このページでは、令和6年度(2024)の大学入学共通テスト公民の「倫理,政治・経済(倫理・政経)」「倫理」「政治・経済」の出題について解説します。
目次
倫理,政治・経済(倫理・政経)
前年から大きな変更はなく、全て単独科目の「倫理」「政治経済」からの抜粋で構成された問題が出題されました。
大問1
「源流思想」分野では、ギリシャ哲学、古代中国思想、古代インド思想、イエスなどについて出題されました。
知識問題については、いずれも基本的な知識を問う選択肢が中心でしたが、問1は時代背景を問う問題であり、やや判断が難しい部分がありました。
大問2
「日本思想」分野では、神と災害、奈良~平安、近世儒教、近代の思想家などが出題されました。
知識問題は基本的なものが中心でした。
問4は読解問題であり、近年注目されている問8の吉野源三郎は2021年のセンター試験「倫理」でも『君たちはどう生きるか』が読解問題の中で取り上げられていました。
大問3
「西洋思想」分野では、宗教改革、カント、ルソーなどが出題されました。
問4は、前の設問の会話文2つと本設問のノートの、合計3つの資料を読ませて文脈にあう選択肢を入れる、倫理特有の高い読解力が求められる問題でした。
大問4
「現代社会・青年期」分野では、ハヴィガースト、ピアジェ、ハイデガーなどから出題されました。
現代社会分野では、例年教科書では扱いの少ない思想家も出題されやすく、今年度もハヴィガースト、ピアジェなどが取り上げれました。
ハイデガーの思想は2016年のセンター試験でも難度の高い問題が出題されましたが、今年度の選択肢も用語の正確な理解が必要とされる難問でした。
大問5
「団体・集団」という切り口から、国家、社会保障、政教分離、消費者問題、株式会社、臓器移植法について出題されました。
問1,4,6は設問も資料文から答えを導き出す読解問題であり、文字数も共通テストならではの分量感です。
知識問題については、社会保険の財源負担や政教分離の規定など、出題されやすい典型問題が中心でした。
大問6
「経済成長とグローバル化」をテーマに、国内総生産の算出方法、三面等価、市場の失敗、公害問題、比較優位、輸入と需要曲線について出題されました。
経済分野ならではの理解が問われる出題が多く、問1の付加価値の計算と問5の比較優位は典型問題でしたが、問4の公害規制や問6の需要曲線の問題は、その場で考える考察問題でした。
大問6は経済分野の理論がしっかりと習得できているかを問う問題であり、点数差がつきやすい大問であったといえます。
大問7
「国際社会における日本の立場と役割」を主題とした設定で、社会契約説、人口ピラミッド、近年の中国の動向とODA、宇宙条約などについて問われました。
インドと中国を扱った人口問題や、中国の一帯一路、先端技術の輸出規制などは時事的な観点からの出題でもありました。
宇宙条約については、条文をもとに実際の状況において当てはまるものを選ぶ考察問題でした。
倫理
前年から大きな変更はなく、知識問題中心に、文字量の多い読解問題、資料の読み取り問題が出題されました。
大問1
「源流思想」分野では、ギリシャ哲学、古代中国思想、古代インド思想、イエス、ムハンマドなどについて出題されました。
知識問題については、いずれも基本的な知識を問う選択肢が中心でした。
問8の読解問題は共通テスト倫理に典型的な出題であり、冒頭の会話文と設問の資料文との両方を読んで文脈を判定する問題です。
前提となる文章の読解量が多く、現代文レベルの読解力が必要といえるでしょう。
大問2
「日本思想」分野では、神と災害、奈良~平安、無常観、近世儒教、石田梅岩、横井小楠、近代の思想家などが出題されました。
知識問題は基本的なものが中心でしたが、問7の近現代の思想家については、石橋湛山の小日本主義や与謝野晶子の母性保護論争といった教科書では扱いの少ない思想についても丁寧に学習している必要があり、難度の高い問題でした。
問3や問8は読解問題であり、近年注目されている問8の吉野源三郎は2021年のセンター試験でも『君たちはどう生きるか』が読解問題の中で取り上げられていました。
大問3
「西洋思想」分野では、ルネサンス、宗教改革、カント、ヒューム、ルソー、ニーチェ、ミルなどが出題されました。
倫理では問2や問7のように、消去法が使えない選択肢を作ってくることがあります。
特に問7では、ミルの思想について細かい知識が要求される難しい問題でした。
問8についても、前の設問の会話文2つと本設問のノートの、合計3つの資料を読ませて文脈に合う選択肢を入れる、倫理特有の高い読解力が求められる問題でした。
大問4
「現代社会・青年期」分野では、フランクル、ヴァイツゼッカー、家族問題、情報社会、意思決定問題、ハヴィガースト、ピアジェ、防衛機制、ハイデガーなどから出題されました。
現代社会分野では、例年教科書では扱いの少ない思想家も出題されやすく、今年度もブーアスティン、ピアジェなどが取り上げれました。
ハイデガーの思想は2016年のセンター試験でも難度の高い問題が出題されましたが、今年度の選択肢も用語の正確な理解が必要とされる難問でした。
問4や問7の資料問題、読解問題は前提となる情報をしっかりと整理する必要があり、解くのに時間がかかる問題でした。
政治・経済
前年から大きな変更はなく、基本的な知識問題や資料の読み取り問題を中心としつつ、一部、その場で考える考察問題が出題されました。
大問1
「18歳対象の公開講座」という設定のもとで、成人年齢、選挙制度、直接請求権、裁判員制度、労働市場、エンゲル係数、社会保障、近年の中央省庁といった分野横断的な出題がされました。
いずれも基本的な知識が中心ですが、問6のエンゼル係数についての問題は、あまり見慣れない設定の問題であり、その場で考える考察問題の典型です。
問7のこども家庭庁は時事分野からの出題でもありました。
大問2
「団体・集団」という切り口から、国家、社会保障、労働基本権、地方自治の本旨、政教分離、消費者問題、株式会社、臓器移植法について出題されました。
問1,6,8は設問も資料文から答えを導き出す読解問題であり、文字数も共通テストならではの分量感です。
知識問題については、社会保険の財源負担や公務員の争議権、政教分離の規定など、出題されやすい典型問題が中心でした。
大問3
「経済成長とグローバル化」をテーマに、国内総生産の算出方法、三面等価、市場の失敗、名目値と実質値、公害問題、景気循環、比較優位、輸入と需要曲線について出題されました。
経済分野ならではの理解が問われる出題が多く、問1の付加価値の計算と問7の比較優位は典型問題でしたが、問4の名目値と実質値の問題は受験生が苦手とするポイントです。
問5の公害規制や問6の景気循環、問8の需要曲線の問題は、その場で考える考察問題でした。
大問3は経済分野の論理がしっかりと習得できているかを問う問題であり、点数差がつきやすい大問であったといえます。
大問4
「国際社会における日本の立場と役割」を主題とした設定で、社会契約説、人口ピラミッド、近年の中国の動向とODA、金融資産、宇宙条約、環境問題、新しい人権、輸出規制などについて問われました。
インドと中国を扱った人口問題や、中国の一帯一路、先端技術の輸出規制などは時事的な観点からの出題でもありました。
宇宙条約については、条文をもとに実際の状況において当てはまるものを選ぶ考察問題でした。
新高3生・高2生へのアドバイス
倫理
共通テストの倫理は読解問題が特徴的です。
大問の導入部分にある会話文と、設問ごとに提示される別の資料の両方を読んで解答させる問題が必ず出題されます。
文章量が多く、内容も前後関係をしっかりと理解し、論理関係を見抜く現代文の力が必要とされますので、難度の高い問題といえます。
知識問題は標準的なものが多いですが、毎年、1~2問は教科書にあまり載っていない人物が取り上げられますので、高得点を狙うには細部まで学習する必要があります。
普段の学習では、まずは思想家と思想内容について用語と内容が一致するように覚え、そのうえで実戦問題を通して読解力を養っていきましょう。
政治・経済
政治経済では知識問題、読解問題、グラフ問題、考察問題などが出題されます。
知識問題は標準的・典型的な設問が中心ですが、一部では細かい知識なども問われることがありますので、時事的な内容も含めてしっかりとした知識を身につけましょう。
読解問題や資料問題は、資料だけで解ける問題と、知識と結び付けて解く問題があります。
いずれも、丁寧に資料を読み、特徴や傾向を読み取ることで答えにたどり着けますので、普段から様々な資料に目を通して読み取る練習をしておきましょう。
経済分野では比などを使った計算問題が出題されます。
特に計算が必要となる分野で穴がないように、算出の仕方や数値の比較の仕方もおさえておきましょう。
これらの問題は、語句を表面的に覚えるだけの学習では太刀打ちできません。
制度の経緯、仕組み、背景、経済の原理、論理といった政治・経済全般に対する理解と考察を深めていきましょう。