大学入学共通テストの本試験において、原則として20 点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合に、得点調整が行われます。
共通テストの特徴でもある「得点調整」について、この記事で詳しく見ていきます。
得点調整の目的
受験生がそれぞれ選択した教科・科目間で、問題の難易度の差によって有利・不利が生じないようにするための対応です。
たとえば、Aさんは物理を、Bさんは化学を選択しました。どちらも平均が取れたとします。しかし、得点を見ると…Aさんは60点、Bさんは40点でした。得点だけ比較すると20点もの差が出てしまっています。さらにCさんは化学で50点、平均点を10点も超えていますが、物理の平均点にも届きません。
こうしたときに、平均点をベースとして素点を調整して、科目選択において受験生の不公平をできるだけ減らそうというのが得点調整の目的です。
対象となる教科・科目
得点調整の対象となる教科・科目は以下の通りです。
・ 公民の「現代社会」「倫理」「政治・経済」の間
・ 理科②の「物理」「化学」「生物」「地学」の間
ただし、受験者数が 1 万人未満の科目は得点調整の対象となりません。
実施日
得点調整の実施の有無は、試験実施の翌週に、大学入試センターのホームページで発表されます。得点調整を行う場合は、対象となる各科目において「得点の換算表」が公開されます。
換算表については、後ほど詳しく見方を説明します。
得点調整の方法
得点調整は、「分位点差縮小法」という方式を用いて行われます。対象となる受験者と対象とならない受験者間での公平性の観点から、調整後も通常起こり得る平均点の変動範囲となるように調整が行われます。単純に平均点差の全てを調整するものではありません。
分位点差縮小法
分位点差縮小法の解説について「大学入学共通テスト受験案内」より抜粋します。
得点調整の対象となる科目のうち,最も平均点の高い科目と最も平均点の低い科目の得点の累積分布を比較し,図の縦軸の受験者数の累積割合(%)が等しい点(等分位点)の差(分位点差)を,一定の比率で縮小する方式です。また,平均点が最大及び最小以外の科目についても,素点の平均点差が同一の比率で縮小されるよう調整します。縮小の比率は,15 点÷(最も平均点の高い科目の平均点-最も平均点の低い科目の平均点)とします。 この方式により,最も平均点の低い科目の得点の累積分布は,図中の点線で描かれた分布に移動することとなります。この点線の分布が調整後の得点の累積分布となり,横軸上の素点から矢印に沿って進み,再び横軸上に 戻った点が調整後の得点となります。
(引用ここまで)
分位点差縮小法をとても簡単に言うと、「0点」と「100点」は固定し、その間の点数を調整して差を埋めていく方法です
令和5年度の得点調整
令和5年度の例で解説しましょう。令和5年度大学入学共通テストでは「理科②」で得点調整が行われました。
大学入試センターは1月20日に、共通テストの平均点、最高点、最低点、標準偏差値等のデータをまとめた中間集計を発表しましたが、その中で、理科2において、「物理」63.39点、「化学」48.56点、「生物」39.74点、「地学」49.88点と、平均点の差が物理と生物の間で20点以上開いたため、得点調整が行われました。「物理」「化学」「生物」の間で得点調整を行い、地学は受験者数が1万人未満であったため得点調整は行われませんでした。
得点調整の頻度
得点調整は、同じ教科の選択科目の間で平均点20点以上の差が出た時に実施されるものです。毎回の試験で行われるものではありません。2023年度試験を含め、大学入試センター試験からの実施は通算4回です。
共通テストについては「共通テスト特設ページ」でも詳しく解説しています。