小論文の正しい勉強法

小論文の正しい勉強法

まず、自身が受験する予定の大学・学部で出題される小論文の出題形式を確認しましょう。出題形式は大きく三つに区分できます。

テーマ型は日頃の情報収集が必須

問題 スポーツを通じた環境保護活動を2つあげて説明しなさい。また、スポーツが環境と調和して発展するために私たちが取るべき行動について述べなさい。
(250字以内)

【サンプル:2019年度 筑波大学 前期体育専門学群】

テーマ型の小論文は、テーマや題目が与えられ、それについて自由に書いて良いとされるパターンの小論文形式です。話題のニュース・トピックスに関して意見を求められる場合もありますが、多くは、志望する学部での研究内容に関連する事柄について出題されます。出題されるテーマはあらかじめ提示されないのが普通なので、日頃から自身の志望する分野のトピックスを収集し、そのことについて考え、自分の意見を持つ習慣をつけておくべきです。

実際に答案を作成する場面では、時間が限られているため、設問文を読んで考えつく事柄を、すぐに、できるだけたくさん書き出してみましょう。上の例で言えば、

  • 自然エネルギーを競技場やインフラに利用する
  • 植林や植樹を行う
  • スポーツ用品のリサイクルを促すための取り組みを行う

などが挙げられるでしょう。文字数は250字なので、どの内容に何文字くらい使用するかをイメージしてください。また、自身の日常に引きつけながら、できれば具体的な経験や知識に基づく主張を行うのが良いでしょう。

課題文型は自分の立場を明確に

次の文章を読み、設問に答えなさい。
問題文(川平敏文『徒然草―無常観を超えた魅力』より抜粋) ※本問では省略
  • 設問Ⅰ この文章を320字以上400字以内で要約しなさい。
  • 設問Ⅱ 

    正解の出ない問題に取り組むことの意義について、この文章をふまえて、あなたの考えを320字以400字以内で述べなさい。

【サンプル:2021年度 慶應義塾大学 文学部】

課題文型の小論文は、課題文が与えられ、それを読解したうえで、自分の主張を提示する形式の小論文を指します。

国公立大や、例で示した慶應大文学部などでは、第1問で要約が課され、第2問以降で自身の考えを述べさせる、複数設問形式での出題も多くなります。したがって、時間の制約がある以上、はじめに設問を確認して、要約が課されている場合には、課題文を読みながら、筆者の主張=結論部分は何であり、その根拠として挙げられている事柄は何かということを手際よく整理しながら(大事なところに線を引いたり○で囲んだり、または余白に書き出したりして)押さえていく必要があります。

筆者の主張=結論を確認できたら、今度はそれを「ふまえて」自身の意見を書くことになります。その際に注意すべきなのは、筆者の主張に対する自分の立場を明確にする、ということです。ありがちなのは、論の前半では筆者の考えに賛同しておきながら、後半ではいつの間にか反対の立場をとっていて、どっちつかずになってしまうパターンです。通常、そうした自身の立場が首尾一貫していないような小論文に対しては、低い評価しか与えられません。それを避けるためには、まずは課題文の筆者の主張に対して賛成なのか、反対なのか、はっきりと早い段階で示しておくようにするのが良いでしょう。そして、結論部分でそれを繰り返します。筆者の意見に部分的に賛成・反対という場合には、どの点について賛成・反対なのかをしっかり明示する必要があります。

資料読解型は資料の特徴的な箇所に注目

問題

最後に、「資料読解型小論文」の書き方について解説します。

「資料読解型小論文」とは、図や表、グラフなどが与えられ、そこにある情報を読み解いた上で、そのテーマに関する自身の意見を述べてゆく形式の小論文を指して言います。資料は一つだけの場合もあれば、複数の資料が提示される場合もあります。

さて、「資料読解型小論文」を作成するうえで注意すべきことは、図や表から読みとることのできる情報を全て網羅する必要はない、ということです。出題者はそのようなことを求めていません。

それではどうしたらよいかと言うと、特徴のある部分、すなわち数値などに過度の変化が見られたり、極端であったりする部分に着目します。まずは、与えられた資料について、特徴ある箇所を見つけるのです。上記サンプルの問題の場合、論じなければいけないのは「日本」についてなので、他国と比較して特に顕著な項目を取り上げて、それをもとにして自身の考えを組み立てていきます。

まず、表1を見ると、日本では「人口千人当たり病床数」が13.3床と最も多く、また、MRIやCTスキャナーの台数も群を抜いて多いです。こうしたことから、日本の特徴として、医療提供体制における設備環境面での充実が挙げられます。ただし、他方で人口当たり医師数は2.3人と下から2番目であることにも注意を向けたいところです。

次に、表2を見ると、65歳以上の人口割合が25.1%で最も高く、日本が超高齢社会(※超高齢社会:65歳以上の人口の割合が全人口の21%超を占めている社会)であることを端的に示しています。さらに、65歳以上の人口割合と15~64歳の人口割合から(二つを足すと87.2%)、15歳未満の人口割合(12.8%)が最も低いこともわかります。人口千人当たり出生率が最も低いこともあわせて、日本の特徴として、少子化傾向が顕著であることが挙げられます。

以上より、現時点では日本の医療提供体制は、特に設備環境面において高水準であると言えますが、今後ますます高齢者が増えていき、少子化傾向に拍車がかかれば、近い将来において現在と同じ水準の医療体制を維持できるかどうかは不透明と言えるでしょう。したがって、医師数を増やす、在宅医療や在宅療養を拡充させる、地域と連携した医療体制を推進する、などの提言を行うことができます。

まとめ まとめ Summary

小論文を作成するにあたって最も大切なことは、与えられた情報を正確に理解して、そこに課題・問題を見つけて、自分なりの解決案をわかりやすく、かつ説得的に提示することです。したがって、普段の学習で、自身の書いた文章が問われていることに対して正しく答えているか、そして採点者が読みやすいものになっているか、指導者にその都度確認・添削してもらうことが大切です。
次に大事なのは、自身の論に説得力を与えるために、普段から自身の志望する分野のトピックスについて新書などを読んで知識を増やし、他人の意見を知り、自身の考えをまとめておく、ということです。その際、新聞や『文藝春秋オピニオン 20XX年の論点100』なども適宜参照すると良いでしょう。

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