このページでは、令和6年度(2024年度)の大学入学共通テストの「地理」の出題について解説します。
目次
地理B
例年通り全ての問題で図表・統計などの資料が用いられ、思考力に加え情報処理能力・スピードが求められていました。
ただし、複数の資料を読み取らせる問題はやや減少し、正確な知識があれば正解できる問題が増えていたため、難易度はやや易化した印象です。
とはいっても、第3問で共通テストでは出題されていなかった「生活文化」が、第4問で例年より広範囲を扱った「環太平洋地域」が出題されているため、全ての範囲を網羅し、正しく理解・把握できているかで点数に差がついたと思われます。
第1問 自然環境と自然災害
単純な知識ではなく、地形や気候の成因から分布まで聞かれており、例年通りこの大問に難問が多い印象でした。
特に問5は気候分布のみではなく、融雪やハリケーンの時期まで考慮する必要があり、複数の知識・思考を組み合わせる問題でした。
また、問4では都市の位置が示されていないため、各気候の特徴はもちろん、地図学習により主要国や都市の分布を把握しておく必要がありました。
第2問 資源と産業
鉄鋼業を中心とした製造業に関する出題でした。
おなじみの問題が多く、特に複雑な思考が必要な問題もなかったため、この大問は易化した印象です。
問2で迷った人もいたかと思いますが、現在も釧路で石炭は産出していることや、日本は採掘コストが高いため輸入する傾向が強まっただけで、枯渇したとはいえないと気付けるかどうかが鍵でした。
第3問 都市と生活文化
単純な知識だけで解ける問題もなく、複雑な思考問題もないため、例年通り~やや易化という印象です。
問2は昼夜間人口比率の特徴を、問4はプライメートシティ(首位都市)の特徴を、問5は先進国と発展途上国のスラムの分布の違いを、問6はアメリカ合衆国の民族分布を知らないと正解に辿りつけない問題でした。
地理は思考問題が多いですが、正しい思考をするためには正しい知識が必要だと再認識させられる問題が多かったです。
第4問 環太平洋の地域
オセアニアだけでなく、アジア・南北アメリカも含まれており、例年より地域の範囲が広く、出題も地形・気候・食文化・観光・貿易などが聞かれ、分野の範囲も広かったです。
特定の地域に絞った対策ではなく、全ての範囲を網羅できているかが試されていました。
範囲は広いですが、難問といえるのは問1くらいで、難易度としては例年通りという印象です。
問1は、ホットスポット上には島が列状に分布しているはずということに気付けるかどうかでした。
第5問 地域調査(島根県石見地方)
いつも通り資料の読み取りを中心とし、読解力や考察力が試される問題でした。
ただし、例年よりも資料の数が少なく、複数の資料を組み合わせて考察する問題もなかったため、ここが最も易化した印象です。
地形図問題も易しい問題でした。
読み取り・考察に時間がかかる大問というのはいつも通りなので、時間配分さえ間違えなければ確実に得点できた人が多かったのではないでしょうか。
地理A
昨年同様、ほぼ全ての問題で資料が使われており、知識と思考力が問われています。
大問5は地理Bとの共通問題でした。
大問1での地図の特徴と災害に関する問題や、大問4の環境問題に関する出題はお馴染みとなっています。
単なる知識ではなく、思考力が試されている問題が多いという点も例年通りです。
第1問 問5など細かい知識を要する問題もありましたが、例年よりは判断しやすい問題が多く、難易度はやや易化という印象です。
第1問 地図の読み取りと活用、および日本の自然災害と防災
例年通りの傾向でした。
難問は問5くらいで、難易度も例年並みという印象です。
GISを用いた分析や、防災の問題は近年の特徴であり、新課程「地理総合」になるとさらに比重が増しそうです。
問5の気象衛星画像の問題が難しく、防災に関しては災害の背景なども抑えておく必要があります。
問4は光合成の活発度という見慣れない出題で、植生の有無や季節変化を考えさせる問題でした。
第2問 家畜に関する生活・文化
例年通り生活・文化に関する大問でしたが、「家畜」という農業の中でも割と細かいテーマ設定がされており、全ての範囲を網羅していることが求められていました。
ただし、求められている知識は基本事項であり、複雑な思考は必要ないため、難易度は例年並みという印象です。
第3問 アフリカ
アフリカが地誌として出題されるのはセンター試験の2014年以来と、久しぶりです。
ここでも全ての範囲を網羅していることが求められています。
ただし、難問は問1くらいで、難易度は例年並みという印象です。
問1は、アフリカ大地溝帯には火山が分布していることに気付けると判断できます。
第4問 世界の結びつきと地球課題
基本事項を組み合わせて解ける問題が多く、例年並み~やや易化という印象です。
地球的課題は新課程「地理総合」でも重点的に扱われる分野です。
問5の食品ロスに関する問題など、近年注目されている事柄に関心を持てているかが重要です。
第5問 地域調査(島根県石見地方)
いつも通り資料の読み取りを中心とし、読解力や考察力が試される問題でした。
ただし、例年よりも資料の数が少なく、複数の資料を組み合わせて考察する問題もなかったため、ここが最も易化した印象です。
地形図問題も易しい問題でした。
読み取り・考察に時間がかかる大問というのはいつも通りなので、時間配分され間違えなければ確実に得点できた人が多かったのではないでしょうか。
新高3生・高2生へのアドバイス
地理B
見慣れない資料が使われることは毎年のようにありますし、文章量や資料数が多いことも例年通りとなっていますので、模試や過去問などを通してこの形式に慣れるということは必須です。
また、単純な知識で解ける問題はほぼ出題されず、思考力が試される問題がほとんどです。
思考問題に慣れるためにも、地理は演習量が重要だといえます。
ただし、深い思考力が必要な難問は少なく、ほとんどの問題は基本知識を組み合わせて考えれば解けるので、普段の学校・予備校での授業や教科書・参考書の内容理解が最優先となります。
このときに、穴埋め形式で用語や地名などを暗記するのではなく、原理や背景知識を理解することが重要です。
また、大問1問4(各都市の日照時間の問題)のように、場所が分かっている前提の問題も出題されるため、地図帳を使った学習も不可欠です。
演習は受験学年の夏以降に始めても間に合うので、まずは
・普段から原理や背景知識を意識した学習
・地名や都市名が出てくるたびに地図帳を確認
を徹底していきましょう。
地理A
新課程「地理総合」になり、どう変化するかはまだ分かりませんが、防災や地球課題の出題は地理Aでもされていますので、まずは地理Aの過去問が解けるように対策することが重要です。
地理Aは基本事項の組み合わせで解ける問題が多いため、普段の学校・予備校での授業や教科書・参考書の内容理解を最優先しましょう。
このときに、穴埋め形式で用語や地名などを暗記するのではなく、原理や背景知識を理解することが重要です。
また、場所・分布の確認や統計問題も頻出なため、地図帳と統計集も活用しましょう。