同博士課程を修了。2019 年より国立研究開発法人理化学研究所環境資源科学研究センターにて特別研究員に着任し、天然物を原料としたプラスチックの開発を行っている。
前人未踏の領域に挑戦できるのがこの仕事のやりがい
――現在はどんなお仕事をされていますか?植物などの生物資源(バイオマス)を原料としたプラスチックの開発を行っています。プラスチックは高校化学で学習する熱可塑性高分子にあたり、単量体(モノマー)を大量に繋ぎ合わせること(重合)で得られる糸状の分子構造を持つ有機化合物です。バイオマスは化石資源と比べて複雑な構造を持ち、その構造を活かしたモノマーや高分子の化学構造を設計するのが私の主な仕事です。バイオマスを中心に、材料の使用目的に合わせて最適なモノマーを選択または調製し、設計した新規高分子を合成、できあがった材料の特性を評価するという流れです。主に高耐熱性高強度材料を目的としていますが、最近は環境中で分解される生分解性プラスチックの開発や評価にも関わっています。
――今ある原料の特長を組み合わせて新しい材料を作るとは、すごいお仕事ですね。仕事のやりがいは、どんなところですか?商品化が目的となる企業では難しい領域へ挑戦できることが主な魅力です。また、国家プロジェクトなどで大学や企業と連携して国や社会が求める技術・材料を開発し実用化することで、社会に貢献できることにやりがいを感じます。
「抜糸不要の縫合糸」の機能を使って農業資材や廃棄物の課題も解決できないか?
――大学・大学院では主にどのようなことを勉強・研究されましたか?林産学にあたる分野で、木材の構造や構成成分、その利用に関して学びました。研究室では、天然由来の物質を利用した高分子材料の合成と化学構造による物性制御に関する研究を行っていました。
――後藤さんが林産学を専攻されたのはなぜですか?小学生の頃から医療に興味があり、最初は薬学が第一志望で医療材料が第二志望でした。そこからあるとき、体内で吸収される抜糸不要の縫合糸に興味を持つようになりました。また別の機会に農業資材や廃棄物の課題があることも知り、抜糸不要の縫合糸と同じ手法でいろいろな課題の解決法が見えそうだと思ったんです。それで利用後肥料になる農業資材などの生分解性材料の開発にも興味を持つようになりました。
大学受験を通じて少ない労力で目標を達成するスキルが身についた
――後藤さんにとって、大学受験の意味は何だったと思いますか?目標を達成する上で、どの方法が自分に最適かを学べた貴重な経験だったと思います。私の場合は、授業で新しい分野に入ったら、まずは全体像としてその分野で必要な基礎知識と志望校で求められるレベルを大まかに把握するようにしました。そして、それを勉強の指針にしつつ、目標レベルに達していない範囲を細分化して洗い出し、確実にできるようになるまで徹底的に繰り返すという方法で勉強していました。
いかに自分ができないところだけに時間をかけるかを大事にしていました。
受験の際に自分が求められるラインや自分の出来不出来を把握するというスキルを身につけられたことで、より少ない労力で必要な目標を達成でき、他のことに時間を使えるようになったのは非常に大きかったと思います。
――受験勉強をした経験から、知識だけではなく、その後の人生でも武器になるスキルを身につけられるわけですね。そうですね。特に勉強は出来不出来が明確に判断しやすいので、こうしたスキルを身につけるのに良い機会だと思います。ただ、やり方は人によって異なりますし、自分に最適な方法を探して身につけるには時間がかかります。だからこそ、できるだけ早い段階で受験勉強を始められると効率的だと思います。
ビリヤードやダーツを通じて様々な人と交流するのが好き
様々な人の意見や考え方に触れるのが好きで、学生の頃からビリヤードやダーツなどの試合に出て、様々な背景を持つ人や異業種の人と交流してきました。社会人になってからも、仕事などで海外や地方に行った際には現地の人と交流をしています。最近はコロナ禍や多忙のため、この様な活動はできていませんが、ビリヤードなどは生涯続けられる活動なので落ち着いたらまた再開したいです。