大学教授
インタビュー
「繊維企業がフィルムや
医薬品も扱うのはなぜか?」
アスリ チョルパン 先生Asli M. Colpan
京都大学経営管理大学院 経営管理研究部 教授
「工学」から「経営学」に転換して見えた世界
私の専門分野は経営学、その中でも特に「企業戦略」と「企業統治」です。経営学というと文系ですが、私は高校時代理系で、大学でも繊維工学を学んでいました。今とは全く違う分野です。方向転換のきっかけは、大学時代に日本の繊維企業について研究していたとき、複数の企業が繊維事業だけではなく様々なビジネスに手を広げていることに気づいたことです。例えば、繊維製品を扱う東レはフィルムやケミカル製品、医薬品などの分野でも事業を行っています。「なぜ一つの企業がこんなにいろいろな分野に進出しているのだろう?」という疑問をきっかけに、工学よりも経営の方に興味をもつようになり、大学院の修士・博士課程では経営学の道に進みました。
企業戦略については、こうした企業がどうして幅広い事業に参入したのか、手広く事業を行う企業はどういう分野に投資していくべきか、といったことを研究しています。企業統治としては、例えば役員の給与やボーナス、株式をどう組み合わせて支払うべきか、株主はどういう戦略を期待しているかなどについて研究しています。また、そうした研究を活かして実際の企業の社外役員も務めています。研究内容をもとに、その会社が今後どういう分野に投資するべきかなどを役員会で提案できるため、自分の研究が社会の役に立っている、企業に貢献できているという実感を得られます。
受験勉強で身につけた知識や思考力はこの先もあなたの財産になる
大学で担当している企業戦略の授業では、「企業戦略とは何か、なぜ必要か、企業が今後3年間でどのように成長すべきか」など学生に問いかけることから始めます。そしてフレームワークなどの理論やその企業の特徴を理解し、企業の成長を支える戦略について一緒に考えていきます。授業では、「学ぶことは嫌なものではなく楽しいものだ」と感じてもらえるようにしています。試験も覚えたことを答えるのではなく、「授業で学んだ理論を実際の企業にどう応用するか説明してください」といった、考えて答える問題を出しています。大学受験の勉強でも覚えなければならないことはもちろんありますが、そこで得た知識はこれから自分が好きなことを勉強するための「ツール」になります。受験勉強で鍛えた思考力は、大学で必要な自由な発想や思考にも繋がると思います。