このページでは、令和6年度(2024年度)の大学入学共通テスト理科の「生物」の出題について解説します。
目次
生物
昨年、2023年度の共通テスト生物は、過去最低の平均点からわかるように難度が高く、分量も多いため、時間内に解答するのは極めて難しいものでした。
その反動もあり、2024年度入試は、実験考察問題における情報量が減少し、取り組みやすいものになりました。
また、知識問題の割合が増加したため、全問を解答するのに十分な時間が与えられたといえます。
とはいえ、知識問題はもちろんのこと、実験考察問題においても“前提知識をもとに思考する力”を問う出題が多く、“各単元の基本知識が十分に理解習得できているか”で大きな差がついたことでしょう。
生物の学習でもっとも大切なことは、“基本知識の正しい理解”です。
“理解”とは、その現象を「自分なりの言葉や図解で説明できるレベルにする」ということ。
ふだんから、このような学習を意識しておくと、物事を順序立てて論理的に考える力が自然と身につき、結果的に、実験考察問題を論理的に読み解く力が身に付くのです。
以下、大問ごとに注目すべき問題についてコメントしていきましょう。
第1問 遺伝情報の発現
問2
「ラクトースオペロンの発現調節」という基本知識を理解していれば、それと同様に考えて難なく解答できたでしょう。
問3
共通テストで頻出の「仮説を検証するための実験」について考える設問です。
「実験は条件が1つ異なるものどうしで比べるもの」という基礎を思い出し、「グルコースのみで制御されることを確かめたい」という実験の目的を確認すれば、グルコースのあり/なしで比べる対照実験だと気づけます。
このような実験計画問題は、四谷学院の講習でも複数回扱っていますから、落ち着いて解けたことでしょう。
第2問 生命現象と物質、動物の環境応答
チャネルを軸にした小問集合でした。
問2以外は基本的な知識問題ですし、問2も実験条件の違いをもとに、正しく比較していけば解答できます。
このとき大切なのは、“条件の違い”に注目して、実験結果を自分で書いて整理することです。
第3問 動物の環境応答、動物の発生
問2
複数の実験があるので、条件の違いを意識して、2つずつ実験を比較しながら考えましょう。
また、見慣れない言葉が登場しますが、このようなときこそ“基礎にもどって考える”ことです。
すなわち、筋収縮は「Ca2+が筋小胞体から放出されること」がきっかけで起こることを思い出せたか。これに気づくと、グリセリン筋とスキンド筋の違いである「細胞小器官」の有無を、「筋小胞体」の有無であると正しく“読み替える”ことができ、実験4のカルシウムチャネルの開口が筋小胞体からのCa2+放出であることに気づけたでしょう。
問3
この設問でも、発生における「誘導」の基礎として「隣接部位にはたらきかける」ことを意識できると、実験内容が理解しやすかったでしょう。
四谷学院の講習でも複数回扱っていたテーマです。
第4問 植物の環境応答
問2
フィトクロムと光中断に関する基本知識をぱっと思い出せるかが問われました。
問3
代謝の計算問題や生産構造図の理解において、乾燥重量という言葉がよく使われていることを思い出せたでしょうか。
また、計算式を考えるということで苦戦した受験生が多かったと思われますが、ここでも、“実験の目的”と“条件を1つ異なるものどうしでの比較”を意識することが大切です。
実験の目的は「塊茎の形成により、地下茎への分配率が増えること」を確かめたいわけですから、塊茎が形成される2の条件と、形成されない3の条件とで、1からの増加率の違いを比べればよいことに気づけます。
第5問 生態と環境
生産構造図、物質生産にかかわる基礎知識を問う出題でした。
いずれも基本的な演習問題のなかで経験したことがある内容がもとになっています。
第6問 進化と系統
問2
軽視されがちな系統の分野ですが、そのなかでも出題頻度の高い知識問題です。
四谷学院の55テキストでは、同一の系統樹を用いた演習問題を扱っていましたから、しっかり復習していた人は得点できたでしょう。
問3
珍しいタイプの問題ですが、かえって説明と図解がていねいなので、順をおって読んでいけば正答にたどり着くことができます。
問4
遺伝的浮動における重要な基礎知識が問われていますので、単なる知識問題としても正解したい設問です。