年末が近づき、すっかり肌寒い季節になりました。この時期になると「学年が上がる前に勉強時間を増やさないと!」と意気込んでいる高校生も多いのではないでしょうか。
しかし、部活や通学に時間をとられ、「これ以上勉強時間を確保するのは難しい…」と困っている人もいますよね。
例年よく目にする失敗が、無理に睡眠時間を削ってしまい逆に成績が伸び悩んでしまうケースです。
今回は、睡眠時間と成績アップの関連性について確認していきましょう。
目次
睡眠は成績アップになぜ重要なのか
成績アップにおいて睡眠が重要な理由は、ズバリ「睡眠中=記憶の整理を行う時間」だからです。
これを理解するには、まず人間が物事を記憶する仕組みを知る必要があります。
記憶のメカニズムってどうなっているの?
人間の記憶は、長くても1~2週間程度で忘れてしまう短期記憶と、時間が経っても重要な情報として思い出すことができる長期記憶の2つに分かれています。
学校の小テストのためにがんばって覚えたはずの英単語が、半月くらい経つともうほとんど思い出せない…という経験は、あなたにもあるのではないでしょうか。
このように、一時的にしか記憶できないのが短期記憶の特徴であり、覚える作業にどれだけ時間を使ってもすぐに抜けていってしまいます。
重要なのは保存先!
目や耳から入ってきた情報は、脳にある「海馬」という部位で一時的に保管されます。
しかし、この海馬は保存できる容量が少ないため、情報のほとんどが忘却されてしまいます。これを短期記憶と呼ぶのです。
一方で長期記憶は、「大脳皮質」という脳の中でも大容量の部位に保存されています。
海馬では保管し切れない情報の中から、重要な情報を整理して大脳皮質へ移動させる…というのが記憶の仕組みです。
容量の小さなパソコンやテレビの本体には保存し切れないデータを、外付けのハードディスクに移動して残すようなイメージを持つとわかりやすいでしょうか。
この脳内の整理作業は、毎日寝ている間に行われています。
つまり、睡眠時間を削るということは、「覚えたい情報を保存する」作業を中断させてしまう恐れがあり、せっかく学習した内容を定着させられない可能性があるということなのです。
寝る前の工夫で学力は飛躍的に伸びる!
長期記憶へ移動させる情報は、寝る直前に記憶した最新のものが優先されます。
朝や午前中の情報ほど残りづらく、寝る前に入ってきた情報は残りやすい傾向にあるということですね。
つまり、毎日寝る前にその日新しく学んだことや覚えておきたいことを見直す時間をつくるようにしたり、社会など覚える要素が多い科目の勉強時間を夜に回したりと、工夫次第で学力の伸びをアップさせることができるのです。
どれくらいの睡眠時間が適切なのか
学力を伸ばすのに睡眠が必要なことは確認しましたが、では何時間程度の睡眠時間が適しているのでしょうか。
体質などによって人それぞれ異なる部分はありますが、考えていきましょう。
「5時間寝たら落ちる」って本当?
今以上に学歴競争が激しかった昭和中期~後期の時代では、「四当五落(よんとうごらく)」というフレーズが、塾や学校で使われていました。
その名の通り、「睡眠時間を4時間以内に削ってまで勉強する人が合格し、5時間以上寝てしまうような受験生は落ちる」ということを表現しています。
その時代の受験を戦い抜いた世代には、今もその考え方が染みついている人がいるかもしれません。
しかし、実際には当時も睡眠時間を削っている受験生はそれほどおらず、東大の合格者にアンケートをとったところ毎日7~8時間程度寝ている人が最も多かった…という記録もあります。
やはり学力を効率的に上げていくには、充分な睡眠をとり、記憶を整理する時間をつくってあげる必要があると言えるでしょう。
周りはどれくらい寝ているの?
内閣府の調査によると、高校生の平均睡眠時間は7時間にやや満たない程度。
アメリカの睡眠学会で推奨されている健康のための推奨時間は8~10時間とされており、世界の平均睡眠時間と比べても日本の高校生は1時間以上短く、国際的に見ても「充分な睡眠時間がとれていない国」と考えられます。
通学時間が長かったり部活の朝練があったりという理由でなかなか時間がとれないという人も、少なくとも平均の7時間以上は確保した方が良いでしょう。
また、世界と比べると就寝時間が非常に遅く、平日も0時台に寝る人の割合が高いのも特徴です。
成長ホルモンが最も分泌されるのが午後10時~午前2時とされており、健康面を考えても早く寝て睡眠時間を削らないようにするのがベストと考えられます。
6時間睡眠が続くと酔っぱらい状態に!
『睡眠時間は90分単位にすると良い』という話を聞いたことがあるでしょうか。
人間は眠っている間も脳が働いているレム睡眠と、脳まで休ませているノンレム睡眠をくり返しており、その周期が90分単位で訪れるため、切り替わるタイミングで目覚めやすくなるという説です。
近年の研究では「人それぞれその周期が異なるため、誰にでも合う方法ではない」という意見が強まっていますが、今もこれを前提に睡眠時間を考えている日本人は多いように思われます。
そのため、「7時間半も寝る時間はとれないから、6時間寝るようにしよう」というケースが発生してしまうのです。
この6時間睡眠というのは、大半の人にとって睡眠不足と言えます。
なぜなら、6時間睡眠を2週間続けると、脳の働きや認知機能が丸2日徹夜した状態と変わらないレベルになってしまうというのです。
高校生にはイメージしづらいですが、これは日本酒を1~2合飲んだときの「完全に酔っぱらった状態」に匹敵すると言われています。
そんな状態で学校や塾の授業を受けたり、問題演習を行ったりしても、なかなか頭には入ってきません。
勉強だけでなく普段の生活を考えても、睡眠時間を確保することは最優先事項と言って良いでしょう。
それでも寝られない人はどうすれば良いか
「もちろん長く寝ていたいけれど、どうしても時間がとれないんだ!」という忙しい高校生も多いでしょう。
その場合も、やはり根性論ではなく工夫して対策していく必要があります。導入しやすい方法をぜひ試してみてください。
パワーナップ
パワーナップ(積極的仮眠)とは、昼に15~30分の仮眠をとることです。
単純な解決策に思えますが、NASAが行った実験によって科学的効果が実証されており、GoogleやAppleなどの有名企業でも導入されています。
実際に昼寝タイムを設定している進学校もあり、勉強へのやる気や成績がアップしたと感じている生徒が多いようです。
夜に寝られない分、単純に昼寝の時間をとれば良いのか…という訳ではなく、パワーナップで効率的にやる気や学力を向上させるにはいくつかポイントがあります。確認していきましょう。
30分以上は仮眠しない!
パワーナップは、20分前後の短時間で済ませることがベストとされています。
それには、先に挙げたレム睡眠とノンレム睡眠のように、人間の睡眠はいくつかのステージに分かれていることが関係します。
カリフォルニア大学のマシュー・ウォーカー氏の研究によると、眠ってから20分ほどで訪れる「ステージ2」と呼ばれる軽い睡眠レベルでは、脳内の情報を整理する働きが強化されます。
これが30分以上になると「ステージ4」という深い眠りにまで到達してしまい、今度は目覚めづらくなってしまいます。
よって、頭をスッキリさせた状態で目覚めるには、20分前後がベストとされているのです。
短時間で起きられるか不安な人は、接種してから20~30分後に覚醒効果が現れるとされる、カフェインを含んだ紅茶やコーヒーを寝る前に飲んでおくと、ちょうど仮眠を終える頃に目覚めやすくなります。
必ず昼寝にする!
パワーナップをするタイミングは、昼の12時~午後3時の間が良いとされています。午後3時を過ぎると、今度は夜の睡眠に影響を与えてしまい、反対に眠れなくなってしまうためです。
学校の昼休み、ご飯を食べた後にひたすら単語帳や問題集で勉強している人も、睡眠不足だという自覚があり頭がスッキリしない場合は、20分程度寝るようにした方が良いかもしれませんね。
完全に横にならない方が良い!
寝るのであれば、せっかくだし校庭のベンチで横になって…と思うかもしれませんが、あまりおすすめできません。
最適な20分程度の仮眠ではなく深い眠りに落ちてしまう可能性もありますし、食後すぐに寝転がってしまうと、逆流性食道炎などを発症するリスクもあります。
学校であれば、机に突っ伏す形や椅子の背もたれによりかかった状態で座り寝するのが良いでしょう。
寝つきを良くする
せっかく早くベッドに入ったのに、なかなか眠れない…という人もいますよね。寝ようと思えば思うほど逆に眠れず、結局睡眠時間が足りずに脳が働かなくなってしまいます。
いきなり睡眠導入剤に頼るよりも、まずはほかの部分から睡眠の改善を試みましょう。
体内時計をリセットする!
人間の体内時計は24時間よりもやや長い周期と言われており、時間に縛られずに生活していると、寝付く時間と目覚める時間が1日ごとに約15分ずつ遅れていく※とされています。
※個人差があります
そのため、目覚めるタイミングを体に教えてあげないと、アラームで昨日と同じ時間に起きたつもりでも、体はもう少し休もうとしているのです。
毎朝起きてすぐに太陽の光を浴びることで、1日の始まりを体に教えることができます。起きるタイミングを一定にし、体への負担を少なくしていきましょう。
日光だけでなく強い光でも起きることができるので、最近は音ではなく光で起こす目覚まし時計を活用する人も多いようです。
寝る前に脳を覚醒させない!
スマホなどが発する「ブルーライト」は、目に見える光の中でも最も強い光を放っています。
この強い光が目に入ると脳がまだ日中だと錯覚し、「体は横になっているのに脳は起きている」という状態になってしまいます。
体内時計をリセットするために目覚ましとして太陽の光を浴びるように、強力な光を受けると人間は覚醒します。
対策としては「スマホやタブレットにある夜間モードを使用し、光の強さを抑える」方法があります。
ただし、光だけでなく文字や映像などの視覚情報を受けることで、また脳が覚醒してしまう可能性もあるため、できる限り寝る前は電子機器を使わないように行動を整えるのが良いでしょう。
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ただ闇雲に勉強するのではなく、志望校合格という最高の結果につながるやり方で一緒にがんばりましょう!