このページでは、令和7年度(2025年度)の大学入学共通テスト理科の「生物」の出題について解説します。
生物
2024年度入試は、それ以前とは異なり、実験考察問題が取り組みやすいレベルになり、知識問題の割合が増加したため、一つひとつの考察に十分な時間がかけられる問題量に落ち着きました。
2025年度入試においても、2024年度入試からの流れが続いており、純粋な知識問題の割合はやや減少したものの、実験考察問題の多くが、基本知識をもとに考えることを前提とした問題となっており、“各単元の基本知識が十分に理解習得できているか”で大きな差がついたといえます。
生物の学習でもっとも大切なことは、“基本知識の正しい理解”です。
“理解”とは、その現象を「自分なりの言葉や図解で説明できるレベルにする」ということ。
ふだんから、このような学習を意識しておくと、物事を順序立てて論理的に考える力が自然と身につき、結果的に、実験考察問題を論理的に読み解く力が身に付くのです。

以下、大問ごとに注目すべき問題についてコメントしていきましょう。
第1問 遺伝情報の発現と進化
神経、遺伝子発現に関する知識が問われました。
問2
分子進化に関する考察で、『同じ部位に突然変異が複数回起こることはない』という題意を正しく理解できたかがポイントです。
分子系統樹を最節約法で作製する問題の経験があった受験生は、その考えを応用しやすかったでしょう。
問4
表と実験結果という複数の情報を比較する考察問題ですが、「実験は条件が1つ異なるものどうしで比べるもの」という基本に忠実に考えれば、PAVからAAVへの変化(SNP1のみが異なる)より、AAVからAAI(SNP3のみが異なる)への変化のほうが小さく、SNP3の変化による影響が最も小さいことがわかります。
第2問 総合問題
タンパク質、遺伝子組み換え、酵素の非競争的阻害に関する知識が問われました。
問3
(1)は、共通テストで頻出の「仮説を検証するための実験」について考える設問です。
「TD酵素により、トレオニン量が減少すると、幼虫の成長が遅くなる」という情報をもとに、「条件の違い(TD酵素の有無、トレオニンの有無)」を整理して考えれば、正答を判断できます。
ここでも、「実験は条件が1つ異なるものどうしで比べるもの」という基本に忠実に考えることが大切です。
このような実験計画問題は、四谷学院の講習でも複数回扱っていますから、落ち着いて解けたことでしょう。
第3問 生態と環境
個体群どうしの種間関係、物質生産と光合成速度に関する知識が問われました。
問2~問4は、いずれも与えられた情報を見ただけでは、自分なりの考察を組み立てることが難しいので、それぞれの選択肢について、与えられた情報との矛盾がないかを検証していくことで正答を判断していきます。
ただし、図1では「森林が成立する(林冠が発達する)と、林床に届く光が激減する」こと、表2では「ルビスコはカルビン回路での有機物合成に必要な酵素である」ことなど、基本知識をもつことが前提となっています。
第4問 動物の発生
卵形成と両生類の発生に関する知識が問われました。
問2と問3の考察は、それぞれ表層回転からはじまる中胚葉誘導のしくみ、それに続く神経誘導のしくみ、といった一連の現象を、自分の言葉で説明できるレベルで理解できていたかどうかで、実験の理解度が格段に変わったでしょう。
正しく知識をもっていた人は、Aがβカテニン、Bがノーダル、CがBMP、Dがノギンやコーディンであることに気づけたはずです。
第5問 植物の環境応答・発生
種子の発芽、花芽形成の光周性、重力屈性のしくみに関する知識が問われました。
問2
グラフからも判断はできますが、イネが短日植物であるという基本知識をもっていることで、明期が短くなる(暗期が長くなる)とフロリゲンが合成される関係が基本であることに気づき、本州型のイネのグラフがそれにあたることもわかります。
これと、北海道型のイネのグラフの違いをもとに考察していけばよいでしょう。
問4
「実験は条件が1つ異なるものどうしで比較する」という基本に忠実に考えれば、正答を選ぶことができます。
問5
「水平にした植物体において、茎では負の重力屈性が起こるのに対して、根では正の重力屈性が起こるのはなぜか?」という基本事項について、オーキシンの感受性の違いを踏まえた説明が自分でできるレベルで理解できていた人は、それを応用することで、正答を選ぶことができました。
生物の共通テスト対策

