大学教授
インタビュー
「作家が自分の人生を
かけて提示する
「生と死」に向き合う」
竹内 康浩 先生Yasuhiro Takeuchi
北海道大学 文学研究院 人文学部門 表現文化論分野 教授
小説は真剣に読み込むことで作家の「問」に触れられる
私はアメリカ文学を研究しています。不思議なことに、物語では大変な頻度で人が死にます。それは単に話を盛り上げるためだけでしょうか。たぶん本当の理由は、死が人にとって最も根源的な問題だからです。「どうせ死ぬのになぜ生きなければならないのか」という問いを無視して真面目に生きることはできません。だから多くの作家は死をテーマにしてきました。私もその問いに向き合い、最近はその手がかりとして「未解決殺人事件」を研究しています。例えば『ハックルベリー・フィンの冒険』では、主人公の父親が殺されますが、犯人は明かされないままです。また、サリンジャーの作品でも奇妙な自殺が描かれていて、その真相は謎のままです。それらの不可解な死について意義を探っています。拙著『謎ときサリンジャー』『謎とき「ハックルベリー・フィンの冒険」』(新潮社)にて詳しく説明していますので、興味のある方はぜひお読みください。作家たちが提示する「答」は単なるパズルに対する解答みたいなものではなく、小説という形でしか提示できない答えです。小説を読み飛ばすのではなく真剣に読み込むことを通して、より深くそれを体験できる気がします。大学の講義で意識しているのは、「簡単に答えを出さないこと」。作家はほとんど解決不能な問題をテーマとしているので、私たちが急いで答えを出そうとしてはいけません。答えが出ない宙ぶらりんの状態に耐えて、常に頭の片隅に問題を抱え続けていると、ふとしたときに手がかりにハッと気づくのです。
物事は深く考えることに価値がある
私の受験の話をすると、高3から受験勉強を始めて出遅れたので、ガリ勉せざるを得なくなりました。東大はD判定ばかりでしたが、廊下ですれ違った先生が「君なら間に合う。きっと受かる」と言ってくれたことを覚えています。しかし、ガリ勉しすぎて合格がゴールになってしまったことは大いに反省しています。人生の「正解」はすぐには見えないのです。皆さんには勉強でも物事を根源的なレベルまで突き詰めて考えてほしいと思います。それが時に問題集を解くよりも飛躍的な成績向上をもたらしてくれます。英語の勉強はどの分野に進んでも活きてきます。今は優秀な翻訳ソフトがありますが、AI翻訳の正しさを判定するには自らに高度な英語力が必要です。教科としての英語で満点を取っても満足せず、自在に使えるレベルを目指してほしいです。