このページでは、令和6年度(2024年度)の大学入学共通テスト理科の「化学」の出題について解説します。
化学
2024年度入試においても、共通テストになってからの特徴である“思考力が問われる”設問が随所に散りばめられ、歯ごたえのある問題構成でした。
全体としては分量がやや多く、全問題を解答するには時間が足りない受験生が多かったでしょう。
共通テスト化学では、計算が絡む問題ほど正答率が下がる傾向がありますが、それは“ただ公式を当てはめるだけの計算ではない”ことが一因といえます。
・図表やグラフから必要な数値を読み取る必要がある計算
・与えられた複数の情報がどう繋がるかを考えて、立式する必要がある計算
などのように、解答に至るまでに複数のstepを踏まなければいけない問題が多く、一見すると何をしてよいかわからない受験生が多いのです。
ここで大切なのは、“基礎の計算を正しく理解すること”と“与えられた情報の整理”です。
特に、与えられた情報を、自分なりの言葉で整理できたかどうかが2024年度入試においても大きく明暗を分けたでしょう。
以下、大問ごとに注目すべき問題についてコメントしていきましょう。
第1問 物質の状態
問2
おそらく本問の類似問題を経験したことがある受験生は少ないはずですが、落ち着いて情報を整理すれば怖いことはありません。
まず、「体積の変化」を聞かれているわけですから、変化の前後の体積を考えてみましょう。
ここで、変化前は「液体」ですが、密度と質量がわかっているのでその関係から体積が求められます。変化後は「気体」ですから、気体の状態方程式で求めればよいでしょう。
このように落ち着いて一つひとつ情報を整理することが大切です。
問4 c
これも情報の整理が鍵となる設問です。
54g(3 mol)のうち、6.0 kJの熱を与えたら□□molの氷が溶ける → 残った氷△△gの密度は○○(図より)だから、体積は☆☆…
のように、実験の流れを書きながら整理していきましょう。
第2問 物質の変化
問3
見慣れないと感じた受験生は多く正答率は低いでしょう。
ですが、こういうときこそ“基礎にもどって考える”ことです。
すなわち、酸化還元反応における“基礎”とは「酸化還元=電子のやりとり」であり、それを思い出せば、与えられた反応式からまずは「電子を用いた半反応式」を考えよう、という発想につながります。
やりとりする電子の数は、金属の酸化数の変化と一致することも、重要な基礎事項ですね。
第3問 無機化学
問4 b
共通テストでよく問われる、複数の反応を追っていく設問です。
まず、実験操作の“目的”を正しく読み取りましょう。
この操作の目的の一つは、「36.4 kgのNiSをすべて反応させること」ですから、そのために必要なCuCl2が何molになるかを式1の反応から書いてみましょう。
そのうえで「式1で消費したCuCl2はすべて式2の反応でCuCl2に戻される」というヒントを、「式1で必要なCuCl2の量=式2で再生したCuCl2の量」と読み替えることができれば、計算方針が立ちます。
繰り返しになりますが、一つひとつの情報からわかることを書き出しながら整理することで、設問のストーリーを掴むことが大切です。
第4問 有機化学・高分子化合物
全体として、教科書で学ぶ基本知識が正しく整理できているかが問われた大問でした。
有機化学では、問4のように思考力が問われる問題であっても、結局は関連する基本知識をぱっと引き出すことができるかが問われています。
たとえば、問4のcでは、初めて見る生成物であっても、図5の加える試薬を見た瞬間に、ニトロ化、側鎖のカルボキシ基化、ニトロ基の還元という流れがぱっと浮かぶかどうかが問われています。
第5問 総合問題
実験操作としてはやはり見慣れない受験生が多かったと思いますが、一つひとつの情報を整理していけば解答にたどり着くことができます。
問2
求めたい量を文字で置くのは化学計算の基本です。
そのうえで、実験の流れを図解で整理してみれば、難なく問われていることが理解できます。
化学では、このように実験を追っていく問題が多いですから、その変化の過程を簡単な図解で書き出していく癖をつけましょう。
問3
aとcは、一見難しそうに見えますが、図3と表1の関係を読み取り、当てはめて考えていけば正答にたどりつけます。
ただし、情報量が多いため、これを処理するだけの時間が残っていなかった人も多いでしょう。
なお、bはリード文なども関係なく、この設問だけで解答できるものだったので、時間がないなかでも手をつけられる問題がないか、冷静に判断できた人は得点を伸ばすことができました。