こんにちは!四谷学院 受験コンサルタントチームの伊達です。
学校での文理選択の時期が近づくと、女子生徒からこういった相談があります。
『理系に進んだ方が就職で有利だと聞きました。でも、工学部などは女子が少ないと言われているので、環境に馴染めるかが心配です。』
就職活動において理系学部に進むメリットは、建築学や薬学など「大学で養ってきた専門性をそのまま仕事で活かせる」ことが多い点でしょう。
卒業後すぐに資格を取得できる道も多いですし、文系学部と変わらず一般企業への就職活動を行う人もいるため、進路決定をする上での選択肢は増えていると考えられます。
しかし、度々SNSでも話題になるように、工学部や理学部といった学部では女子の比率が特に低く、「キャンパスライフを過ごしにくいのでは?」と不安を覚える受験生も多いようです。
ただ、不確定な情報で自分のやりたいことをあきらめてしまうのはもったいないですよね。
今回は、実際に理工系学部へ進学した先輩の体験談も交えながら、自分がその道に進むべきかどうかを考えていきましょう。
目次
大学進学者の男女比は?
まず、大学に進学する人全体の男女比はどうなっているでしょうか。
令和5年度の共通テスト(2023年1月実施)受験者の男女比を見てみましょう。
男子が281,996人(約55%)、女子が230,585人(約45%)と、10%ほど女子が少なくなっています。
この差は令和3・4年度もほぼ変わりません。
受験しない人を含めた世代別人口の男女比でも男子の方が数%高く、さらに既卒生の割合は男子が約7割であることを考えると、大学進学を目指す人の「割合」については、あまり男女差がないと言えるでしょう。
ただし、共通テスト受験者の総数では男子が5万人ほど多く、女子は短大へ入学する人も多いことから、「大学進学者」全体で見ても男子の方が多いとわかります。
文系学部の男女比は?
理工系学部の男女比を見る前に、まずは女子比率が高いとされる文系学部を見てみましょう。
女子比率が高い大学
まずは上智大学の「2022年度 学部学生数データ」を確認します。
すべての学部生を合計すると、全体12,080人のうち7,489人(約62%)が女子学生と、全体的に女子比率が高い大学であることがわかります。
学部別の割合も見てみましょう。
【上智大学(2022年度)】
学部 | 女子 学生数 | 割合 |
外国語学部 | 1,543 / 2,188人 | 約71% |
国際教養学部 | 543 / 774人 | 約70% |
文学部 | 1,568 / 2,258人 | 約69% |
法学部 | 851 / 1,401人 | 約61% |
経済学部 | 598 / 1,392人 | 約43% |
特に人気が高いのは、外国語学部です。海外留学をする学生の割合も女子の方が大きく、国際系学部も含めグローバルな学びに興味のある人が多いとわかります。
また、文学部も人気です。各女子大の学部構成を確認すると、ほかの文系学部よりも文学部が設置されていることが多い点からも、需要の大きさがうかがえますね。
法学部は大学全体の男女比とほぼ変わらず、経済学部は男子の方が多くなっています。
女子比率が低い大学
続いて早稲田大学の「2022年度 学部別 学生数と女性比率」を確認します。
すべての学部生を合計すると、全体38,658人のうち14,967人(約39%)が女子学生と、共通テスト受験者よりも女子比率が低いことがわかります。
学部別の割合も見てみましょう。
【早稲田大学(2022年度)】
学部 | 女子 学生数 | 割合 |
国際教養学部 | 1,477 / 2,458人 | 約60% |
文学部 | 1,448 / 2,829人 | 約51% |
法学部 | 1,295 / 3,160人 | 約41% |
政治経済学部 | 1,337 / 3,876人 | 約34% |
上智大学と数値は異なりますが、同じような順序になりました。
国際系・外国語学部 > 文学部 > 法学部 > 経済学部
理工系学部の実態
さて、本題の理工系学部の比率を見ていきます。
文系学部で取り上げた2大学について確認してみましょう。
【上智大学(2022年度)】
学部 | 女子 学生数 | 割合 |
理工学部 | 482 / 1,577人 | 約31% |
【早稲田大学(2022年度)】
学部 | 女子 学生数 | 割合 |
先進理工学部 | 629 / 2,241人 | 約28% |
創造理工学部 | 625 / 2,473人 | 約25% |
基幹理工学部 | 420 / 2,449人 | 約17% |
いずれの大学も、女子学生の割合が文系学部よりも明らかに小さいことがわかります。
上智大学は大学全体の女子率が約62%なのに対し、理工学部が約31%。
早稲田大学も全体約39%に対し、理工3学部合わせて約23%となっています。
ただ、1学年あたりが100~150人。
3~5人に1人が女子学生と考えると、極端に困ることはないようにも思えますよね。
そこで、次は実際に理工系学部へ進学した先輩たちの、「進学前後の悩み3選」をチェックしていきます。
自分にも当てはまるかどうか、進路選択の参考にしてみてくださいね。
理工学部に進学した女子学生の悩み3選
① 情報が回ってこない?
私の通っていた学科は比較的女子が多く、1/4くらいが女子でした。
やはり同性同士で一緒に過ごすことの方が多いので、情報は意識的に聞きに行かないと入ってこない印象はありました。
ただ、優しい同級生が多かったので、頼むと快く教えてもらったり助けてもらったりする機会は多かったです。
サークルで縦のつながりが出来ていたのも、頼る人が多くて良かったと思います。
大学生活では、「口コミ」が非常に重要です。
大学側が公開するシラバス(授業内容)だけではわからない、先輩や同級生が実際に受講した感想というのは、講義や研究室を選ぶ際に大事な判断材料となります。
それぞれの人が持っている情報の量や種類には当然違いがあります。
同性同士のコミュニケーションが多い場合、絶対数が多い男子の方が、何気ない情報交換を行う機会は多いのでしょう。
大学という場所に集まった同じ志を持った仲間であるため、「意図的に情報を止める」ということはまずありません。
ただ、「能動的に情報をキャッチしに行く機会が増える」のだとすれば、少し大変なのかもしれませんね。
② 将来のロールモデルが少ない?
建築業界に進むために工学部へ進学、早いうちから気になっている企業の情報は収集していました。
しかし、この業界は女性の比率が2割にも満たないほどで、就職した後に自分がどう活躍できるかのイメージがなかなかできなかったのを覚えています。
そこで大学のキャリアセンターに相談したところ、気になっていた企業で働いているOGの方を紹介してもらい、訪問してお話をうかがうことができました。
その方は30代前半で、結婚や育児を経験しながら仕事も続けているとのこと。生涯仕事をしていきたい私にとっては、貴重な経験談を聞くことができ、仕事内容だけでなく福利厚生にも着目して就職先を決める必要があるな…と思うようになりました。
最終的にそのOGとは違う企業に就職しましたが、実際に社会で活躍している先輩のお話を聞くことで、具体的なイメージを持って将来を考えることができたのは大きかったと思います。
最長で約40年も働くことになる就職先。どのような環境で仕事をするのかは、私たちにとって非常に重要ですよね。
しかし、理工系学部に進む女子学生が少ないということは、その先の関連企業に就職する人も多くないということ。
結婚を機に退職するケースや、産休期間が影響しキャリアアップが遅くなるケースもあるなかで、どの企業であれば「仕事と私生活を両立できるのか」を考えようにも、実際のロールモデルが少ないため苦労するんです。
「実体験」を聞くことは、イメージを膨らませる上で非常に重要です。
今回のようにOG訪問で直接話を聞き、自分が大事にする条件や選択肢を絞っていくのは、就職活動の助けになりますね。
自分でコネクションが見つからない場合は、大学のキャリアセンターや就職支援課に相談すると良いでしょう。
③ 周りから理解されづらい?
文理選択をするときは「数学の方が国語より得意だから理系でしょ」くらいの気持ちで選びましたが、まだどの大学や学部に行きたいかもまったく決めていない状態です。
2年生の6月くらいに、「生物や生態に興味があるので、理学部の生物系に進みたい」と思うようになりましたが、周りからは反対されてしまいました。
両親ともに医療系なので、私も同じような道に進むと思っていたそうなのですが、『将来はどんな仕事をするつもりなの?』と心配が強かったようです。
正直私自身も「ただ興味がある」くらいだったので、将来について真剣に考えられていた訳ではなく、反対されてもしょうがなかったと思います。
そこから受験コンサルタントの先生や両親にも相談しながら、「農林水産省の水産庁で水産業の発展に向けた技術開発をしたい」という目標ができ、最終的には応援してもらうことができました。
②の「ロールモデルが少ない」という点から、「大学卒業後も後悔なく過ごせるか」という心配をしている善意での反対も多いのでしょう。
その心配を解消するには、やはり具体的な目標やイメージを持つことが必要です。
なんとなく進路を選択するのではなく、「大学進学後」「就職活動」「就職後」についてそれぞれしっかりと考えておけば、万が一反対の声を聞いたとしても跳ね返して自分の進むべき道を歩んでいくことができますからね。
今後は理系女子が増えていく?
最難関大学のひとつである東京工業大学では、2024年度入試から総合型選抜と学校推薦型選抜において、初めて58人の「女子枠」を設置することが話題になりました。
2025年度にはさらに85人を追加し、1学年のおよそ14%が「女子枠」の生徒になります。
現時点では女子学生が13%ほどですが、一般入試まで含めると大幅な増加になることは間違いないでしょう。
ほかにも名古屋大学の工学部や地方国立大学でも「女子枠」の設置を予定していることが発表されており、私立の人気理系大学である芝浦工業大学では2018年度から導入し、枠の拡大を続けています。
2022年度には奈良女子大学が、日本の女子大で初めて工学部を設置したのも記憶に新しいところですね。
理工系学部における女子比率は、世界的に見ても日本が最低クラスだとされています。
近年18歳人口が減り続けていることから、このままだと技術者や研究者の数も減ってしまうでしょう。
その減少を食い止めるのが、「今まで理系の道をあきらめていた女子学生に機会を増やす」ことのねらいだとも考えられます。
現に直近10年の理工系学部進学者を見てみると、2~3%ほどではあるものの、女子学生の比率は高くなっています。
大学や企業に理系女子は歓迎され始めていると考えて良いのかもしれませんね。
まとめ
ここまで、理工系学部に進学する女子学生の割合や実際の体験談を見ていきました。
急増している「女子枠」に限らず、今は男女関係なく機会を与えようという動きも強まっています。
ただ、実際に理工系学部に進学した先輩たちは、周りは関係なく「自分のやりたいことを実現できるから」という理由で進学先を決定していることがほとんどです。
あなたも、もし進路について迷っているのであれば、一度プロに相談してみませんか?
四谷学院の個別相談会では、受験のプロが豊富な知識や経験を基に、学部や進路についてアドバイスをしてくれます。
周りの声や不正確な情報に惑わされ、不安になってしまったときは、ぜひ私たちを頼ってくださいね。