このページでは、令和5年度の大学入学共通テスト理科の生物の出題について解説します。
生物
2023年度の生物は昨年度よりも大幅に難化しました。模試では高得点をとれていた人でも、分量の多さや思考の複雑さ・選択肢の判断にとまどい、冷静な思考ができなかったことも予想されます。高得点層は大きく減少する見込みですので、うまく点数がとれなかった人も、気持ちを切り替えて、国公立大二次試験・私立大個別試験に向けた準備を進めましょう。
以下、問題の総評です。
すべての大問に実験考察問題があり、深い思考力が問われる構成になっています。そのなかで注目すべきは、思考力が問われている設問であっても「知識の正しい理解」をもとにしなければ得点できない問題が多かったことです。具体的にいくつか見てみましょう。
第1問
問3は仮説を検証するための実験を考える、という共通テスト入試のトレンドともいえる設問です。「遺伝子EとFの転写に調節タンパク質Rが関わる」ことを示すための実験を考える設問でしたが、実際には「調節タンパク質は遺伝子の転写調節領域に結合してその転写を調節する」という基本知識の有無が問われていました。
問4では「陸上植物はシャジクモ類に近縁である」という基本知識が思考の出発点になっていることに気づけたかで正否が分かれたでしょう。
第3問 問2
この問題は実験1から得られた結論をもとに、設問文で提示された追加実験の結果を解答する流れになっており、複数のステップを踏ませる難度の高い思考問題でした。
この問題でも、選択肢のグラフを解答するためには、「葉緑体では赤と青の光がよく吸収されて光合成に利用される」という基本知識が必要で、この知識から「葉を透過した光には赤と青の光があまり含まれない」という“読み替え”が求められていました。
新高3生・高2生へのアドバイス
思考力が問われる設問は増加していますが、だからといって各単元で学習する基本知識が問われないわけではありません。大学入試の生物では、基本知識を“正しく活用できるか”という視点が重要視されていますので、高1・高2生のみなさんもまずは生物の学習において、基本知識を正しく“理解”することを意識してください。
ただの用語の暗記にとどまらず、1つ1つの現象について、しくみを正しく説明できるか、理由を説明できるか、意義を答えられるか、といった視点で学習していくことが大切です。